第19話 小さな芽
数日後。
朝、父と一緒に畑へ向かったリオは、途中で足を止めた。
「父さん」
「どうした?」
「あれ……」
畑の土から、小さな緑色のものが出ている。
「芽が出た」
ガイルが近づいて確認する。
「ああ。出てきたな」
リオはしゃがみ込んだ。
小さな芽。
昨日までは見えなかった。
それが今朝は土の上に顔を出している。
「これ、大きくなる?」
「ちゃんと世話をすればな」
「どれくらい?」
「それは作物による」
リオは芽をじっと見る。
指で触ってみたくなった。
けれど、父に言われた。
「触りすぎるなよ」
「うん」
そこへ、エマたちがやってきた。
「何してるの?」
「芽が出たんだ」
「どこ?」
四人で覗き込む。
「小さい!」
エマが驚く。
「これ、本当に大きくなるの?」
「父さんがなるって」
トーマもしゃがみ込んだ。
「いつ食べられる?」
「まだまだ先」
「えー」
カイルが笑った。
「トーマは食べることばっかりだな」
「だって畑って、最後は食べるためだろ?」
父が少し離れたところから聞いていた。
「それも間違いじゃないな」
みんなで笑った。
その日の午後。
リオはもう一度畑を見に行った。
朝と比べても、ほとんど変わっていない。
当然だ。
芽が出たばかりなのだから。
それでも、リオは少し嬉しかった。
何日も前に父と土を耕した。
種を植えた。
水をやった。
何も変わらない日が何日も続いた。
それでも、土の中では少しずつ変化していた。
「すぐには見えないんだ」
リオは呟いた。
文字の練習もそうだった。
最初は上手く書けなかった。
でも、毎日練習して少しずつ形が整った。
畑も同じなのかもしれない。
目に見えないところで、少しずつ進んでいる。
夕方、家に帰ると、母が夕食の準備をしていた。
「今日、芽が出たよ」
「まあ、本当?」
「うん。すごく小さかった」
リナも話を聞いていた。
「め?」
「そう。畑に出てきたの」
リオが手で小ささを表す。
リナは不思議そうに首を傾げた。
「みたい」
「明日、一緒に見に行く?」
「うん!」
小さな約束ができた。
明日は妹にも見せてあげよう。
リオはそう思った。




