第13話 ノア兄ちゃんも勉強する
次の日。
リオは朝食を食べ終えると、昨日使った木の板を持ってきた。
まだ少し文字の練習がしたかった。
椅子に座っていると、後ろから声がする。
「何してるんだ?」
振り返ると、次兄のノアがいた。
「文字の練習」
「へえ」
ノアは板を覗き込んだ。
「読めるぞ」
「本当?」
「リオって書いてある」
リオは嬉しくなった。
「ノア兄ちゃんも書ける?」
「もちろん」
「じゃあ書いて」
「……」
ノアの動きが止まった。
「どうしたの?」
「朝ご飯を食べてからだ」
そう言って逃げようとする。
しかし、母のミーナがすぐに声をかけた。
「ノア」
「……はい」
「あなたも一緒に練習しましょうね」
「俺も?」
「あなたもよ」
ノアは少しだけ困った顔をした。
リオは思わず笑ってしまう。
「ノア兄ちゃんも勉強だ」
「笑うなよ」
「だって」
「お前だって昨日は全然書けなかっただろ」
「今日は書ける」
「じゃあ見せてみろ」
リオは得意げに文字を書いた。
昨日より少し上手になっている。
「ほら」
「……まあまあだな」
ノアはそう言いながら、木の板を受け取った。
最初は面倒そうにしていた。
けれど、何度か書いているうちに真剣になっていく。
「ノア兄ちゃん、上手」
「当然だ」
「昨日までできなかったのに」
「……」
ノアは黙った。
ミーナが笑う。
「二人とも、少しずつ上手になればいいのよ」
午前の勉強が終わると、リオとノアは父と一緒に畑へ向かった。
今日は畑の土を耕す日だった。
父が鍬を使う。
リオにはまだ重いので、小さな道具を渡された。
ノアも別の場所で土をならしている。
「兄ちゃん、そこ違うよ」
「分かってる」
「父さんが言ってた」
「分かってるって」
少しして、ガイルが二人のところへ来た。
「焦らなくていい。土は力任せにやればいいわけじゃない」
父が手本を見せる。
鍬を入れる位置。
土を動かす方向。
どれも簡単そうに見える。
けれど、実際にやってみると難しい。
リオは何度も失敗した。
ノアも同じだった。
それでも、父は急かさない。
「最初からできる人はいない」
その言葉を聞いて、リオは昨日母に言われたことを思い出した。
少しずつ。
文字も、畑も。
何でもすぐにできるわけじゃない。
昼過ぎには、ノアも少し慣れてきた。
「リオ」
「何?」
「これ、結構疲れるな」
「うん」
「父さん、毎日やってるの?」
「そうだよ」
二人で父を見る。
ガイルは黙々と作業を続けていた。
「……すごいな」
ノアが小さく呟いた。
リオも頷いた。
今日も新しいことを一つ知った。
それだけで、十分な一日だった。




