第67話 アルド兄さんの荷車
朝、リオが庭へ出ると、アルドが荷車の車輪を確かめていた。
荷車の横には空の籠がいくつも重ねられ、荷台には丈夫な麻紐が置かれている。今日は畑で収穫した野菜を運ぶ予定らしい。
「アルド兄さん、何をしているの?」
「車輪の様子を見ているんだ。荷物を積んでから調子が悪いと困るからな」
アルドは車輪をゆっくり回し、軸のあたりを確認した。
リオは、その様子をじっと眺めた。
家族の畑では、収穫した野菜を籠へ入れるところまでは何度か手伝ったことがある。しかし、それを運ぶ荷車については、あまり考えたことがなかった。
「荷車も、使う前に確かめるんだね」
「もちろん。荷物を運んでいる途中で壊れたら、野菜を運べなくなってしまうからな」
アルドは荷台の板も確かめ、紐が傷んでいないかを見ていた。
「この紐は、荷物を固定するために使うんだ。道がでこぼこしていると、荷物が動くことがあるからな」
リオは荷台に置かれた籠を見た。
籠をただ積み重ねるだけでは、揺れたときに倒れてしまうかもしれない。重ね方や固定の仕方にも、気をつけなければならないのだ。
「僕も手伝っていい?」
「そうだな。まずは空の籠を運んでくれ。重ねるときは、下の籠が安定しているか確かめるんだぞ」
リオは籠を一つずつ運び、荷台に積み重ねた。
最初は高さをそろえることばかり考えていたが、アルドに教わると、籠の底が傾いていないか、上に置いた籠が滑らないかも大切だと分かった。
籠を積み終えると、アルドは麻紐を使って固定した。
「これで、少し揺れても動きにくくなる」
「すごいね。こんなふうに結ぶんだ」
「慣れれば難しくないよ。ただ、荷物が重いときは、無理に一人で持ち上げないこと。二人で持つほうが安全なこともあるからな」
リオは頷いた。
そのあと、二人は荷車を畑まで動かしてみた。空の状態なので軽く、アルドが押すとゆっくり進んでいく。
道の曲がり角では、荷車の幅を考えて進まなければならなかった。畑の入口に近づくと、道が少し狭くなっているため、車輪が端に寄りすぎないように注意する必要があった。
「この道、荷車だと少し通りにくいね」
リオが言うと、アルドは頷いた。
「人が歩くなら十分でも、荷車を通すなら気をつける場所があるんだ。だから、いつも通る道の状態を知っておくと役に立つ」
リオは、以前作った畑の地図を思い出した。
地図には、雨のあとにぬかるみやすい場所や、狭い道の印をつけてある。あれは、荷車を運ぶときにも使えるのかもしれない。
家へ戻ると、リオは地図を取り出し、アルドに見せた。
「この地図、荷車を通すときにも使えるかな?」
アルドは地図を見て、道の幅や曲がり角を確かめた。
「参考にはなるな。ただ、荷車を通すなら、もう少し詳しく調べたほうがいい。人が通れる道でも、荷車には狭いことがあるから」
リオは、地図に荷車用の印をつけることを考えた。
しかし、実際にどこを通れるのかは、大人と一緒に確かめる必要がある。自分たちだけで道を広げたり、危ない場所を通ったりしてはいけない。
昼食のあと、アルドは荷車を使って収穫した野菜を運んだ。
リオは小さな籠を運ぶ仕事を手伝い、荷車のそばでは邪魔にならない場所に立っていた。野菜を積み終えたあと、アルドが紐を結び、荷物が動かないことを確かめてから出発する。
その一連の作業を見て、リオは畑の仕事がいくつもの工程につながっていることを改めて感じた。
夕方、記録帳には荷車のことを書いた。
使う前に車輪や荷台を確かめる。籠を安定させて積む。荷物を紐で固定する。道の幅や状態にも気をつける。
最後に、リオは荷車の簡単な絵を描いた。
自分で荷車を動かせるようになるのは、まだ先かもしれない。
けれど、どうやって野菜が運ばれていくのかを知ることはできた。
リオは明日、畑の地図に道の幅についての注意を書き足そうと思った。




