第42話 葉っぱの形
翌朝、僕は朝畑の記録を持って外へ出た。
昨日は芽の大きさを絵で比べた。今日は、葉っぱの形をよく見てみようと思っていた。
芽は小さいけれど、葉っぱの形には違いがある。丸みを帯びたものもあれば、細長く見えるものもある。種の種類が違うからだと父さんが教えてくれたけれど、僕は実際にどんな違いがあるのか、もっと知りたくなった。
僕は畝の前にしゃがみ、葉っぱをじっくり眺めた。
「こっちは丸いな。こっちは少し細い……」
指で触って確かめたい気持ちになったが、芽を傷つけるかもしれない。だから、触らずに目で見て、紙に描くことにした。
丸い葉っぱは丸く、細い葉っぱは細く。そう思いながら描いてみたものの、完成した絵はどれも似たような形になってしまった。
「難しいなあ」
僕が唸っていると、母さんのミーナが籠を持って畑へやってきた。
「何を描いているの?」
「葉っぱの形。違いがあるのは分かるんだけど、絵にすると同じに見えちゃうんだ」
母さんは紙を覗き込んだ。
「そうね。葉っぱは小さいから、細かいところまで描くのは難しいわね。でも、どんな形だったか分かれば十分じゃないかしら」
「これでもいいの?」
「もちろん。絵だけで分からなければ、言葉も添えればいいのよ。『丸い葉』『細長い葉』というふうにね」
僕はなるほどと思った。
絵だけで全部を表そうとする必要はない。言葉で説明すれば、あとから見たときにも分かりやすい。
さっそく、僕は絵の横に「葉が丸い」「葉が少し細い」と書き加えた。
「これなら分かりやすいね!」
「ええ。記録は、上手な絵を描くためのものではないでしょう?」
母さんはそう言って、畑の端に籠を置いた。
「せっかくだから、葉っぱだけでなく、周りの様子も見ておくといいわ。日当たりや、土の乾き具合もね」
僕は畑を見回した。
朝畑は家の裏手にあり、午前中は日が当たる場所が多い。けれど、端のほうは家の影になっている時間が長い。芽が出ている場所も、全部が同じように日を浴びているわけではなかった。
そこへエマたちがやってきた。
「今日は何を調べてるの?」
エマが尋ねた。
「葉っぱの形だよ。種の種類によって違うんだって」
「私も見たい!」
僕たちは、朝畑の芽を見てから、日なた畑へ向かった。
エマの畑では、朝畑とは少し違う形の葉が見られた。エマは葉の形を紙に描き、僕と同じように言葉を書き添えていた。
「こっちは少し細長い感じがする」
「僕のところにも似た形があるよ」
トーマが言った。
カイルはそれぞれの畑の記録を並べて、どこが違うのかを考えていた。
「葉っぱの形だけじゃなくて、芽が出た日も違うね。でも、種の種類が違うから、比べるときはそこも考えないといけない」
「カイルは、いつも難しいことを考えてるね」
トーマが言うと、カイルは困ったように笑った。
「難しく考えているつもりはないよ。ただ、分からないことを一緒にしてしまうと、あとで間違えそうだから」
僕はその言葉を記録の紙の端に書き留めた。
同じ畑の芽でも、種類が違えば形も違う。葉っぱが大きいからといって、すぐに元気だと決めつけることはできない。違いを見つけたら、どうして違うのかを考えることも大切なのだ。
昼前、僕たちはそれぞれの畑で、芽の周りに生えた草を取り除いた。
作業を終えてから、僕は朝畑に戻った。
葉っぱは相変わらず小さい。でも、昨日よりも少し開いているものがある。よく見れば、葉の端の形も違って見えた。
僕は記録の紙に、新しく気づいたことを書き加えた。
絵は上手ではないし、言葉も簡単なものばかりだ。それでも、毎日続けていけば、少しずつ分かることが増えていくだろう。
夕食のとき、父さんに葉っぱの形について話してみた。
「同じ畑でも、種類によって違うんだね」
「そうだな。だからこそ、育てるものに合わせた世話が必要になる」
「まだ分からないことばかりだよ」
「それでいい。最初から全部分かっていたら、覚えることがなくなってしまうだろう?」
父さんは笑った。
僕も笑って、スープを口に運んだ。
明日は、葉っぱの形だけでなく、日当たりにも注目してみよう。
畑には、まだ知らないことがたくさんある。




