第86話 荷車の手伝い
市場から戻った翌日、アルドは荷車の点検をしていた。
車輪の周りを確認し、縄の状態を確かめている。荷車は家の仕事でよく使うため、使う前後に状態を見ておく必要があるらしい。
リオは近くでその様子を眺めていた。
「兄さん、何をしているの?」
「荷車の確認だ。昨日、市場から戻ってきたからな」
「壊れていないか見るの?」
「そうだ。車輪がうまく回るか、荷台に問題がないか、縄が傷んでいないか。出かける前に確認しておくんだ」
リオは荷車の車輪を覗き込んだ。
見た目には、特に変わったところはない。
「僕も手伝っていい?」
「危なくないところならな。まずは縄をまとめてくれ」
リオは荷台に置かれていた縄を手に取った。
使い終わった縄は、絡まないようにまとめておく。簡単な作業に見えたが、きれいに巻くには少し慣れが必要だった。
何度か巻き直しているうちに、ようやく形が整った。
「できたよ」
「いいな。次は、荷台に残っている土を掃除してくれ」
アルドは道具を使いながら、荷車の点検を続けていた。
リオは荷台を掃き、残っていた小さな土や葉を取り除いた。
「荷車も、畑の道具と同じように片づけるんだね」
「そうだ。使いっぱなしにしておくと、次に使うときに困るからな」
「父さんも同じことを言っていたよ」
「父さんは、そういうところは細かいからな」
アルドは笑った。
その後、ノアもやってきて、車輪の周りを確認した。
「アルド、こっちの車輪は少し音が違うぞ」
「本当か?」
二人は荷車を少し動かし、車輪の回り方を確かめた。
リオは、その様子を見ていた。
同じ荷車を使っていても、アルドとノアでは気づくところが違うらしい。
「兄さんたちは、どうやって異常に気づくの?」
リオが尋ねると、ノアが答えた。
「いつも使っているから、普段の音や動きを覚えているんだ。いつもと違うところがあれば、気づきやすい」
「記録しなくても分かるの?」
「慣れているものは、覚えていることもある。でも、全部を覚えているわけじゃないぞ。必要なことは書いておく」
アルドも頷いた。
「特に、修理したところや、部品を交換した日なんかは記録しておくといい」
リオは記録帳を開いた。
畑の記録とは別に、道具や荷車のことを書けるページを作ることにした。
昼前、アルドは荷車を使って野菜を運ぶ予定だった。
リオは荷台に籠を並べる手伝いをした。重いものはアルドが運び、リオは軽い籠を運ぶ。
籠を並べるときには、荷物が動かないように隙間を調整する必要があった。
「全部を同じ向きに並べればいいの?」
「大きさや重さによるな。重いものを安定する場所に置いて、軽いものが押しつぶされないようにするんだ」
アルドは籠を一つ動かし、配置を整えた。
リオはそのやり方を見ながら、荷物の積み方にも工夫があることを知った。
午後、荷車が戻ってくると、リオは荷台を確認した。
籠を下ろし、縄を外し、荷台を掃除する。
使ったあとの片づけまで終わって、ようやく仕事が一段落した。
「手伝ってくれて助かったぞ」
アルドが言った。
「僕も楽しかったよ。荷車にも、いろいろな確認があるんだね」
「何を使うにも、使ったあとが大事だからな」
リオは頷いた。
畑も、道具も、荷車も、使って終わりではない。
次に使うときのために整えておくことが必要なのだ。
その日の記録帳には、荷車の点検と荷物の積み方について、新しいページが加わった。




