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四文字で魔法を創造して  作者: 斗樹 稼多利
27/45

激突


 午前中に行われた個々での手合せを終え、午後に行われる集団戦での手合せに備えてそれぞれが昼食を摂る。

 若手の軍人も冒険者も野営をしていることを想定し、予め用意してきた食料を調理したりそのまま食べたりする。

 シューゴ達もパーティーで集まって調理をしているが、干し飯を戻しているシューゴは不機嫌だった。


「あっさり逃げやがって」


 旦那自慢と娘自慢をするセンリに捕まった際、巻き込まれたくなくて逃げた三人へブツブツと文句を言っている。


「だから、さっきから謝ってるじゃない」

「いやしかし、あんなに長々と聞かされたのですから、いつまでも文句を言いたくなるのも分かります」

「ご、ごめんね」


 いい加減に機嫌を直してもらいたいコトネは「収納空間」に入れてあった小型の調理台を拭き、同意するシノブと謝るアカネは焚き火を使っての調理を続ける。

 作っているのは戻した干し飯と野菜スープに、「ほぞんばしょ」へ入れておいた肉の余りを焼いたものというシンプルなメニュー。

 周囲で調理をしているいくつかのパーティーも似たような感じで、さほど手の込んだものは作っていない。

 如何に食事が大事とはいえ、野営をしているという前提なので警戒が必要になるからだ。

 事実、調理中や食事中にも関わらず、教官や隊長や上位冒険者が隙を見て石を投げてきたり魔法を放ったり、複数人で襲撃してきたりしている。


「うわあぁっ!?」

「あっ! せっかく作った飯がぁっ!?」

「そんなことより襲撃に対応しなさいよ!」


 たった今、パーティーの一つが油断していたため襲撃によって食事が潰された。食料の生産者の皆さんには悪いが、世は無常である。


「……コトネ」

「分かってる」


 直後に三方向からシューゴ達への投石が迫るが、一つはコトネが素早く抜いた細剣で叩き落とし、もう一つはシューゴが蹴りで弾き返し、最後の一つは「浮遊動盾」を出現させて防ぐ。

 さらに死角から接近してくる複数の相手を別の「浮遊動盾」で侵攻を妨害、足を止めたところへコトネが「うずまきのや」で迎撃すると即座に引き上げていった。


「これで一先ずは大丈夫だろう」

「そうね」


 二人が干し飯を戻すだけ、調理台を拭くだけという簡単な仕事をしていたのは、こうした襲撃へ即座に対応できるようにするため。

 決して貴族家出身で調理経験が無いことから、冒険者学校時代に見た目にも味にも数多の暗黒物質を通り越した邪悪物物質を作り出し、調理の授業に阿鼻叫喚と地獄絵図をもたらしたからではない。

 今では簡単な物は作れるようになり、監視されながらだが調理を任されている時もたまにあるのだから。

 なお、トシキを含めた他の貴族家出身者や調理未経験者は、不味いことは不味いが辛うじて食べられなくはないものを作っていたことを本人達の名誉のために伝えておく。


「そっちは問題無いか?」


 迎撃に参加しなかったシノブとアカネの方を振り向くと、二人は迎撃に参加せずとも武器を構えて周囲を警戒していた。


「問題ありません。食事も無事です」


 即座に対応するシューゴとコトネに対し、シノブとアカネは食事を守っていた。

 別のパーティーが食事を潰されていたように、この時間は単に襲撃へ対応して身を守るだけでなく、用意した食料を護衛対象や運んでいる最中の荷物と仮定して守る必要がある。

 失敗したら昼食は抜き。それか夕食を犠牲にして、残った食材を午後に備えて食べてしまうか。

 この時、後者を選んだパーティーが更なる襲撃でまたも食事を失い、水だけで空腹を誤魔化そうとする姿があるのも、この合同研鑽会では恒例の光景となっている。


「他所の様子に気を取られた一瞬の隙を突いてくるとか、容赦ないわね」

「これが普通なんだろ。その証拠にほら」


 襲撃が終わったと見せかけての弓矢の攻撃を、まだ消していなかった「浮遊動盾」を操作して防ぐ。

 弓矢を放ったと思われる上位冒険者は一つ頷くと、その場から移動を開始して別のパーティーを狙いだした。


「これはやみくもに大丈夫だとか平気とか言えないな」


 ついさっき、自分で大丈夫だろうと呟いたシューゴは少し反省しながら「浮遊動盾」を消した。


「とか言った矢先、また何か来そうな雰囲気だから油断できないわね」


 それぞれの役割に戻っても周囲への警戒は怠らない。

 特にシューゴは一瞬視界に入った、例の治安維持部隊隊長の男を特に警戒していたが特に動きは無い。

 人目が多い状況から自重しているのかと思いつつも、念のために警戒を強めておくことにした。


「シューゴ君、そっちはもう戻ったんじゃない?」

「おお、そうだな。すぐに盛りつける」


 アカネからの指摘で戻した干し飯を皿に盛りつけ、同じ皿にアカネが肉を乗せて生野菜を添える。

 それにシノブが作った野菜スープが付いて食事が完成した。


「じゃあ、俺が見張ってるから食ってていいぞ」

「そう? ありがとね」

「忝い」

「食べ終わったから、変わるからね」


 一人だけ食事に加わらず見張りにつくシューゴ。

 確実な安全が確保されない限り、野営での食事の際は最低でも一人は見張りに回るのが基本と冒険者学校時代に教わったからだ。

 そうして見張りの役目を買って出ると、周囲を見渡して他の参加者の様子を観察する。

 襲撃を受けてあたふたと対応するパーティー、辺りを見渡しつつ一人で黙々と食事を摂る個人参加者、軍人らしく食事の準備もキビキビと動く一団。

 それらを見ながら午後の集団戦でどこが手ごわそうなのかを見分けつつ、集団内での力関係も把握していく。


(個人参加者は……六人か)


 パーティーではなく個人で参加した冒険者は午後の集団戦ではどこかのパーティーへ加えられ、合同パーティーという形式がとられる。

 冒険者だからこそありえるその展開に、個人での参加者も注意深く観察する。勿論、時折起きる襲撃にもしっかりと対応をしながら。

 その様子を見ているセンリはニヤニヤと笑っていた。


「いいねえ、警戒するだけでなく敵の観察もしているとは。食事ってのは案外、集団内での力関係や性格が出るもんだからバカにできないからね」


 実際、力関係で弱い立場にある人物が雑用をやらされていたり、逆に強い人物が当たり散らすように仲間へ命令したりしている。


「戦闘中だけじゃない。それ以外への思考の方も、ちゃんと鍛えられている。誰に鍛えられたか知らないが、本当に良い師匠だったようだね。はあ、ああいう部下が欲しいもんだ」


 溜め息を漏らしつつ、命令にはしっかり従うが自分で考えるのは苦手な部下が多い現状を少しだけ嘆くセンリだった。


(まあ、自主的に考えてはほしいけど……)


 次に視線を向けたのは部下の一人、治安維持部隊隊長を務めている男。

 彼は現在別のパーティーへ襲撃をかけ終え、移動をしながらシューゴの方を睨みつけている。


(ああいうバカな考え方をする奴は別だけどね)


 既にセンリは彼が怪しい行動を取っているのは把握していた。

 国の調査機関からも数日前に極秘の書面でだが、彼を調査しているので注意してもらいたいという通達が届いている。

 先日の騒ぎも娘への贈り物探しの最中に部下を率いている姿を見かけ、嫌な予感がして追跡すると騒ぎに遭遇。黙って見過ごせずに偶然を装って接触した。

 その件については調査員からの注意や警告も来ていないため問題無しと判断されたのだろうと思い、現在も男への注意をし続けている。

 ちなみにセンリはこの件を他の誰にも伝えておらず、調査機関からの書面も受け取って読んだ後にすぐ焼却処分した。

 既に国が動いているのなら、余程のことがない限りは自分が余計な事をすべきではないと部下の誰にも伝えず、彼女一人での観察と国の調査機関任せに留めている。


(なにをやらかそうとしているかは知らないけど、あの少年も少なからず関わっているのかね)


 前回の事と現状からそう推察したセンリは、この場でのバカな真似だけは阻止しようと決めて事の成り行きを見守ることにした。

 その後、昼食の時間が終わると午後の予定へ移る。

 パーティー毎に集まり、くじ引きで組み合わせを決定すると担当と共に割り当てられた場所へ移動し、開始前にパーティーでの打ち合わせをする。


「前衛はシノブ、中衛は俺とコトネだけどコトネがやや前衛寄りで俺はやや後衛寄り、アカネは後衛な」


 防御の要となるカズトと様々な補助魔法を持つトシキがいない現状、自在に動く防御系の魔法の「浮遊動盾」を使うシューゴが後衛寄りになって前にいる二人をフォローしつつ、近接戦の苦手なアカネの護衛と後方からの魔法攻撃を担当する陣形を基本としている。

 対戦相手の軍人五人組は前衛に二人、中衛に二人、後衛に一人の陣形を取った。


「双方準備はいいか? では、始め!」


 担当の上位冒険者による合図の直後、相手の前衛と中衛の四人が陣形を崩さず突進していく。

 前衛は盾と剣、中衛は槍を構えている。

 後衛を守らなくていいのか、何か策でもあるのかと、念のために「浮遊動盾」を準備して待ち構えていると彼らの叫びが響いた。


「うおぉぉっ! ハーレムパーティー憎むべし!」

「男ばかりの職場にいる俺達の虚しさから生まれた怒り、受けるがいい!」

「出会いの無い我らの恨みは底無しだ!」

「あの男は絶対に痛めつけてやる!」

「ハーレム野郎は死すべし!」


 後衛で弓矢を引きつつ魔法を放とうとしている隊員まで加わっての叫びに、対戦相手のシューゴ達を含め誰もが一瞬沈黙して視線を彼らに集中させた。特にセンリは部下の奇行に頭を抱えている。


「……濡れ衣だ」


 そう呟いたシューゴは「浮遊動盾」を迫る四人の前にやって侵攻を妨害、そこで正気に戻ったシノブとコトネが迎撃、アカネも援護を開始。

 勢いを削がれた前衛に「からだをつよく」を使ったシノブが突っ込み、それを一緒に前へ出たコトネと後衛から弓矢を放ってアカネがフォローする。

 それを妨害しようとする中衛と後衛はシューゴが「浮遊動盾」で進行と攻撃を妨害。さらに「標的誘導」で照準を定めた「螺旋廻弾」によって攻撃も加え、前衛とその後ろの分断に成功。担当の上位冒険者も感心し、ほうと声を漏らす。


「おのれぇ! どけ、どくのだ少女達よ! 「にくたいきょうか」!」

「我等はそこの男を袋叩きにしなければ、気が済まんのだ! 「ちからづよく」!」


 どうにかシューゴの下へ辿り着こうと身体強化系の魔法を使って突破しようとする相手の前衛に対し、シノブ達はそうはさせまいと冷静に対処する。


「そうはいきません! 「ほのおのつるぎ」!」


 一旦距離を取って放たれた剣の形状をした炎に、思わず隊員達の足が止まる。


「だいちのとげ!」


 続けてコトネが地面から棘が飛び出す魔法を使って追撃。

 本来なら尖っている先端を丸めてはいるが、地面から飛び出た一撃で前衛の二人の体が吹っ飛ぶ。

 分断されている中衛と後衛が援護しようとしても「浮遊動盾」で行く手を塞がれ、シューゴの「火炎放射」とアカネの「いっせいにいる」という魔力による矢を数十本まとめて射る魔法で妨害されてしまう。


「成敗!」

「はっ!」


 この隙に空中に浮いた前衛二人をシノブとコトネが撃破。

 前衛を失った残りの四人はどうにか態勢を立て直そうとするが上手くいかず、連携して倒されてしまいシューゴ達が勝利した。

 評価としては上手く相手を分断した点を褒められたシューゴ達に対し、相手側はセンリから呼び出されて大説教を受けることになった。


「国防軍って、あんまり出会い無いんですか?」

「さあな。でも冒険者に比べると圧倒的に女性がいないって聞くぜ」


 説教をされている対戦相手を見ながら、顔見知りだった担当の上位冒険者と会話をしている間、その後ろで女性陣も会話をしている。


「狙ってこういう顔ぶれになった訳ではないのですが、やっぱりそう見えるのでしょうか?」

「というか、シューゴがそういうのに走る姿が浮かばないわ。暇な時は大抵鍛えているか本を読んでいるかだから、恋愛とか興味無いんじゃない?」

「……それはそれで、ちょっと寂しいかな」


 悩むシノブと呆れるコトネの後で、ポツリと零したアカネの呟きを耳にしたコトネはニヤリと笑い、耳にしていないシノブは何故コトネが笑うのか分からず首を傾げた。

 呟きはシューゴにも聞こえておらず、上位冒険者の男と喋り続けている。

 狙って異性ばかりのパーティーを揃えたんじゃないかと弄られるシューゴは、誤解である事と他に男のメンバーが二人いて別行動をしている旨を伝えるが、余計な男達を自然に外したのかと思われてお前も男なんだなと生暖かい目を向けられた。


「誤解だ……」


 結局疑いが晴れることは無く、その後の別パーティーとの手合せでも男達から刺すような視線を浴びることとなった。


「決して! 狙ってこういうメンバーになっている訳じゃないからな!」


 午後の予定の終了後、せめてパーティーメンバーからは誤解されないよう、強い口調でハーレム狙い疑惑を否定する。

 勿論、その事は彼女達も理解しており概ね受け入れられたのだが……。


「それはそれとして、シューゴは恋愛に関してどう考えているのか聞きたいわね」

「なんでだっ!?」


 どうしてそうなるのか理解できないシューゴの叫びにシノブは面白がってカラカラ笑い、少なからず興味があるアカネは答えてくれないかと心の中で願う。

 だがシューゴがこの件について何も語ることは無く、答える義務は無いの一点張りで通して夜の野営に備えるからと駐屯地の外に薪拾いへ向かった。

 誤魔化されたことにコトネ達は不満を覚えつつ野営の準備を始めた一方、ずっとシューゴを観察して隙を窺っていたあの男はニヤリと笑う。


(やっと一人になったな)


 この場では多くの同僚や上位冒険者がいるため下手な手出しが出来ず、威力を誤ったのを装って攻撃しては自身の将来に響く。

 如何に次期領主となる予定のツグトに従っているとはいえ、現状では一介の国防軍の一員に過ぎず領主もまだレイトが務めている。そんな状況下で下手を打てば領主の座にツグトが就く前に国防軍内のみならず、国によって裁かれてしまう。

 ただでさえ前回の件でツグトからの信用も信頼も落としている彼からすればそれは絶対に避けるべき事態で、どうにか自身の仕業とバレないようにシューゴを襲撃してツグトの信用と信頼を回復する必要があった。主に自身の出世と栄誉のために。


「では我々も一休みしますか。夜間の襲撃役と仮眠の順番は事前に決めた通りで」


 教官の一人がそう告げると各自で分かれて休息を取りに向かう。

 夕食中と夜の野営準備中は昼の時のような襲撃をかける予定は無く、彼らもここまでの疲れを少しでも癒すために休息を取って夜間の襲撃役に備える。

 その休息の時間を利用して男は駐屯地の外へ出ると、自身が創った探知系魔法の「たいしょうさがし」を発動。探す対象の顔と名前さえ分かっていれば、その位置を知ることができる。

 彼はこの魔法でカタギリタウンに潜伏する指名手配犯や行方不明者、さらに平隊員だった頃は迷子の捜索にまで使って結果を出しているため、手持ちの魔法の中では最も使い慣れている魔法だった。

 特定の相手を探すだけの魔法とあって索敵範囲も広く、すぐにシューゴの位置を把握すると今度は「のうりょくきょうか」という魔法で身体能力を強化。急いでその場へと向かう。


(いた)


 繁みの中に潜んで発見したシューゴは、薪として使えそうな枝を拾って「収納空間」の中へ入れていた。

 背後を取っている男に気づいている素振りは見せず、周囲を散策している様子に男は悪い笑みを浮かべて気付かれないよう距離を詰めていく。

 周囲に人影がないのは確認済み。目撃者さえいなければ、魔法を受けて死亡していても犯人の断定には至らない。おそらくは質の悪い冒険者か盗賊か何かに襲われたということで処理される。

 上手くいかないことが重なりいつの間にかシューゴを殺害対象として見ている男は、この場でシューゴを殺める事を前提に考えをまとめていく。

 軍内部に所属しているからこそ、そういう流れで処理される事を知っている男は可能な限り接近すると駐屯地にいる人々に気づかれないよう派手でなく、それでいて殺傷力の高い魔法を選択して発動させようとしたところでシューゴが振り向いて男の方を向き、同時に強く睨みつけた。


「なっ!?」


 気づかれたかという動揺と睨まれた際に感じた迫力から、思わず驚きの声を漏らしてしまった男は慌てて口を塞ぐ。

 だが、その声はしっかりシューゴの耳に届いていた。


(疾風刃来!)


 男が潜んでいる繁みへ向けて「疾風刃来」を放つと男は舌打ちをして防御用の魔法を使う。


「こうてつのかべ!」


 出現した黒々とした巨大な壁に「疾風刃来」が命中したが、亀裂や傷跡をつけただけで破壊はできなかった。

 存在がバレてしまった男は舌打ちをし、壁を消滅させて姿を現す。


「何かと思ったら、アンタか」


 いつの間にか短剣を抜いていたシューゴの発言から、狙われていたのは気づいたが相手の識別はできていなかったのかと男は察する。


「相手も分からず攻撃するとは、随分と野蛮だな」

「そう言うのなら、殺気を消すぐらいはしないと。敵意を持っている相手だと分かれば、攻撃するには充分な理由だ」


 鼻で笑いながら告げた内容に男は苛立ちを覚えた。

 攻撃の際に殺気を消すのは容易ではない。

 その上、如何に隊長の地位に就いていても治安維持部隊に所属している彼がそのような技術を身につけているはずがなかった。


「……生意気な出来損ないが」

「その出来損ないに察知される程度の隠密行動力で、よく言うもんだ」


 冒険者と国防軍隊員で、どちらの方が殺気に敏感かというと前者の方が圧倒的に敏感。

 そうでなくては魔物の領域へ狩りに行くのが、逆に狩られてしまうことになる。

 シューゴもその辺りのことをコタロウとの修業と冒険者学校で指導され、向けられた殺気を察知する訓練を受けていた。


「で? そっちは何の用だ? 俺と同じで薪拾いって感じじゃなさそうだけど」


 短剣を手にいつでも動けるようにしたまま尋ねると、男は溜め息を吐きながら額に手を当てた。

 ここで自分がが抵抗するか駐屯地まで逃げ出せば、どっちにしても面倒な事になる。それでいて駐屯地に気づかれないよう戦うのは難しい。大人しく引いてもらえないかとシューゴ思っていたが、対峙する男は選択した。


「……死ね。「はがねのはさみ」!」


 八文字もある自分が四文字程度の出来損ないを相手に、誰にも気づかれず殺す事をできないはずがないという根拠の無い自信の下、戦うという選択を。

 その男の発動した魔法により、地中からシューゴを左右から挟むように巨大な鋼のトラバサミの牙が飛び出した。


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