第49話 お兄ちゃんたちの仕事
朝畑の手入れを終えたあと、僕はアルド兄さんとノア兄さんの仕事を見せてもらうことになった。
いつも僕は、自分の畑の芽を見て、水をあげたり草を抜いたりしている。でも、兄さんたちはもっと広い畑を見て、いろいろな作物の世話をしている。
二人がどんなふうに仕事をしているのか、前から気になっていたのだ。
「今日は何をするの?」
僕が尋ねると、アルド兄さんは畑を見渡した。
「まずは畝の間を確認して、草が増えているところを手入れする。それから、収穫できる野菜を見て回る」
「収穫もするの?」
「育っているものがあればな。全部が同じ日に収穫できるわけじゃないから、毎日確認するんだ」
兄さんは農具を持ち、畑の端から歩き始めた。
僕はその後ろについていった。
最初に見たのは、野菜の葉の様子だった。葉が傷んでいないか、土が乾きすぎていないか、周りに草が増えていないか。兄さんは一つずつ確かめながら、必要な場所にだけ手を入れていく。
「全部の畑を同じように手入れするんじゃないんだね」
僕が言うと、ノア兄さんが頷いた。
「作物によって必要なことが違うからな。水が必要なところもあれば、今は触らないほうがいいところもある」
「僕の朝畑と同じだ」
「そうだな。自分の畑で覚えたことも、ここで役に立つだろう?」
僕は嬉しくなった。
小さな畑で覚えたことが、兄さんたちの仕事にもつながっている。まだできないことは多いけれど、無駄ではなかったのだ。
しばらくすると、ノア兄さんが僕に小さな籠を渡した。
「この野菜を、傷つけないように入れてくれるか?」
「分かった!」
僕は野菜を一つずつ受け取り、籠に並べた。
強く握ると葉が折れてしまう。反対に、遠慮しすぎると落としそうになる。ちょうどいい力加減を探しながら、丁寧に扱った。
「上手になったな」
ノア兄さんが言った。
「母さんの手伝いをしているからね」
「なるほど。家の仕事も、畑の仕事もつながっているんだな」
兄さんの言葉に、僕は頷いた。
野菜を育てるだけでは、食卓には並ばない。収穫して、運んで、洗って、料理する。どれか一つでも欠ければ、食べるまでに時間がかかってしまう。
僕は籠を持ち、指定された場所へ運んだ。
そのあと、アルド兄さんが道具の手入れを始めたので、僕も手伝うことにした。
「道具も毎日使うの?」
「使うものはな。土がついたままにしておくと、傷みやすくなることがある。使い終わったら、きれいにして、決まった場所に戻すんだ」
兄さんは農具についた土を落とし、状態を確かめていた。
僕も小さな道具を渡され、布で汚れを拭いた。
畑の仕事は、作物の世話だけではない。道具をきれいにしておくことも、次の日の仕事を楽にするために必要なのだ。
昼ごろ、エマたちがやってきた。
「今日はお兄さんたちのお手伝い?」
エマが尋ねる。
「うん。野菜を籠に入れたり、道具をきれいにしたりしたよ」
「私も家で道具を片づけることがあるよ」
エマが言うと、トーマも頷いた。
「僕は水桶を運ぶことがある。重いけど、前より上手になったんだ」
「それなら、みんな少しずつできることが増えてるね」
カイルが笑った。
午後は、僕たち四人でそれぞれの畑を見て回った。芽は少しずつ葉を広げている。草が増えた場所を手入れし、土の様子を確認して、必要なことを記録した。
自分の畑だけを見ていたときには気づかなかったことも、兄さんたちの仕事を見たあとなら、少し違って見える。
畑を続けるには、毎日の小さな仕事が必要なのだ。
夕食のとき、父さんが僕に尋ねた。
「今日はどうだった?」
「兄さんたちの仕事を見せてもらったよ。野菜を収穫したり、道具をきれいにしたり、いろいろあった」
「そうか。畑仕事は、種を植えたら終わりじゃないからな」
「うん。芽が出てからも、ずっと世話が続くんだね」
父さんは満足そうに頷いた。
僕は今日のことを、畑の記録とは別の紙に書いた。
兄さんたちの仕事を見て、気づいたこと。野菜を傷つけないように扱うこと。道具をきれいにすること。そして、毎日の仕事が次の日につながっていること。
書き終えると、僕は紙を丁寧に畳んだ。
いつか僕も、兄さんたちのように、畑の様子を見て必要な仕事を考えられるようになるだろうか。
まだ先のことかもしれない。
でも、今日一日で、少しだけ近づけたような気がした。




