第69話 みんなで食べる昼ごはん
その週の終わり、ミーナがリオに声をかけた。
「今日は少し多めに昼食を作ろうと思うの。エマちゃんたちも来るなら、一緒に食べていってもらったらどうかしら」
リオは顔を明るくした。
「本当に? みんなに聞いてくる!」
家を出ると、ちょうどエマが道の向こうから歩いてくるところだった。
「エマ、今日のお昼、一緒に食べない?」
「いいの?」
「うん。母さんが多めに作ってくれるって」
エマは嬉しそうに頷いた。
トーマとカイルにも声をかけると、二人とも喜んで来ることになった。
リオは、昼食までの時間に四つの畑を見て回った。
朝畑では、目盛りの棒を使って芽の背丈を測った。日なた畑では、葉の色を記録した場所を確かめ、豆畑では草が生えていたところを見直した。角の畑では、エマが以前描いた葉と同じ形のものを探した。
それぞれの畑で新しい変化が見つかるわけではなかったが、前に記録したことを確かめるだけでも、いくつか気づくことがあった。
芽の高さは少しずつ変わり、葉の形も以前よりはっきりしてきた。土は場所によって乾き方が違い、目印の札は雨のあとも読める状態だった。
リオは、あとでみんなに話せるよう、記録帳に短くまとめた。
昼になると、エマたちがリオの家に集まった。
ミーナが用意してくれたのは、野菜の入ったスープと、焼いたパン、それから小さな焼き菓子だった。
「わあ、おいしそう!」
トーマは椅子に座ると、すぐにスープの匂いを確かめた。
カイルはパンを受け取り、エマはミーナにお礼を言った。
「たくさん食べてね。今日は畑の話も聞きたいから、あとで教えてちょうだい」
ミーナの言葉に、リオは頷いた。
食事をしながら、四人は最近の畑について話した。
トーマは、同じ芽を何度か測ると、前より高くなっていることが分かると話した。エマは葉の形を描くとき、細かい部分だけでなく、大まかな輪郭から描くと分かりやすいと説明した。
カイルは、雨のあとに土の状態が変わることや、畑の道がぬかるみやすい場所について話した。
リオは、それぞれの話を聞きながら、記録帳を開いた。
「みんなが見つけたことを、こうして一緒にまとめられるのはいいね」
「一人だと、気づかないこともあるからね」
エマが答えた。
食事が終わると、ミーナが小さな皿に焼き菓子を分けてくれた。
四人は庭先に移動し、日なたの当たる場所に座った。
トーマは焼き菓子を食べながら、収穫した野菜で料理を作ってみたいと言った。カイルは、収穫した野菜の大きさを測り、どれくらい育ったのか比べてみたいと話した。
エマは、畑で育った野菜を描いた絵を作ってみたいらしい。
「収穫できたら、みんなで料理を作ろうよ」
リオが提案すると、三人は賛成した。
ただし、今すぐに収穫できるわけではない。野菜が十分に育つまでには、まだ時間がかかるものもある。
「その前に、ちゃんと育てないとね」
カイルの言葉に、四人は笑った。
食後、リオはミーナに今日のことを話した。
「みんな、畑のことをいろいろ考えているよ。収穫したら、何をするかも話したんだ」
「それは楽しみね。でも、まずは毎日の世話を忘れないことよ」
「うん!」
ミーナは笑いながら、使い終わった皿を片づけ始めた。
リオも手伝い、皿を運び、テーブルを拭いた。
畑の仕事も、食事の準備も、後片づけも、誰か一人だけでできるものではない。家族や友達がそれぞれできることを持ち寄ることで、一日が楽しくなる。
夕方、エマたちが帰ったあと、リオは記録帳に今日のことを書いた。
畑の変化を話し合ったこと。みんなで昼食を食べたこと。収穫したら、野菜を使って料理を作ってみたいと話したこと。
最後に、リオはこう書き添えた。
自分たちで育てた野菜を、みんなで食べる日が楽しみだ。
記録帳を閉じると、窓の外から夕方の風が吹き込んできた。
畑の葉が揺れている。
収穫の日は、まだ少し先だ。
それでも、そこへ向かう毎日は、もう十分に楽しいものになっていた。




