第63話 畑のまわりを歩く道
朝食のあと、リオは家の裏手にある小道を歩いていた。
四つの畑を回るとき、いつも同じ道を通っているつもりだった。しかし、雨のあとには水たまりを避けたり、草が伸びている場所を迂回したりするため、気づかないうちに歩く場所が変わっている。
昨日、背丈を測る場所を決めたことで、リオは畑へ行く道についても考えるようになった。
「いつも通る道を決めておけば、畑に入りやすいかもしれない」
リオはそう思い、足元を見ながら歩いた。
道の端には小さな石が並び、ところどころに草が生えている。広い場所もあれば、荷車が通れそうにない狭い場所もあった。
朝畑の近くまで来ると、エマが先に畑を見ていた。
「おはよう、リオ」
「おはよう。畑に来る道を、もう少し分かりやすくできないかなと思って」
「道を?」
エマは首を傾げた。
リオは、四つの畑を回るときに通る道を説明した。どこを通れば歩きやすいのか、雨が降ったときにどこがぬかるみやすいのか。そうしたことを地図に書いておけば、あとから畑を回るときに役立つかもしれない。
エマは少し考えてから、頷いた。
「確かに、日なた畑へ行く道は、雨のあとだと歩きにくいよね」
二人は地図を広げ、いつも歩く道を指でたどった。
そこへトーマとカイルもやってきたので、四人で実際に道を歩いて確かめることになった。
最初に朝畑へ向かい、次に豆畑へ進む。そこから日なた畑へ回り、最後に角の畑へ向かう道を試してみた。
ところが、角の畑へ向かう途中で、トーマが立ち止まった。
「こっちの道を通ったほうが近いんじゃない?」
トーマが指差したのは、草の間を抜ける細い道だった。確かに距離は短そうだったが、道の端には柔らかい土が広がり、小さな草が生えている。
「ここを通ると、草を踏んでしまうかもしれないよ」
カイルが言った。
リオも足元を見た。
短い距離を歩けるとしても、周りの草や土を傷めてしまうなら、いつもの道を通ったほうがいいのかもしれない。
「近い道が、いつも歩きやすいとは限らないんだね」
リオが言うと、エマが頷いた。
「歩きやすさも、道を決めるときに考えたほうがよさそう」
四人は草の間を抜ける道には入らず、いつもの小道へ戻った。
それから、道の状態を地図に書き込んだ。雨のあとにぬかるみやすい場所には小さな印をつけ、狭い場所には線を引いて示す。
ただし、子どもたちだけで道を広げたり、土を掘ったりはしないことにした。畑のまわりの土地は家族が管理しているため、何かを変えたいときは大人に相談する必要がある。
昼前、リオはガイルに地図を見せた。
「この道を通ると歩きやすいんだけど、雨のあとにここがぬかるむんだ」
ガイルは地図を見ながら、実際の道も確かめてくれた。
「よく調べたな。今すぐ道を変える必要はないが、どこが歩きにくいのか分かっていれば、荷物を運ぶときにも気をつけられる」
「荷車を通すときも?」
「ああ。人が歩くのと、荷車が通るのでは必要な幅も違うからな」
リオは、道を考えることにもいろいろな見方があるのだと知った。
子どもたちが歩きやすい道と、大人が荷車を引く道は同じとは限らない。畑を回るだけなら短い道が便利でも、収穫した野菜を運ぶなら、広くて安定した道のほうがよい。
午後、四人は畑の観察を終えたあと、地図に道の印を追加した。
次に畑を回るときは、この地図を見ながら歩いてみよう。雨が降ったあとには、どの場所が歩きにくくなるのかも確認してみたい。
夕方、リオは記録帳に今日のことを書いた。
畑へ行く道も、畑の一部のように大切にする。短さだけでなく、歩きやすさや周りの草にも気を配る。
記録を書き終えると、リオは地図を丁寧に折りたたんだ。
四つの畑を育てることは、芽や土だけを見ることではない。
畑へ向かう道も、そこへ通う自分たちの暮らしの一部なのだった。




