第24話 トーマとカイルの種選び
エマの小さな畑を手伝ってから数日後。
リオが広場へ行くと、トーマとカイルが何やら真剣な顔で話し合っていた。
「だから、豆がいいって!」
「いや、葉物の方が早く育つんじゃないか?」
「でも、豆の方がたくさん食べられるだろ!」
「食べることだけで決めるなよ」
二人の話を聞いて、リオは首を傾げた。
「何の話?」
トーマが勢いよく振り返る。
「リオ! ちょうどいいところに来た!」
「どうしたの?」
「俺たちも畑を作ろうと思うんだ!」
「二人で?」
「そう!」
トーマは大きく頷いた。
話を聞くと、二人はカイルの家の裏にある空き地を使って、小さな畑を作ることにしたらしい。
エマが畑を作り始めたのを見て、自分たちも何か育ててみたくなったのだという。
「それで、何を植えるか決まらないの?」
「そうなんだよ」
カイルが困ったように笑った。
「トーマは豆がいいって言うんだけど、俺はもう少し育てやすいものから始めたいんだ」
「豆だって育てられるぞ!」
「育てられるかどうかじゃなくて、どれがいいかを考えてるんだよ」
二人はまた言い合いを始めた。
リオは少し考えたあと、提案した。
「じゃあ、二種類植えたら?」
「二種類?」
「うん。畑が広いなら、豆も葉物も少しずつ植えればいいんじゃないかな」
二人は顔を見合わせた。
「……それでいいのか?」
トーマが聞く。
「畑の広さにもよるけど、全部を一種類にしなくてもいいと思うよ」
リオが答えると、カイルは頷いた。
「確かに、それなら両方試せるな」
「よし、決まりだ!」
トーマは嬉しそうに拳を握った。
ところが、話はそこで終わらなかった。
「でも、種はどうする?」
カイルが尋ねる。
「買うんじゃないのか?」
「お金は?」
「……」
トーマが黙り込んだ。
リオも考えた。
種を買うには、お金が必要になる。家で使っている種を分けてもらう方法もあるが、勝手に持っていくわけにはいかない。
「まずは、お父さんやお母さんに相談した方がいいよ」
リオが言うと、二人は素直に頷いた。
その日の夕方、トーマは父親に相談した。カイルも母親に話したらしい。
翌日、三人が集まったときには、畑作りについて少し話が進んでいた。
「父さんが、余っている種なら少し分けてくれるって!」
トーマが報告する。
「俺の家も、育て方を教えてくれるってさ」
カイルも嬉しそうだった。
「じゃあ、種は用意できそうだね」
リオが言った。
「あとは、畑をきれいにするだけだ」
トーマは張り切っていた。
さっそく三人はカイルの家へ向かった。
家の裏の空き地は、エマの畑より少し広かった。しかし、草が生えていて、土の表面には小石も混ざっている。
「まず、草を取らないとな」
カイルが言う。
「よし、競争だ!」
トーマはそう言うと、さっそく草を抜き始めた。
「競争にしなくてもいいだろ」
カイルは苦笑したが、結局は自分も草を抜き始めた。
リオも手伝い、三人で作業を進める。
途中、トーマが大きな草を抜こうとして、尻もちをついた。
「うわっ!」
「大丈夫?」
リオが駆け寄る。
「大丈夫だ! 草が思ったより強かっただけだ!」
「草が強いって何だよ」
カイルが笑った。
「笑うなよ!」
トーマは土を払いながら立ち上がった。
作業は思った以上に大変だったが、三人でやると少し楽しかった。
草を抜き、小石を拾い、土をならしていく。
夕方になる頃には、空き地の半分ほどがきれいになっていた。
「今日はここまでだな」
カイルが言う。
「明日もやろうぜ!」
トーマは元気いっぱいだった。
リオも頷いた。
「うん。種を植えるのが楽しみだね」
帰り道、リオは二人に尋ねた。
「もし、豆がたくさんできたらどうするの?」
「食べる!」
トーマは即答した。
「少しは来年のために残すんじゃないか?」
カイルが言う。
「それもいいな。でも、まずは食べたい!」
三人は笑った。
小さな畑ができるまでには、まだ時間がかかる。
種を植えたあとも、世話をしなければならない。
収穫できるかどうかも、今の時点では分からない。
それでも、三人は少しずつ準備を進めていた。
リオは、自分の家の畑だけでなく、友達の畑が増えていくことを嬉しく思った。
いつか、みんなの畑で育った作物を見比べられる日が来るかもしれない。
そのときは、どんな話ができるだろう。
そんなことを考えながら、リオは家へ帰った。




