第3話 四人の約束
翌朝。
リオが畑へ向かうと、すでにエマが待っていた。
「遅いよ」
「まだ朝だよ」
「私、もっと早く来た」
「何時?」
「分からない」
「じゃあ早いかどうか分からないじゃん」
リオが笑う。
すぐにトーマもやってきた。
「おはよう」
「トーマ、今日は何食べてるの?」
「干し果物」
「朝から?」
「うん」
最後にカイルがやってくる。
「今日は俺が一番早かった」
「私の方が早かったよ」
「いや、俺だ」
「見てないじゃん」
「……たぶん俺」
四人は顔を見合わせて笑った。
それから、昨日の豆を見る。
「大きくなった?」
エマが聞いた。
リオはしゃがんで確認する。
「……分からない」
「昨日と同じじゃない?」
トーマが言う。
「そんなことないよ」
「どこが?」
「ここ!」
リオが葉を指差す。
少しだけ、葉が開いている。
エマも覗き込んだ。
「本当だ」
カイルは少し考えてから言った。
「じゃあ、毎日見ればもっと分かるんじゃないか?」
「そうだね」
リオは頷いた。
四人はその日から、毎朝畑に集まるようになった。
もちろん、ただ豆を見るだけではない。
父に頼まれれば水やりを手伝う。
雑草を見つければ抜く。
ただし、最初のうちは何が雑草なのか分からない。
「リオ、それは抜くな」
父に言われる。
「えっ」
「それ、作物だ」
「……ごめん」
「最初は間違えるさ」
アルドが横から教えてくれた。
「葉っぱの形を見るんだ」
アルドは十一歳。
最近では父の仕事をかなり手伝っている。
「アルド兄ちゃん、どうして分かるの?」
「毎日見てるから」
「僕も毎日見れば分かる?」
「分かるようになる」
リオは真剣に畑を見た。
少しずつ覚えていく。
作物の形。
土の状態。
水の量。
まだ何も知らない。
でも、知らないからこそ面白かった。
昼になると、四人は村の広場で昼食を食べた。
「ねえ」
エマが言った。
「この豆、大きくなったらどうするの?」
「食べる」
トーマが即答する。
「それはそうだけど」
「売るんじゃない?」
カイルが言う。
「どっちかな」
リオは考えた。
父に聞けば分かる。
けれど、今はまだ聞きたくなかった。
自分たちで育てた豆がどうなるのか、少しだけ楽しみにしていた。
「大きくなったら考えよう」
そう言うと、三人も頷いた。
小さな豆一つ。
それだけで、四人には明日の楽しみができていた。




