第5話 雨が降る日
翌朝。
目を覚ましたリオは、窓の外を見てがっかりした。
「雨だ……」
昨日まで晴れていた空は、厚い雲に覆われていた。
屋根を叩く雨音が聞こえる。
「今日は畑、行けないの?」
階段を下りて聞くと、母が笑った。
「雨の日まで行ったら風邪を引くわよ」
「でも、豆が……」
「雨も豆には必要なの」
「水やらなくていい?」
「今日はね」
リオは少し安心した。
朝食の席には、父もいた。
「父さん、今日は畑に行かないの?」
「今日は様子を見るだけだ」
「雨なのに?」
「雨だからだ」
リオにはよく分からなかった。
食事のあと、父は外へ出ていった。
しばらくして戻ってくると、服が少し濡れていた。
「どうだった?」
「土は十分濡れてる。今日は大丈夫だ」
リオは窓から外を見る。
雨が降るだけでも、畑の様子は変わるらしい。
そんなことを考えていると、玄関から声がした。
「リオ!」
エマだった。
「雨だから遊べないよ」
「だから家で遊ぼう」
その後ろにはトーマとカイルもいる。
四人はリオの家で遊ぶことになった。
ノアも加わった。
木のおもちゃを並べたり、積み上げたり。
リナはその横で崩す係だった。
「リナ、壊さないで!」
「あー!」
リナは楽しそうに笑う。
「また壊された」
ノアが笑った。
昼過ぎ。
父が昔の話をしてくれることになった。
「父さんって、昔冒険者だったんだよね?」
カイルが聞く。
「ああ」
「強かった?」
「普通だ」
「本当に?」
「本当だ」
父は笑った。
冒険者だった頃に見た街。
長い旅。
薬草を探したこと。
森で道に迷ったこと。
リオたちは夢中になって聞いた。
「街って大きい?」
「村よりずっと大きい」
「人もいっぱい?」
「ああ」
「店も?」
「たくさんある」
リオは目を輝かせた。
村の外には、自分の知らない場所がある。
それを知るだけで、胸が少しだけ広くなるような気がした。
やがて雨が弱くなってきた。
「明日は晴れるかな」
リオが窓を見る。
「晴れたら畑だな」
父が言った。
リオは頷いた。
雨の日も悪くない。
でもやっぱり、明日は畑へ行きたかった。




