第6話 行商人の荷車
翌朝。
雨は上がっていた。
空には青い部分が見えている。
「晴れた!」
リオは家を飛び出した。
すると、村の入口から大きな音が聞こえた。
ガタゴト、ガタゴト。
馬に引かれた荷車が、ゆっくりと村へ入ってくる。
「何?」
リオが立ち止まる。
「行商人だ」
父が言った。
荷車には布や道具、食べ物など、村ではあまり見ないものが積まれている。
「街から来たの?」
「ああ」
村人たちも広場へ集まっていく。
エマたちもやってきた。
「何があるかな?」
「食べ物!」
トーマが真っ先に反応する。
行商人の男が荷物を並べ始める。
「今日は街で仕入れたものを持ってきましたよ」
村人たちが商品を見ていく。
リオは見たことのない瓶や布を眺めていた。
「これ何?」
「香辛料だ」
父が答える。
「使うの?」
「少しな」
別の場所では、大人たちが麦の話をしている。
「今年は街で麦の需要が増えてるそうですよ」
「値段は?」
「少し上がってます」
リオには難しい話だった。
けれど、行商人が来ると街の話が聞ける。
それが面白かった。
「父さん」
「ん?」
「街って、こういうものがいっぱいあるの?」
「ああ」
「村にはないものも?」
「たくさんある」
リオは荷車を見る。
その中には、知らないものがいくつもあった。
行商人が小さな菓子を取り出した。
「子供にはこれもありますよ」
トーマの目が輝く。
「食べたい」
エマが笑う。
「トーマ、さっきも食べてたでしょ」
「別腹」
父が小さなお菓子を一つ買ってくれた。
「みんなで分けろ」
リオたちは四人で少しずつ分けた。
甘かった。
村で食べるものとは少し違う味だった。
「おいしい」
リオが言う。
「また来る?」
行商人に聞くと、男は笑った。
「ああ。しばらくしたらまた来るさ」
その言葉が、リオには楽しみだった。
行商人が帰ったあとも、リオは荷車が消えた方角を見ていた。
あの先に、街がある。
そして、その先にはもっと遠い場所がある。
まだ行ったことはない。
でも、いつか見てみたい。
そんな気持ちが、リオの中に小さく芽生え始めていた。




