第17話 ノア兄ちゃんの約束
その日の午後。
リオが広場へ行くと、エマとトーマ、カイルが待っていた。
「今日は何する?」
リオが聞く。
「かけっこ!」
トーマが手を上げた。
「また?」
「今度こそ勝つ」
トーマは自信満々だった。
四人は広場の端に並ぶ。
エマが合図をする。
「よーい……」
走り出した。
リオも必死に走る。
トーマも速い。
カイルは少し先を走っている。
ところが、途中でトーマが足を取られた。
「うわっ!」
転んだ。
「トーマ!」
エマとリオが駆け寄る。
「大丈夫?」
「大丈夫……」
膝に小さな擦り傷ができている。
「痛い?」
「ちょっと」
カイルが手を貸して立たせる。
「無理して走るなよ」
「分かってる」
そこへ、広場を通りかかったノアがやってきた。
「どうした?」
「トーマが転んだ」
「見せてみろ」
ノアは少し心配そうに傷を見る。
「家に帰った方がいい」
「でも、まだ遊びたい」
「怪我したなら今日は休め」
トーマは少し不満そうだったが、頷いた。
リオはノアを見た。
いつもなら、ノアは自分も遊ぼうと言う。
でも今日は違った。
「ノア兄ちゃん、優しいね」
「普通だろ」
「昨日は勉強嫌がってたのに」
「それは関係ない」
ノアは照れくさそうに顔を背けた。
家へ帰る途中、リオはノアに聞いた。
「兄ちゃん、明日も畑手伝う?」
「……手伝う」
「本当?」
「この前、父さんに教えてもらったからな」
ノアは少し考えてから続けた。
「覚えたことは忘れないうちにやった方がいいだろ」
リオは嬉しくなった。
家に帰ると、ノアは父に今日の話をした。
「明日、畑を手伝いたい」
「いいぞ」
「ちゃんとやる」
「無理はするなよ」
「分かってる」
リオはその様子を見ていた。
ノアは少しずつ変わっている。
昨日までは遊びたがっていた。
今日は、自分から畑の手伝いを申し出た。
それが大きな変化なのかは分からない。
でも、リオには嬉しかった。
「僕も手伝う」
「じゃあ二人でやるか」
「うん!」
兄弟は顔を見合わせて笑った。
明日は二人で畑へ行く。
それだけの約束だった。




