第64話 家族の畑を手伝う日
その日は朝から、家族全員が忙しく動いていた。
ガイルは広い畑で収穫する野菜を確認し、アルドは荷車に積む籠を準備している。ノアは農具を整え、ミーナは台所で野菜を洗うための水を用意していた。
リオが庭へ出ると、アルドが籠を重ねているところだった。
「アルド兄さん、今日は何をするの?」
「家の畑で採れた野菜を集めるんだ。今日は、いくつかの野菜を収穫する予定だからな」
「僕も手伝っていい?」
アルドは籠を一つ持ち上げ、リオに向き直った。
「もちろん。ただし、重いものは持たなくていいぞ。小さな籠を運んだり、収穫した野菜を分けたりする仕事を頼みたい」
リオは嬉しくなった。
いつもは自分たちの四つの畑を見ていることが多いが、家族の畑では、もっと多くの野菜が育っている。そこでは、収穫するだけでなく、採れたものを運び、傷がないか確かめ、種類ごとに分ける作業もある。
リオはアルドと一緒に畑へ向かった。
ガイルが収穫する野菜を選び、ノアが籠を置く場所を決めている。ミーナは収穫後に野菜を洗うため、使う道具を準備していた。
リオは、採れた野菜を種類ごとに分けて籠へ入れる仕事を任された。
最初は、形が少し違う野菜も同じ籠に入れていた。しかし、アルドに確認すると、食べる時期や使い道によって分けておくと、あとで扱いやすいことを教えてもらった。
「見た目だけで決めるんじゃないんだね」
「そうだな。形が少し違っても、同じ種類なら一緒にできるものもある。反対に、似ていても別の種類なら分ける必要がある」
アルドは籠の中を確かめながら説明した。
リオは一つずつ野菜を手に取り、種類を確かめてから籠へ入れた。土がついているものもあれば、葉が少し曲がっているものもある。
「これは、どうするの?」
葉が折れかけた野菜を見つけ、リオは父に尋ねた。
ガイルは野菜を受け取り、状態を確認した。
「食べる分なら問題ないものもある。売り物にするものと、家で使うものを分けるときは、状態を見て決めるんだ」
リオは頷いた。
野菜は、畑で育ったら終わりではない。収穫したあとも、どこへ運ぶのか、どう使うのかによって扱い方が変わる。
昼前には、収穫した野菜がいくつもの籠に分けられた。
リオは小さな籠を両手で持ち、ミーナの待つ作業場所へ運んだ。重くなりすぎないように量を調整し、落とさないようにゆっくり歩く。
ミーナは野菜を受け取り、水で洗うものと、土を軽く払っておくものに分けていた。
「ありがとう、リオ。ここまで運んでくれたのね」
「うん。籠を分けておくと、あとで分かりやすいね」
「そうでしょう? 何をどこに置くか決めておくと、仕事が進めやすくなるのよ」
リオは、四つの畑の記録をまとめたときのことを思い出した。
同じ情報を一つに集めると、何がどこにあるのか分かりやすくなる。野菜を籠に分けることも、それと少し似ている気がした。
午後には、収穫した野菜を家の中へ運び終えた。
アルドは籠の数を確認し、ノアは使った農具を片づけている。ガイルは畑の残りを見回り、ミーナは夕食に使う野菜を選んでいた。
リオは家族の仕事を見ながら、自分が手伝った作業を記録帳に書いた。
野菜を収穫すること。籠へ分けること。運ぶこと。状態を確かめること。
どれも小さな仕事だが、どれか一つを忘れると、あとで困ることがある。
夕食には、今日採れた野菜が使われた。
リオは、自分が運んだ籠から取り出された野菜を見つけ、少し嬉しくなった。
「これ、僕が運んだ籠に入っていた野菜だよ」
「そうか。よく手伝ってくれたな」
ガイルが笑うと、アルドも頷いた。
「小さな仕事でも、助かることはたくさんあるんだ」
リオは食卓を見回した。
家族がそれぞれ仕事を分担し、その結果がこうして一つの食事につながっている。
自分たちの四つの畑で収穫できる日も、いつかやってくるだろう。
そのときには、今日教わったことを思い出しながら、採れた野菜を大切に扱いたい。
リオはそう思い、目の前の野菜を一口食べた。




