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第30話 みんなの畑を見に行こう

 朝食のあと、リオは父のガイルに声をかけた。


「父さん、今日はエマたちの畑を見に行ってもいい?」


「友達の畑か?」


「うん。エマもトーマもカイルも、畑を作ってるんだ」


「そうだったな。自分の家の仕事が終わってからなら、見に行ってもいいぞ」


「ありがとう!」


 リオは嬉しそうに返事をした。


 自分の家の畑では、少しずつ芽が育っている。


 毎日様子を見ているので、変化にも気づけるようになってきた。


 では、友達の畑はどうだろう。


 エマは豆を植える準備をしていたし、トーマとカイルも小さな畑を作っていた。


 自分の家とは違う場所で、どんな作物を育てているのか気になっていた。


 午前中、リオは父の手伝いをした。


 土の様子を確認し、道具を片付け、必要な場所に水を与える。


 以前なら、作業が終わるのを待ち遠しく思っていたかもしれない。


 けれど、今は父の仕事を手伝うことも楽しかった。


 少しずつ、自分にできることが増えている。


 それが嬉しかった。


 昼食を終えると、リオはエマの家へ向かった。


 家の裏では、エマが母親と一緒に小さな畑を見ていた。


「エマ!」


「あ、リオ。来てくれたんだ」


「畑を見に来たよ。どうなった?」


 エマは嬉しそうに空き地を指差した。


「草を取って、土を耕したところなの。種はこれから植えるんだよ」


 空き地は、前に見たときよりもきれいになっていた。


 草が取り除かれ、土も柔らかくなっている。


「すごいね!」


「お母さんが手伝ってくれたの」


 エマの母親が笑った。


「エマが自分で育てたいと言ったからね。できる範囲で手伝っているのよ」


 リオは頷いた。


 自分の家の畑も、最初から一人で作ったわけではない。


 父や兄たちに教えてもらいながら、少しずつ仕事を覚えてきた。


 エマも同じなのだ。


「種を植えるのは、いつ?」


「明日、土の様子を見てからにするつもり」


「楽しみだね」


「うん!」


 しばらくエマと話したあと、リオはトーマとカイルの畑へ向かった。


 二人はちょうど、畑の端に残った小石を拾っているところだった。


「おーい!」


 リオが声をかけると、トーマが顔を上げた。


「リオ! 見に来たのか?」


「うん。どうなった?」


「見てくれよ! だいぶきれいになっただろ?」


 トーマが胸を張る。


 確かに、空き地は前より整っていた。


 土をならした場所が広がり、畑として使えそうな部分がはっきりしている。


「すごいね。もう種を植えられそう?」


「父さんは、もう少し土を確認した方がいいって言ってた」


 カイルが答えた。


「だから、今日は小石を拾っているんだ」


「そっか」


 リオはしゃがみ込み、二人と一緒に小石を拾い始めた。


 大きな石は籠へ入れ、小さなものは邪魔にならない場所へまとめる。


 単純な作業だったが、三人で話しながらやると楽しかった。


「なあ、リオ」


 トーマが突然尋ねた。


「何?」


「お前の家の畑って、どれくらい広いんだ?」


「うーん……この畑よりは広いと思う」


「いいなあ。俺ももっと広い畑がほしい」


「広くなると、その分だけ手入れも大変なんじゃない?」


 カイルが言う。


「……それはそうか」


 トーマは少し考え込んだ。


「じゃあ、今はこのくらいでいいや」


 三人は笑った。


 しばらく作業を続けていると、エマもやってきた。


「こっちも順調そうね」


「エマの畑はどうだった?」


 リオが尋ねる。


「明日、種を植える予定だよ」


「じゃあ、僕たちもそろそろかな」


 カイルが畑を見渡した。


「それぞれの畑で、違うものを育てるんだね」


「うん。大きくなったら、みんなで見比べようよ」


 リオが提案すると、エマは笑顔で頷いた。


「いいね!」


「俺の豆が一番大きくなるぞ!」


 トーマが自信満々に言った。


「まだ植えてもいないのに?」


 カイルが笑う。


「気持ちが大事なんだよ!」


 トーマの言葉に、みんなで笑った。


 夕方が近づくと、それぞれ家へ帰ることになった。


 リオは帰り道、村の景色を眺めていた。


 自分の家の畑。


 エマの小さな畑。


 トーマとカイルが作っている畑。


 どれも同じ村の中にあるのに、少しずつ違っている。


 これから何を育てるのかも違う。


 種を植える日も、成長の仕方も、収穫する時期も違うかもしれない。


 でも、みんなが土を耕し、作物を育てようとしていることは同じだった。


 家に帰ると、父が畑の道具を片付けていた。


「友達の畑はどうだった?」


「みんな、頑張ってたよ! エマは明日、豆を植えるんだって。トーマとカイルも、もう少しで種を植えられそうだった」


「そうか。それは楽しみだな」


 ガイルは笑った。


「自分の畑だけじゃなく、友達の畑を見るのも勉強になるだろう?」


「うん!」


 夕食の席で、リオは今日の出来事を家族に話した。


 ノアは興味深そうに聞き、アルドは帳面をつけることを勧めた。


「それぞれの畑で、何をいつ植えたか書いておくと、あとで比べられるかもしれないな」


「それ、いいね!」


 リオは目を輝かせた。


 友達にも提案してみよう。


 どの畑が一番大きく育つか、競争するためではない。


 違う場所で育てた作物が、どんなふうに成長していくのかを知りたいのだ。


 食事が終わり、布団に入る前に、リオは窓の外を眺めた。


 明日はエマが種を植える日。


 トーマとカイルの畑も、もうすぐ種を植えられるかもしれない。


 自分の畑だけではなく、友達の畑にも、これから小さな芽が出てくる。


 そう考えると、村の中に楽しみが少し増えたような気がした。


 明日もまた、いつもの朝がやってくる。


 家族と一緒に朝食を食べ、畑の様子を確かめ、友達と話をする。


 何か大きな出来事が起きるわけではない。


 それでも、昨日とは少し違う一日になるだろう。


 リオはそんな明日を楽しみにしながら、ゆっくりと目を閉じた。

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