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「あの、わたくしに『ホカノジンセイデ ヤッテホシイ コトガアル』って言っていたでしょう? それはなんですか? それから、わたくしの名前がゲームの『メラニー』じゃなくて『メリーローズ』になっているのは、あなたがしたこと? 前世で普通に販売していたゲームの世界に実際にあって、人々が生きているのはどうして?」
『ソンナニ イチドニ シツモン スル ヤツガ アルカ』
「だってー」
すっかりこの状況に馴染んでいるメリーローズである。
『デハ マズ ヤッテホシイ コトニ ツイテ ダガ スデニ オマエガ ヤッテ クレタ』
『レイヲ イウ』
「なんのことかわからないけど、やったー!」
『メラニー ガ メリーローズ ニ ナッタ ノモ オマエ ノ スイソク ト ホボ オナジ ダ』
『メラニー ノ ママデハ コノ セカイガ スイタイニ ムカッテ イタ』
『メラニー ハ セカイ ヲ スイタイ サセル チカラ ニ タイコウ デキナイ』
『オマエタチ ガ キョウセイリョク 卜 ヨブモノ ダ』
『ナニカ ホカノ セカイ カラ テコイレ シナケレバ イケナカッタ』
『ソノ タメノ オマエ ダ』
(『梃入れ』……)
大精霊の世界にも「梃入れ」という言葉があるのか。
妙なところで、メリーローズは感心したが、それよりあの「ゲームの強制力」がこの世界を衰退させるものだったと、今更知った。
それより、ひとつ気になって更に質問する。
「まさか、そのために菜摘を殺したわけじゃ……」
『チガウ』
『シンデ フラフラ シテイル オマエノ タマシイ カラ ミョウナ チカラヲ カンジタ』
『オマエ ナラ ヤッテ クレルト オモッタ』
「ふーん。まあ、いいわ。それで? この世界ってなんなの? どうして市販されたゲームの舞台が実在するの?」
『タシカニ コノ セカイハ 《レジェンダリー・ローズ》 ノ セカイ ダ』
『セカイハ ダレカガ カンソク スルト ウマレル』
『オマエノ セカイ デハ ツクリモノノ セカイデ アッテモ、 オマエタチ ガ ニンシキシタ シュンカン、 コノ セカイモ ウミダサレタ ノダ』
「なんだろう、多元宇宙……的な?」
『ソウソウ』
(適当に相槌打たれた気がする……)
とはいえメリーローズ自身も深く考えない性分なので、それでよしとすることにした。
「あ、最後にもひとつ」
『ナンダ』
「エッちゃん陛下に『威厳』の魔力を与えているのも、あなた?」
『バレタカ』
(『ばれたか』って……)
『カノジョ ハ アノママ デハ キョウセイリョク ノ エイキョウ ヲ ウケヤスカッタ』
『ナンラカノ チカラヲ アタエル ヒツヨウガ アッタ』
エメラインのためだったとわかったので納得し、最後の頼みごとをする。
「ねえ、わたくし元の世界に帰りたいんだけど。あ、日本じゃなくて『レジェンダリー・ローズ』の方ね」
『マカセトケ』
ハッと気が付くと、メリーローズはシルヴィアと一緒に階段を降りていた。
元の第一校舎の階段だ。
真っ白だった目の前の景色が、暗い校舎内に差し替わったせいで真っ暗に見え、一瞬足下が覚束なくなる。
「……あ」
「どうしました? 眩暈でも?」
「いえ、大丈夫よ」
(夢? 今のは、夢じゃないよね?)
しかし、こうも考えた。
(夢でも、いいか。夢でも本当でも、この世界がわたくしの生きていく場所であることには、間違いないのだし)
一足先に校舎を出たアルフレッドが、光溢れる広場から手招きしている。
「今、参りますわ。アルフレッド様」
メリーローズは婚約者に向かって、足を速めた。




