↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
29/94

第29話 アルド兄ちゃんのお手伝い

 ある日の朝、リオが朝食を終えて畑へ行こうとすると、アルドが帳面を片手に近づいてきた。


「リオ、今日は俺の仕事を少し手伝ってみるか?」


「兄ちゃんの仕事?」


「ああ。畑の記録をまとめるんだ」


 リオは興味を持った。


 アルドが持っている帳面には、畑で育てている作物の名前や、種を植えた日、作業の内容などが記されている。


 以前にも見せてもらったことはあるが、自分で手伝ったことはなかった。


「僕にもできる?」


「簡単なところならな。文字や数字を覚える練習にもなるぞ」


「やる!」


 リオはすぐに返事をした。


 アルドは笑いながら、机の上に帳面と木の板を並べた。


「まずは、今日の日付を書くところから始めよう」


「日付?」


「いつ記録したのか分からなくなったら困るだろう?」


 リオは頷いた。


 アルドが書き方を教えてくれる。


 リオはその通りに文字と数字を書いてみた。


 最初は少し間違えてしまったが、アルドがゆっくり説明してくれたので、何とか書き直すことができた。


「できた!」


「うん。ちゃんと書けているな」


 褒められると、嬉しくなる。


 リオは次の項目も書いてみたくなった。


「次は何を書くの?」


「今日は畑の様子を確認するから、その結果を書くんだ」


「どんなことを?」


「芽がどれくらい育っているか、土が乾いていないか、何か気づいたことがあれば記録する」


 リオは少し考えた。


「じゃあ、昨日より葉が大きくなっていたら、それも書くの?」


「ああ。気づいたことは書いておくといい」


 二人は帳面を持って畑へ向かった。


 アルドは作物の様子を確認しながら、必要なことを記録していく。


 リオもその隣で、芽の様子を見ていた。


「兄ちゃん、こっちは葉が広がってるよ」


「そうだな。昨日の記録と比べてみよう」


 アルドが帳面を開いた。


 そこには、昨日確認したときの様子が書かれている。


 記録を見比べると、確かに葉が少しずつ広がっていることが分かった。


「本当だ!」


「こうやって比べると、変化が分かりやすいだろう?」


「うん!」


 リオは驚いた。


 毎日見ていると、どれくらい変わったのか分からなくなることがある。


 でも、前の日の記録があれば、違いを確かめられる。


「じゃあ、僕も書いてみる」


 リオは木の板を取り出し、今日見つけたことを書き始めた。


 文字はまだ少し歪んでいる。


 それでも、以前よりは上手に書けるようになっていた。


 昼前には、畑の確認が終わった。


 アルドは帳面を閉じながら言った。


「ありがとう。助かったよ」


「本当?」


「ああ。リオが気づいたことも、ちゃんと役に立った」


 リオは嬉しくなった。


 自分の観察が、家族の仕事に役立った。


 それは、芽を見つけたときとはまた違う嬉しさだった。


 家へ戻ると、母のミーナが昼食の準備をしていた。


「今日はアルドのお手伝いをしたの?」


「うん! 畑の記録を書いたんだ」


「まあ、すごいわね」


 ミーナは笑顔でリオの頭を撫でた。


「文字の練習も続けているものね」


「まだ全部は書けないけど、少しずつ書けるようになってきたよ」


「それで十分よ」


 昼食を終えたあと、リオは自分の木の板を持って、もう一度文字の練習をした。


 以前は、文字を書くことは難しいものだと思っていた。


 けれど、毎日少しずつ練習しているうちに、読める文字も書ける文字も増えてきた。


 畑の作物と同じように、急に上手になるわけではない。


 それでも、続けていれば変わっていく。


 午後、広場でエマたちに会ったとき、リオは今日の出来事を話した。


「畑の記録をつけたの?」


 エマが驚いたように聞く。


「うん。兄ちゃんに教えてもらったんだ」


「私もやってみたいな」


「エマの畑でも、記録をつけたらいいんじゃない?」


「そうね。いつ種を植えたか書いておけば、後で分かりやすそう」


 カイルも頷いた。


「俺たちの畑でもやってみるか」


「記録をつけるなら、文字を覚えないとな!」


 トーマが胸を張った。


「トーマ、文字は読めるの?」


 エマが尋ねる。


「……少しはな!」


 その返事に、みんなで笑った。


 その日の夕方、リオは家へ帰り、アルドに今日の記録を見せてもらった。


 自分が書いた文字も、ちゃんと帳面に残されている。


 リオはそれを見て、少しだけ胸を張った。


 明日もまた、畑へ行こう。


 そして、今日とは違う何かを見つけたら、今度も記録してみよう。


 小さな発見を積み重ねていけば、いつかもっとたくさんのことが分かるようになるかもしれない。


 そう思うと、明日が楽しみだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。