第68話 葉っぱの色を比べる
朝畑を見に行ったリオは、いつもと少し違うことに気づいた。
葉の色が、場所によってわずかに違って見えるのだ。
日なた畑の葉は明るい緑色に見え、朝畑の一部では、少し濃い緑色の葉が並んでいる。角の畑には、ほかの場所とは違う色合いに見える葉もあった。
「昨日と、何か違うのかな」
リオは葉を見つめた。
けれど、色の違いははっきりしているようで、実際には分かりにくい。日差しの向きによっても見え方が変わるし、葉の表側と裏側でも色が違っている。
リオは記録帳を開き、葉の色について書こうとした。
しかし、「明るい緑」「濃い緑」と書くだけでは、あとから比べるのが難しそうだった。
そこへエマがやってきた。
「何を見ているの?」
「葉っぱの色が違うような気がするんだ。でも、どう書けばいいか分からなくて」
エマは葉を見てから、リオの記録帳を覗き込んだ。
「絵にしてみたらどうかな。色を塗れば、少しは分かりやすくなるかもしれないよ」
「そうだね。でも、同じ色を作るのは難しそうだな」
「だったら、色を比べるための紙を作ってみようよ」
エマの提案に、リオは顔を上げた。
二人は家へ戻り、使いかけの色鉛筆と紙を用意した。濃い緑、薄い緑、黄色に近い緑など、何種類かの色を塗り分けて並べてみる。
それから、畑で見た葉の色に近いものを探した。
最初は簡単に決まると思っていたが、実際に比べてみると、どれも少しずつ違っていた。日なたで見る葉と、日陰で見る葉では、同じ葉でも色が違うように見える。
「これだと思ったのに、こっちのほうが近い気もするね」
エマが言った。
リオも頷いた。
「色だけで、何かが分かるわけじゃないんだね」
二人は、色を正確に決めることはいったんやめ、見た場所や時間を一緒に記録することにした。
昼前にはトーマとカイルも加わり、四人で葉の色を比べた。
トーマは、同じ種類の葉を並べて見たいと言った。カイルは、日なたと日陰で見え方が変わることに気づいていた。
そこで、同じ畑の中から似た形の葉を選び、日差しが当たる場所と、少し影になっている場所で見比べてみた。
「こっちは明るく見えるね」
「でも、日陰に持っていくと、少し濃く見えるよ」
四人は葉をむやみに摘まず、できるだけ同じ場所で観察した。
葉を動かしてしまうと、日差しの当たり方が変わってしまうからだ。
リオは、色を比べるときには、見る場所や時間も大切なのだと感じた。
午後になり、リオは記録帳に葉の色を塗った小さな四角を並べた。
その横には、観察した畑の名前、時間、日差しの状態を書き込む。
色の違いが何を意味するのかは、まだ分からない。葉の色だけで、育ち方がよいのか悪いのかを決めることもできない。
だから、今は見たことを残しておく。
リオは、記録帳の隅にそう書き添えた。
夕方、ミーナが洗濯物を取り込んでいるところへ、リオは今日の記録を見せに行った。
「葉っぱの色を比べてみたんだ。でも、光の当たり方でも違って見えるみたい」
ミーナは紙を眺めた。
「よく気づいたわね。見た目だけで決めつけずに、どういう場所で見たのかも書いてあるのがいいと思うわ」
リオは嬉しくなった。
まだ、葉の色について分かったことは少ない。それでも、どうすれば比べやすいのか、少しだけ分かってきた。
明日も同じ葉を見れば、今日と違う色に見えるかもしれない。
その違いが本当に葉の変化なのか、それとも光のせいなのか。
リオは、急いで答えを出さずに、これからも記録を続けようと思った。




