第2話 芽が出た
次の日。
リオは母に起こされる前に目を覚ました。
「……朝?」
窓を見る。
昨日と同じように、朝の光が差し込んでいた。
リオは布団から出ると、急いで服を着た。
「おはよう」
階段を下りると、ミーナが驚いた顔をした。
「今日は早いわね」
「畑!」
「あら」
母が笑う。
「昨日の豆が気になるの?」
「うん」
朝食を食べ終えると、リオは父より先に外へ出ようとした。
「リオ、待て」
「早く行きたい」
「朝飯がまだだ」
「……そうだった」
父と母が笑った。
食事を終えてから、リオは父と畑へ向かった。
「今日は自分で見てみるか?」
「うん!」
昨日教えてもらった場所へ走っていく。
しゃがんで土を見る。
「……あれ?」
「どうした?」
「昨日より大きい!」
確かに、小さな芽が少しだけ伸びている。
「本当だ」
「昨日はこれくらいだった」
リオは指で高さを示した。
「今日はこれくらい」
「よく見てるな」
父が笑う。
そこへ、畑の向こうから声がした。
「リオー!」
振り返ると、エマが走ってくる。
「おはよう、エマ」
「おはよう!」
エマ・リースはリオと同じ六歳。
明るく元気で、リオたちの中では一番しっかりしている。
「何してるの?」
「豆を見てる」
「豆?」
「昨日、芽が出たんだ」
エマもしゃがみ込む。
「本当だ」
「すごいでしょ?」
「うん。でも、まだ小さいね」
「これから大きくなるんだって」
そこへ、ノアと二人の男の子がやってきた。
「何してるんだ?」
ノアが聞く。
「豆を見る会」
「なんだそれ」
後ろからトーマが笑った。
トーマ・ベルクはリオと同じ六歳。食べることが好きで、今日も何かを口に入れている。
「トーマ、それ何?」
「パン」
「朝ご飯食べたばっかりじゃない?」
「食べた。でも、まだ食べられる」
その隣では、七歳のカイルが腕を組んでいた。
「豆なんて見てどうするんだ?」
「育つんだよ」
リオが答える。
「そんなの知ってる」
「カイル、知ってるの?」
「知ってる」
カイルは得意そうに頷いた。
「じゃあ、どうやって大きくなるの?」
「……水をやる」
「それだけ?」
「……太陽もいる」
エマが笑う。
「結局あんまり知らないじゃん」
「知ってるって!」
四人の声が畑に響いた。
父は少し離れたところで、その様子を笑いながら見ていた。
「お前たち、畑を踏むなよ」
「はーい!」
リオはもう一度、小さな芽を見た。
昨日より少し大きい。
明日はもっと大きくなっているだろうか。
そんなことを考えていると、エマが言った。
「明日も見に来ようよ」
「うん!」
その約束が、次の日から四人の日課になった。




