第43話 日なたと日かげ
朝畑の葉っぱを観察していると、僕は一つ気になることを見つけた。
家の影になりやすい場所と、朝から日が当たる場所では、土の乾き方が違う。それは雨上がりの日にも気づいていたことだ。
では、芽の育ち方にも違いがあるのだろうか。
僕は朝畑の端から端まで歩き、日が当たっている場所と、まだ影になっている場所を見比べた。
どちらの芽も小さい。けれど、葉っぱの開き方が少し違うように見えるものもあった。
「これって、日が当たっているからなのかな」
僕が呟いていると、アルド兄さんが農具を持ってやってきた。
「何を比べてるんだ?」
「日なたと日かげで、芽の育ち方が違うのか気になって」
アルドは畑を眺めた。
「日当たりは、植物の育ち方に関係することがある。ただ、今見ただけでは、それが原因だとは決められないぞ」
「どうして?」
「種を植えた深さや、土の具合も違うかもしれないからな。ひとつの違いだけで全部を説明するのは難しいんだ」
僕は頷いた。
昨日、カイルが話していたことと似ている。違いを見つけるのは楽しいけれど、その理由を一つに決めつけてはいけないらしい。
「じゃあ、どうやって調べればいいの?」
「まずは、今の様子を記録しておけばいい。何日かたってから、もう一度比べてみるんだ」
アルドはそう言って、影になっている場所と日が当たる場所を紙に描いてくれた。
僕はその絵を真似しながら、芽がある場所に印をつけた。
そこへエマたちがやってきたので、僕は考えていることを説明した。
「日なたと日かげで、芽の育ち方が違うのか調べてみたいんだ」
「面白そう!」
エマはすぐに賛成した。
「でも、芽を植え直したりはしないよ。今ある畑の様子を比べるだけ」
カイルが確認するように言った。
「うん。今の場所で、どんな違いがあるかを見るんだ」
トーマも自分の畑を思い浮かべた。
「豆畑は、朝は日が当たるけど、午後は家の影になるんだよな。そこも関係するのかな?」
「それも記録しておこうよ」
エマが提案した。
僕たちはそれぞれの畑で、日が当たる場所と影になる場所を確認した。日なた畑は、名前のとおり日が当たる時間が長い。角の畑は、近くの建物の影が時間によって動いていた。
同じ村の中でも、畑の位置によって条件は少しずつ違う。
僕たちは記録の紙に、気づいたことを書き足した。
昼ごろになると、朝は影になっていた場所にも日が当たり始めた。僕はもう一度、朝畑を見に行った。
「朝と違う!」
日が当たる場所が変わっている。
影になっている場所を記録するなら、朝だけではなく、時間を変えて見たほうがよさそうだ。
そう思った僕は、記録に「朝」「昼」と書き、どこに日が当たっていたかを簡単に描き分けた。
「これなら、明日も比べられるね」
エマが僕の紙を見て頷いた。
午後は畑の手入れをして過ごした。土が乾いている場所を確かめ、必要なところだけ水をあげる。芽の近くに草が生えていたら、根を傷つけないように取り除く。
日当たりを調べることに夢中になって、いつもの仕事を忘れてはいけない。
夕方、僕は家の裏から畑を眺めた。
朝は家の影になっていた場所も、今は夕方の光を受けている。明日になれば、また違う場所に影ができるのだろう。
畑は動かない。でも、太陽が動き、影の形が変わる。それによって、畑の様子も少しずつ変わって見える。
そのことが、僕には不思議で面白かった。
夕食のあと、僕は今日の記録を見返した。
日なたと日かげの違いは、まだはっきりとは分からない。それでも、今日見つけたことを書き残しておけば、何日かあとに比べられる。
僕は紙の端に、小さく書き加えた。
「まだ、どちらがよく育つかは分からない」
分からないことを、分からないまま記録しておく。
それも、畑のことを知るために必要なのだと思った。




