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四文字で魔法を創造して  作者: 斗樹 稼多利
34/45

帝都へ帰還


 事件からしばらくの月日が経過し、カタギリ子爵領内で起きた騒動もだいぶ鎮静化つつあった。

 各ギルドや組合や国防軍は内部調査に加えて再研修を行い清浄化を図ると共に、逮捕者が出たことによって生じた業務の穴も人員の配置変えと補充を行って通常業務を取り戻していった。

 領主であるショウマが直々にやって来て対応と指揮を執っていたこともあり想定より早く事態が落ち着いたのだが、今回の件で領内における人と物の出入りと動きが鈍くなってしまう事態も発生。だが報告を受けたショウマは冷静に受け取る。


「こればかりは仕方あるまい。本当に鎮静化したのかを見極めるまでは、念のためにと対応しているのであろう」


 あくまで安全を確認するための一時的なもので、真面目にしっかりやっていればいずれ元通りになると判断して特別な対応はしなかった。それでも情報は逐一調べて、動きが戻らなかったら対応はするようレイトと相談をしていた。

 そうした日々の中でシューゴ達も依頼の護衛と冒険者活動に励み、カズトとトシキがEランクへ上がった頃にタイガの留学期間が終了。帝都へと引き上げることとなった。


「気をつけて帰るんだぞ」

「はい、父上。レイトさんもお世話になりました」

「いやいや、大したことはしていないよ。面倒事のせいで迷惑もかけたしね」

「それはそれで勉強になりました」


 屋敷の前で言葉を交わす三人を眺めるシューゴ達は既に馬車も含めて準備を整え、後はタイガが乗ればいつでも出発できる。

 事後処理の仕事がまだ少しあるためショウマはもうしばらくカタギリタウンに残るが、帝都での事は留守番を任せてきたシューイチに任せてあるから大丈夫だと言っている。

 頭が良くて人当たりも良くて人望もあるが、色々と気にしすぎる癖のある兄の胃は大丈夫かとタイガの後ろに控えているシューゴは思った。


「ではシューゴ、帝都までタイガを頼んだぞ。依頼完了のサインはシューイチからもらってくれ。話は通してあるし、委任状は渡しておいた」

「分かりました。お任せください」


 依頼人が何かしらの理由で依頼の完了を確認できない場合、あらかじめ代理人に委任状を渡して完了の確認を代行してもらうことができる。

 その場合はギルドでの完了手続きに少々手間が発生してしまうのだが、完了できずにいるよりはと割と利用されている。


「ああそれと、年末年始くらいは家へ顔を出せ。息子としてな」

「……分かったよ」


 仕事中にほんのちょっとだけ見せた息子としての反応にショウマとレイトだけでなく、何故かタイガからも暖かい視線を向けられる。

 なんとなくその視線に耐えられなくなったシューゴは視線を逸らすが、そこには同じく暖かい表情や眼差しを送る仲間達がいた。

 双方ともに見られたと心の中で叫ぶと仲間達は一斉に馬車へ逃げ、無言で弱めの「螺旋廻弾」を使おうとしたシューゴは逃げ足の速さに後で覚えてろと思った。

 そんな姿を見つつ、外の世界へ飛び出した息子の一人が上手くやっていることにショウマは感慨に耽る。

 家を継ぐことが決まっていて出たくとも出れなかった外の世界へ踏み出した息子の、以前より少し逞しく見える姿に親として嬉しくあり同時に親離れをちょっとだけ寂しく思いながら。


「では、そろそろ失礼します」

「うむ。気をつけてな」

「次に来る時を待っているよ」


 最後にそう交わすとタイガとシューゴは馬車へ乗り込み、見送りをするショウマとレイトへ小さく手を振ったり一礼しながら屋敷を離れていく。

 町中を安全運転で移動する馬車の中では、シューゴが先ほどのやり取りの件で仲間達と軽い言い合いになっていた。


「いいから忘れろ、さっきのは」

「いやいや、忘れるなんてもったいない」

「そうですよ。貴重なデレ姿なのですから」

「誰がデレたって?」


 言い合いといっても決して殺伐としたものではなく、友人同士による冗談だと分かった上でのようなもの。

 事実、コトネは爆笑してアカネとトシキも微笑みを浮かべている。

 当のシューゴもそこまで本気で怒ってはおらず、時折笑みを浮かべながらカズトの頭を軽く叩いたり、報酬の配分を減らすと冗談を言ってコトネを慌てさせたりしている。

 そんな光景に同じ馬車に乗っている女性使用人達は暖かい眼差しを送り、幼い頃は本が友人で人間の友人ができるだろうかと心配していたのがこの二ヶ月で払拭されたことに安堵していた。


(トウカ奥様にも伝えなきゃね)

(ええ)


 言葉を交わさずとも目で会話をした彼女達は、引き続き温かい目でシューゴ達の様子を見守ることにした。

 そうした帝都への帰り道は特にトラブルが起きることも無く無事に到着し、一行は久し振りの帝都へと帰って来た。

 一行はそのままカタギリ子爵家の屋敷へと向かい、そこでシューイチからショウマの代わりに依頼達成のサインを貰って解散……の予定だったのだが。


「シューゴッ! タイガッ! 無事で良かった!」


 屋敷に着くやいなやトウカが飛び出してきて二人を両腕に抱きしめる。


「ちょっ、母さんやめろよ! 見られてるから!」

「母上! 極まってます! 首極まってます!」


 仲間の目の前で抱きしめられたシューゴは恥ずかしがって抵抗し、首にトウカの腕が極まったタイガは腕を叩きながら解くよう求める。

 だが息子達を心配して領地にまで行こうとしていたトウカは今日まで我慢に我慢をしていたせいか、全く聞かずに泣きながら二人の無事に安心して抱きしめ続ける。

 ただ恥ずかしいだけのシューゴはともかく、首が極まって徐々に呼吸が苦しくなってきたタイガは抵抗も弱まっていく。


「母さん! タイガが、タイガがヤバいから!」

「本当に、本当に心配したんだからね! 大丈夫だって聞いても、この目で見るまでは安心できなくてね!」

「大丈夫じゃない! 現在進行形で大丈夫じゃないから、放せっての!」

「いやあぁぁっ! どうしてお母さんにそんなこと言うの、どれだけ心配していたか分からないの!」


 聞いているようで聞いていなくて噛み合わない会話がこのまま続けばタイガが危険ということで、周囲も協力してどうにかタイガを救出。

 直後に自分のせいでタイガが危なかったことに悲しんだトウカが謝りながら再度抱きつき、また同じ事を繰り返すというのを数回繰り返してようやく事態は治まった。


「あうぅ……。ごめんねタイガ」

「もういいって。心配してくれていたのは分かったから」


 屋敷内へ招かれたシューゴ達を前にトウカはタイガへ謝り続け、その様子にシューイチを始めとした家族は苦笑いをしたり呆れたりとそれぞれの反応を見せる。


「ところで兄さん、大丈夫なのか? ちょっと痩せたみたいだけど」

「まあね。色々あったし、父さんの留守を任されて慣れない仕事もいくつかやることになったから」


 例え犯罪者であろうとも、今回の事件で実の母と弟を失ったシューイチは精神的に少し参っているのが見て取れる。

 痩せたのもそうだが、顔色があまり冴えておらず目元に隈も見える。


「任されているとはいえ兄さんが倒れたら大変なんだから、無理はしないようにね」

「ありがとうシューゴ。そうだ、依頼完了のサインをしよう」

「ん、よろしく」


 「収納空間」から取り出した依頼書に代理としてショウマがサインする。


「あっ、兄さん。委任状を受け取った人がいる必要があるから、冒険者ギルドに同行してくれるか?」

「構わないよ。シューゴとタイガが帰ってくるから、予定は空けておいたからね」


 爽やかそうな口調と表情はしているものの、顔色と隈を見ていると不安しか感じられない。

 さっさと行ってさっさと帰って休ませてあげよう。

 言葉は交わさずとも目でそれを通じ合わせたシューゴ達は早くギルドへ行こうとしたが、そこへ水を差したのはシューイチの妻のユウカだった。


「だったら慌ててギルドへ行く必要は無いわね。お茶でもしながら、ゆっくりお話ししましょう」

(義姉さん! こんな時にそういうのいいから!)


 ちょっとは空気を読んで欲しくて心の中で叫ぶが、ユウカはのほほんとしながら使用人へお茶とお茶菓子の準備を頼んでいる。

 口に出して止めることもできたのにしなかったのは、天然が服を着ているようなユウカにはどう言おうと通じないと理解しているから。

 言ったところで何度も明後日の方向へ飛ぶ理論を展開して引っ掻き回した挙句、結局はこちらが折れて諦めざるを得ないという展開が目に見えている。


「……そうだね。兄さん、ゆっくり行こう」

「分かった。そうしようか」


 空気を読んですぐにでも行くつもりだったシューイチも同じ展開が目に見えていたため、上げかけていた腰を下ろして同意した。



 ****



 間もなく日が落ちそうな時刻。

 冒険者ギルドから重い足取りでシューゴ達とシューイチが出てきた。


「なんだかんだで結局日暮れ間近になってしまった……」

「悪かったね、ユウカが引っ張るに引っ張って」


 結局あのお茶会は夕方近くまで続いてしまった。

 一つの話題が終わりそうになるとユウカが新たな話題を提供し、女性陣がそれに乗っかって延々と喋りだす。

 男性陣はその勢いに勝てずに流され途中からうんざしりしながらもお茶会の終了を切り出せず、気づけばこんな時間になってしまった。

 時間を理由にどうにか終了させると、シューイチの護衛も連れて冒険者ギルドへ直行。委任状を見せた上での手続きを踏んで依頼完了を受領してもらい、長い護衛依頼の終了となった。


「ところでシューゴ、今夜はどうするんだい? どこか泊まる当てはあるのかい?」

「こっちでいつも使っていた宿へ行く予定」


 依頼を終えた後だからか、依頼主と依頼を受けた冒険者ではなく兄弟として対応するシューゴの意見に仲間達は同意するように頷く。


「じゃあここで別れよう。シューゴ、くれぐれも体に気をつけてね」

「兄さんこそ。来年には父親なんだし、気をつけて」

「ああ、分かっているさ」


 がっしりと握手を交わした後、それぞれ屋敷と宿へと分かれて向かう。

 ところが冒険者になってからずっと世話になり、護衛の仕事で帝都を離れて以来となるその宿は全焼状態で営業していなかった。


「ナニコレ」


 思わずカタコトになったコトネの反応が全員の心の内を表現している。

 たった二ヶ月いない間に何があったのかと周囲に聞き込むと、酔った冒険者同士が喧嘩をした際にあろうことか魔法を使用してこうなったと教えてもらった。

 幸い死者は出ておらず喧嘩した冒険者も逮捕されたものの、宿が全焼してしまい営業不能になったという情報も。


「大将は無事だけど宿の再建はいつになるか不明だって」

「無事だったのは良かったですね。ですが、これからどうします?」


 泊まる予定だった宿が泊まれない以上、別の宿を探すしかない。

 だが他の宿についてあまり知らないシューゴ達は、代わりに利用する宿の当てが無い。

 一度冒険者ギルドへ戻って職員から聞いてみるかという雰囲気の中、小さく手を挙げたアカネが提案する。


「あの、うちの宿でよければ……行く?」

「……いいのか?」


 冒険者になりたての頃、一人立ちするために実家の宿を利用しないと主張していたアカネからの提案に思わずシューゴは聞き返す。


「だって他に良い宿知らないし、それに今から探しても部屋が空いているかどうか分からないでしょ?」


 既に日は落ちて辺りは暗くなってきていて、これから宿を探しても部屋が空いている可能性は低い。

 空いているとしたらあまり評判の良くない宿の可能性が高く、できればそんな宿には泊まりたくないというのが普通だろう。


「別にアカネが気にしないならいいんじゃね?」

「その辺はどうなの?」

「こういう状況だから仕方ないよ。さっ、行こう」


 案内をするアカネを先頭に早足で彼女の実家の宿へと向かい、一件の年季の入った宿へ到着する。


「ここがうちだよ。ちょっと待っていてね。部屋が空いているか聞いてくるから」

「俺も行こう。部屋の交渉とかあるかもしれないし」


 リーダーとしてシューゴもアカネに続いて中へ入ると宿泊客達が賑やかに飲み食いし、二人の女性と一人の少年の給仕がその対応に当たっていた。

 そのうちの女性の一人はアカネと同じ褐色肌をしており、見た目の年頃から母親だと推察できる。


「部屋空いてそうか?」


 客の数が多くおり、部屋が空いてないんじゃないかと不安になったシューゴが尋ねる。


「大丈夫だよ。お客さんだけじゃなくて、ご近所の人達が飲みに来ているから」


 宿泊客だけでなく食堂を利用しに来ただけの人もいると伝えたアカネは、すぐ傍を通りかかった少年給仕へ声を掛ける。


「マコト、ちょっといい?」

「はい? って姉ちゃん!? どしたの急に。しかも……」


 急な姉の登場にマコトと呼ばれた彼女の弟はアカネへ向けていた視線をシューゴへ向ける。

 姉弟の割に肌の色が違うのは父親の血が出たのかと思っていたシューゴは、視線を向けられると軽く会釈した。

 するとマコトはハッとして回れ右をすると、厨房へ注文をしている母親らしき女性の下へ駆け出しながら叫ぶ。


「父ちゃーん! 母ちゃーん! 姉ちゃんが彼氏連れて帰って来たー!」

「ちょっ、違ううぅっ!」


 素早い動きで客席を避けながら両親の下へ向かうマコトへ否定しながらアカネが手を伸ばすが、時すでに遅し。

 目を輝かせた褐色肌の女性給仕とお玉を手に厨房から飛び出してきたちょっと腹の出た男性が駆け寄って来て、女性は両手でシューゴの右手を掴み、男性は腕を組んでの仁王立ちでシューゴをジロジロと観察する。


「まあまあまあ、まさかアカネが彼氏を連れて来る日が来るなんて。これは私の一族の伝統料理でおもてなしをしないとね!」

「ふむ……。いい面構えだ、認めよう」


 やたらテンションの高い母親と威厳がありそうな父親からの反応にシューゴは困り、どうすればいいのかと戸惑ってしまう。

 さらには酔ったお客が口笛を鳴らすなどして囃し立て、飲みに来ていたご近所の年配の方々はあのアカネちゃんにも遂にと若干涙ぐんでいる。


「お父さんもお母さんもやめてよ。違うの、ただの冒険者仲間なの、彼……氏、とかじゃないの」

「あらあら、恥ずかしがっちゃってもう。ごめんね、うちの子は恥ずかしがりだからこんなこと言ってるけど、気にしないでね」

「お願い聞いて!」


 この後、外にいる仲間達も呼んで三十分に及ぶ説明をしてどうにか誤解は解けた。

 その際にトシキの性別が間違われた上にアカネの弟のマコトが「一目惚れしました!」とトシキの手を握って告白した際は、当のトシキ以外のメンバーは大爆笑した。

 ちなみに本当の性別を明かすと泣きながら崩れ落ち、お客からも大爆笑をもらうこととなった。 


「早とちりして悪かったな」


 そう言って食事を振る舞ってくれるアカネの父親だが、表情はイマイチ冴えない。


「事情は分かった。しかし部屋は一つしか空いてない。その部屋も三人が限度だ」


 さすがにそんな部屋に六人が泊まるのは無理だろうと思っていると、もう一人の給仕の女性が通りかかって告げる。

 彼女は厨房を手伝っているアカネの兄の妻、要するにアカネの義姉に当たる女性だ。


「女の子はアカネちゃんの部屋に泊まればいいんじゃない?」

『あっ』


 その発想が無かった一同は揃って声を上げ、シノブとコトネも承諾したため女性陣はアカネの部屋に泊まることになった。


「私の部屋、まだ残してたんだ」

「そりゃそうよ。あなたは私達の娘じゃない」

「いつ冒険者を辞めて帰ってきてもいいよう、残してはあるんだ。少しばかり物は置かせてもらっているがな」


 少し物置化はしているものの、帰って来れる場所が残してあると聞いたアカネの表情が明るくなる。

 仲間達も良い両親だと思いつつ食事をしていると、ただいまという言葉と共に背丈の低いショートカットの少女がやってきた。


「あっ、ホノカ。おかえり」

「ただい……ってお姉ちゃん!? なんでウチにいるの!」


 ホノカと呼ばれた少女はアカネの妹のようで、動きやすそうな服装で二本の剣を腰に差している。


「仕事で帝都を離れている間に、使っていた宿が焼けちゃっていてね。他に行く当てが無いから来たの」

「宿が焼けた? ああ、あそこか。災難だったね」

「まあね。ところでホノカは何していたの?」

「ふふん、実はね。私もお姉ちゃんと同じく冒険者を目指して修業しているの」


 どうやら彼女もアカネと同じ冒険者志望らしく、薄い胸を張って自慢気にその事を明かす。

 給仕の仕事をしている彼女達の母親は、なんでうちの娘はこう冒険者になりたがるのかしらねと首を傾げながら酒をお客へ届ける。


「そうなの? でもどうして?」

「だってどうせこの宿継げないし、だからって花嫁修業とかガラじゃないし。それに一攫千金とか名誉狙いなら、やっぱり冒険者かなって」


 なんとも欲望に忠実と言うべきか本能的と言うべきか迷う返答に、ちょっと冒険者を甘く見ているんじゃないかとシューゴ達は思った。


「それで今、一緒に冒険者を目指す友達と修業しているの!」

「ふうん。じゃあホノカも来年冒険者学校に行くのね」


 そこで冒険者の現実を学んで少しは夢から覚めた方がいい。

 夢ばかり見ていた考えの甘い連中はそこで冒険者の現実を思い知り、地に足を着けられるように教育される。

 冒険者学校でそういった光景を見ていたシューゴ達は、彼女もその一人になるんだろうと考えていた。次の彼女の発言を聞くまでは。


「え~。そんなところ行かないよ。別に行かなくても、冒険者にはなれるんだからさ」


 何言ってんのと言わんばかりにホノカが言うと、シューゴ達の頭に少し嫌な予感が過る。

 確かに冒険者学校へ行かなくとも冒険者にはなれるのだが、ひょっとして彼女はその後の事を知らないのではないのかと。

 まさかと思っていると、上機嫌に笑うホノカが得意気に告げた。


「サクッと冒険者になってガンガンランク上げて、お姉ちゃんを追い抜いて一気に有名人になってお金もたくさん稼いでみせるんだから!」


 悪い予感が確信に変わった瞬間だった。

 現実を甘く見ている妹へ、アカネは姉として現実を一つ教えてあげることにした。


「ねえホノカ。あなたは知らないみたいだから、教えてあげるね」

「何を?」

「冒険者学校を卒業せずに冒険者になった人にはギルド所属の教官がお目付け役として最低三年は同行して、その人から必要な知識とか技術の指導を受けなきゃいけないの」

「えぇっ!? 何それ!」


 やっぱり知らなかったのかとシューゴ達は少し呆れた。

 冒険者についてちょっと調べれば分かる事なのに、それすらしていないのかと。


「しかもその間は、どんなに実力があっても最低のGランクから上に行けないの。つまり少なくとも三年はGランクのままなの」

「なんでえぇぇぇぇっ!?」


 命がけで基本的に自由で自己責任な冒険者だからこそ、事前にしっかりと教育して生還率と依頼達成率を上げるために作られた制度。

 自己責任だからと何もかも冒険者任せにしていた過去の生還率と依頼達成率の低さを反省し、対策として考案されてから修正を加えつつ確立されたこの制度によって生還率と依頼達成率は向上している。

 さらにホノカのような甘い考えの新人を人間的に教育して冒険者も社会人の一員なのだと自覚させるという要素もあるため、当人がどれだけ拒否してもギルド側によって強制的に付けられてしまう。それだけの権利がギルド側にはあり、制度の実績を国が認めたからこそ与えられた権利だ。


「うえぇぇ……。勉強嫌い……」


 ぐでぇとテーブルにもたれるホノカの様子と発言に、結局の根底はそこなのかと全員が苦笑いを浮かべた。

 人生とは一生勉強のようなものである。特に若い彼らにとっては。

 その一端を思い知らされたホノカはぶつぶつ文句を言い続け、姉とその仲間達の食事風景を眺める。

 途中、何かを閃いたように目を見開きながら。


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