第82話 野菜をしまう場所
朝、リオが台所へ行くと、棚の上に籠がいくつも並んでいた。
中には昨日収穫した野菜が入っている。ミーナは籠を一つずつ確認し、野菜を別の場所へ移していた。
「母さん、何をしているの?」
「収穫した野菜を片づけているのよ。全部を同じ場所に置いておくわけにはいかないからね」
「どうして?」
「野菜によって、置いておくときに気をつけることが違うの。傷みやすいものもあるし、乾燥しすぎないほうがいいものもあるでしょう?」
リオは籠の中を覗き込んだ。
畑で収穫したときには、野菜をまとめて籠に入れていた。けれど、家に持ち帰ってからは、種類や状態を見て置き場所を変えているらしい。
「畑から採ったら、すぐ食べるものばかりじゃないんだね」
「そうよ。今日使うものもあれば、明日使うものもあるからね」
ミーナは野菜を一つ手に取り、表面を確かめた。
「傷があるものは、早めに使うようにしたり、状態を見て分けたりするの」
「それも記録したら、あとで分かりやすそうだね」
「ふふ。リオは何でも記録したくなるのね」
母は笑いながら、籠を一つリオの前に置いた。
「よかったら、これを一緒に分けてみる?」
「いいの?」
「ええ。ただし、分からないものは勝手に決めないこと。私に聞いてね」
リオは頷き、野菜を一つずつ手に取った。
まず、傷があるかどうかを確認する。表面がきれいなものと、少し傷がついているものを分けた。
しかし、傷があるからといって、すぐに食べられなくなるわけではない。ミーナに確認すると、傷の程度や野菜の種類によって扱いが違うと教えてくれた。
「これは今日の料理に使いましょう。こっちは状態を見ながら置いておくわ」
「分かった」
リオは母の説明を聞きながら、野菜を籠に戻していった。
その後、置き場所についても教えてもらった。
日が当たりにくい場所に置くもの、風通しを考えるもの、早めに使うもの。それぞれに理由があるが、すべての野菜に同じ方法が使えるわけではない。
リオは、野菜の名前と置いた場所を簡単に記録した。
昼前、リナが台所へやってきた。
「お兄ちゃん、何してるの?」
「野菜を分けているんだよ」
「私もやりたい!」
「じゃあ、母さんに聞いてみよう」
ミーナが頷くと、リナは小さな籠を持ってきた。
リオは、野菜を傷つけないようにそっと持つことを教えた。
リナは真剣な顔で野菜を一つずつ運んだが、途中で小さな野菜を両手で抱え込んでしまった。
「リナ、そんなにぎゅっとしなくても大丈夫だよ」
「落としたら困るもん」
「そうだね。でも、優しく持てば大丈夫」
リナは少し力を抜き、野菜を籠に入れた。
母は二人の様子を見て、微笑んでいた。
午後、リオは記録帳に新しいページを作った。
そこには、収穫した野菜をどう扱ったかを書いていくことにした。畑で採れた日と、家に持ち帰った日、置いた場所、使った日を記録する。
「畑の記録とは別にするの?」
ミーナが尋ねた。
「うん。畑で育てているときの記録と、収穫したあとの記録を分けたほうが見やすいと思うんだ」
「いい考えね。必要なときに探しやすいようにしておくといいわ」
夕方、ガイルが台所に入ってきた。
「野菜の整理を手伝ってくれたのか?」
「うん。置く場所が野菜によって違うって教えてもらったよ」
「そうだな。育てることも大切だが、収穫したものを無駄にしないように扱うことも大切だ」
リオはその言葉を記録帳に加えた。
夕食には、昨日収穫した野菜が使われていた。
リオは、畑で見た姿と、台所で整えられた姿を思い出しながら食べた。
同じ野菜でも、育っているとき、収穫したとき、料理に使うときで、見えるところが違う。
農作業は、畑の中だけで終わるものではない。
それを知ることができた一日だった。




