将武その14「アテンション☆リンリン!」
このお話は、今からリンリンのためのステージ!
将武パンツ入り乱れる番長物語?
ノンノンッ、喧嘩はダーメッ♪
みんなが、リンリンの歌でハッピーになってほしいの♪
だってきょうは、素敵な日なの。
お姫様じゃ物足りない。
今日のリンリンは、女神さま!
だからね……
直球将武だ メス豚共!!!!
『それじゃあみんなーっ!元気の出る歌、いっちゃうよーっ♪アテンショーン…』
「「「「リンリーーンッ!!!!」」」」
校舎内では、教室すべてに配置されたテレビに仁双楠のアイドル、結城 鈴々が映し出されていた。甲斐女華と、越後聖歌の襲来によって怯えていた一般生徒達は、実に驚いているだろう。
校舎内から湧き上がる黄色い歓声に東乱楠高校は包まれる。
千代子の前に防壁のように並んで、龍虎の前に立ち塞がるのは鈴々☆親衛隊。
サイリウムを両手に持った彼らは、豚と言うに相応しい体型の者ばかりだ。
豚達は全員、色とりどりのチェック柄のシャツを…パツパツなデニムパンツの中にインして、目の痛くなる蛍光色のバンダナをハチマキのように巻いており、デフォルメされた鈴々の顔がプリントされた法被を着ている。
今では絶滅危惧種とも言われるような格好の親衛隊たちは、曲の開始と共に…たわわに蓄えた脂肪を振り乱しながらサイリウムを振るって踊り狂いはじめた。
「タケお兄ちゃん、リンリン頑張るから、お兄ちゃんもハッピーな時間を過ごしてねっ♪」
アテンション☆プリーズ!
寄ってらっしゃい見てらっしゃい♪
ときめき 乙女のハッピータイム!!
豚の掛け声と共に、鈴々は歌う。
彼らの目に映る、龍虎の姿を嘲笑いながら。
彼女の将武…結城 秀康の力で親衛隊たちのサイリウムは輝きを増し、校舎は明るく照らされる。
彼らは校舎に向けてサイリウムを魔法の杖のように振るうと、巨大なプロジェクションマッピングのように、結城 鈴々が映し出された。
ときめく乙女のハッピーライブ
イッツ・ショータイム!!
鳴いて、酔いしれ!!
ハッピーな反撃タイムだ豚野郎共!!!
「「「「ぶひいいいいいい!!!」」」」
アテンション☆プリーズ♪
プリーズ・ミー りんりんっ☆
ルンルン まわる リンリン かわる
恋する乙女の 魔法のことば
アテンション☆リンリン♪
歌が始まり、親衛隊たちにも変化が及ぶ。
鈍重な、贅肉に覆われた豚たちは一斉に龍虎へと襲いかかってきた…!!
「野郎…!!アタシの歌でかき消してやる!!」
立歌がギターを弾いて自分の歌でかき消そうとするが、稲妻の如く襲いかかってきた親衛隊の一人が器用に立歌のギターに張られた弦を抑え込むように二つのサイリウムで阻み、彼女の音は無効化されてしまう。
「なにっ…!?」
「ライブ中の妨害行為はッ!!」
「厳禁ッ☆リンリーーンッ!!!」
ギターのボディを上に構えていた立歌は、襲ってきた親衛隊の駿足に驚く。
バネのように跳躍して、その巨体ではありえないアクロバティックな動きでギターのボディに攻撃を仕掛けてきたのだから。
攻撃を阻止され、続けて他の親衛隊が立歌に体当たりをし、立歌は吹っ飛ばされてしまった。
「立歌っ!!許しませんわ……全員わたくしが沈め………っ!?」
「暴力団はお断りィ!!」
「くっ……!!」
鶴姫は怒りを顕にしながら将武で自分を強化し、親衛隊を攻撃しようとするが、数が多すぎる。加えて、サイリウムによる連撃が彼女を苦しめ、攻撃の隙を与えさせない。それどころか、後方から髪を引っ張られ、バランスを崩したところでサイリウムによる刺突を背に受け、前方からドロップキックを喰らい、彼女もまた吹っ飛ばされてしまう。
「つ、強い……!」
『あの速度…力…これほど強力な伏兵を隠しておったとは…!!』
アテンション!
恋しよ 危険なリンリン☆
刺激的にリンリン☆
るんるんるん☆止まないメロディ♪
飛んでけ くるんとまわり
おそらを飛んじゃうのは
リンリンリン☆君だけだから♪
結城 鈴々は、"豚たちの視界越しに映る"龍虎の苦しむ姿を見て、その星のきらめきのような笑顔をさらに輝かせる。
彼女の能力は、歌によって将気を放出し、ファンに肉体強化を付与するものだ。
自分を輝かせ、引き立てるものが多ければ多いほどに、彼女の能力は強力なものとなる。将気で校舎に自分の姿を映し出すなど、この程度ならば造作もないこと。
そして、今現在戦っている豚たちは…全員が鈴々と視界を共有しているのである。彼女の目には、校舎の中から湧き上がる歓声を浴びている大きな自分が映っていた。
ああ〜、今日も最ッ高にきまってるわぁ!
歌っている自分の姿を見て悦に浸る鈴々。倒せる。邪魔な龍虎を、ここで倒せる!!
そうだ、そうだ…!!もっと苦しませろ!!
「……なんだろう…様子がおかしい!」
『勝負は決まったはず…!彼奴ら止まらぬぞ!?』
鈴々☆親衛隊の彼らは、倒れた立歌と鶴姫に追い打ちをかけるように攻撃を仕掛ける。蹴飛ばし、殴って、髪を掴んで顔をサイリウムで殴りつける。鶴姫の艶やかな唇に一筋、紅のような赤が伝った。
「もうやめろ、鈴々っ!!やりすぎだ!!」
『何言ってるの、タケお兄ちゃん。この二人は一人で頑張ってるお兄ちゃんを二人がかりでやっつけようとしたんだよ?大丈夫っ☆リンリンがファンのみんなと一緒にあいつらをやっつけてあげるから!みんなーっ!あと一息だよ〜!!』
「離せッ!!離せッてんだ豚共ッ!!汚ぇ手でこの特攻服に触るんじゃあねぇ!!」
立歌の叫びが親衛隊の群れの中から響く。見れば、彼女たちは着ていた服に手をかけられ、親衛隊の証である法被を着せられようとしていた。抵抗をするが押さえつけられ、声を上げることしか出来ない。
豚の嘲笑が千代子の耳にも入る。
「おっ、お、お前たちもボクらと同じ親衛隊になるんだっ!!と、年増は好みじゃねぇけどっ、こういうの興奮するなァ!ブヒッ!」
「着物美人もいいけど…これがリンリンだったらなァ〜ッ!もっといいんだけどなぁ!」
着物をはだけさせられ、サラシを巻いた鶴姫の柔肌と…長い特攻服の裾を踏みつけられながら殴られる立歌が目に映る。
「……家康さん。」
『うむ。』
鶴姫に法被を着せようと迫る親衛隊の一人の首に、黒い布が巻き付いた。キュッと贅肉の溜まった喉元に絡みついたのは、学ランの袖。
千代子が、学ランを脱いで絡ませたのだ。
「なっ…!?」
「袂獲愚流ッ!!」
将気を纏わせた学ランを絡ませ、腕力のみで捉えた豚を振り回し、周囲の親衛隊を追い払うようにグルンと千代子は回転する。続いて遠心力で振り回していた豚は駒回しのように回転しながら立歌に群がる豚達のもとへと解き放たれて、ボウリングのように彼らは吹き飛ばされた。
千代子は抱き込むように、鶴姫に学ランを羽織らせる。その青い瞳は、真っ直ぐと鶴姫を映していた。
「葵…竹康…どうして…」
「……すまない。事情を詳しく知らずに傷付けちまうなんて…休んでいてくれ。あとは、オレが片付ける。」
「カッコ付けるんじゃねぇよ…テメーの方がフラフラじゃねぇか…えぇ?」
悪態をつく立歌に千代子は深く頭を下げ、鶴姫の着物をグイッと直し…立ち上がる親衛隊に向き直った。
「オレは…ヒーローを目指す男だ。大切なモノを守るヒーローが、何が正しいのかを間違っちゃいけねぇ。」
『……どういうつもり?タケお兄ちゃん。リンリンのこと守ってくれるって言ったよね?』
鈴々は、機嫌の悪そうな声で話しかける。
千代子はキッと鈴々を睨みつけ、こう返した。
「もうやめろ、鈴々…充分だろう。」
『この二人はタケお兄ちゃんを苦しめたんだよ?リンリンのことも怖がらせて…邪魔をするなら、タケお兄ちゃんも、怪我しちゃうよ……それに、一度盛り上がったライブは止められないんだから!』
二番、いくよーっ!!と鈴々は高らかに声を上げた。
「タケッ!!」
「…!カッちゃ……忠勝っ!」
同時に忠勝も到着する。千代子の元へ駆けつけた彼は、息を切らしながら言葉を連ねた。
「はァッ…はぁ……た、タケ…今回の首謀者はリンリンだ…お前たち三人を戦わせて、あとから三人とも倒しちまおうっていう、リンリンの計画だったんだ!」
「なんだって…!?」
驚く千代子の言葉をかき消すように、アテンション☆リンリンの二番が始まろうとしていた。
『みんなぁ〜っ!ぼーっとしてないで、リンリンのお歌をきいて?わんぱく、いじわる、おこりんぼうも…この歌をきいてハッピーになろっ☆』
千代子も、鶴姫たちも体力の限界だ。
忠勝は袖をまくって、立ち上がってきた親衛隊を見据える。この人数…忠勝では勝てる見込みは無い。だが……
"大事なのは、逃げないことよ。"
榊原の言葉が深く胸に刻まれているのだ。
将武がなくても……やれるだけやるしかない。
どうした、こっちを見ろよ豚ども。
忠勝は呆然と校舎側を見るファンたちを不思議がりつつ、挑発をするが…なんだ?何を見ている?
『アテンショーーン…リンリ……ん?どうしたの、みんな?』
鈴々と、視聴覚室が映し出されている校舎に…全員が釘付けだ。鈴々の可愛さにではない。
彼女の後ろで…ヒョコヒョコと前後に動く紫色の棒を不思議そうに、見つめている。それは次第に長くなって、棒の持ち主が腰を前後に振りながら謎のダンスを踊っていた。
『ワンツーッ♪ワンツーッ♪アッテンションリンリンッ♪リンリン♪恋するオトメは〜っ♪魔法の呪文を知ってるのぉ♪それはねそれはね♪鼓ッ帝ッ架!!あっそぉれそーいそいそい!ワンツーワンツー!!』
なんだあれ
…………
ナニやってんだあいつ!?
白い学ランを纏って紫色の鼓帝架を純白の下窓
から伸ばし、ガニ股になって両足を開閉する榊原…鈴々は後ろを向くと慌てた様子で榊原を見る。正確には、鼓帝架を見ている。
アウトだろ、アウトだろこれ!!
「と、東乱楠は……魔物の巣窟なんですの……!?」
鶴姫の慄く言葉を置き去りに、榊原は踊り続けている。
しかも彼は、徐々に鈴々よりも前に行き始めた。やめろ、校舎に、教室のテレビに!全教室に鼓帝架が映ってる!!
なんてことだ、女子校舎の中から悲鳴が響いてきた!!
『ちょ、ちょっとちょっと!なにやってるの!?』
『ナニッて、バックダンサーよ。盛り上がったらバックは必須でしょ?』
『バックって…ま、前に来てるじゃ…』
『うるさいわねぇ、アタシがバックって言ったらバックなのよ!』
榊原の気迫とダンスにタジタジの鈴々を見て、親衛隊たちは焦りを見せる。
「たっ、大変だ…リンリンの助太刀に行くぞみんなぁ!!」
「「「応ッ!!!」」」
行かせるものかよ――!!
駆け出した豚を阻んだのは、桜花を連れた疾風だった。声は、桜吹雪の中から響く。
舞い散る桜。季節外れの、春の風が薫る。
東風に混ざりて
桜の騎馬は、戦に息吹く!!
「うわっ!?な、なんだっ!?た、立っていられない…!!」
「リンリンが見えないっ…桜とリンリン……絵になるのにっ!!」
「言ってる場合か!!」
助太刀に行こうと校舎の中へと入ろうとする豚を阻むのは、四台のバイク。花鳥風月の御旗を掲げ、現れたのは長篠レディースだ。
「げっ!?暴走族の仲間だ!!」
「鎮まれッ!!この方を…誰だと思っている!」
皐月の一声で、親衛隊たちはビクリと萎縮して、静まり返る。
「甲斐女華同盟〜!」
「長篠レディース筆頭ぉ!!」
続けて麗花と、飛鳥が高らかに旗を振るった。
我らを染めながら散る"花"と舞い
我らを見下ろす"鳥"を追い抜き
我らを攫う"風"を連れて
我らを照らす"月"を切り裂く!!
「この馬場 春風が、テメェらを一歩たりとも此処を通しはしねぇ!!通りたきゃ、私たち花鳥風月の桜吹雪を越えなッ、豚野郎ッ!!!」
長篠レディースッ!!
威風堂々と、此処に推参!!!
春風は一箇所に纏めて校舎内に押し寄せようとした親衛隊の周辺を、将武パンツから将気を放出しながら走り回る。
彼女の将武パンツ…馬場 信春から発する将気は桜色。幻影の桜を舞い散らしながら、親衛隊を中心に旋風を起こした。
脱出不可能の桜の嵐は視界と、彼らの自由を奪い去る。
そして飛鳥たちが親衛隊をバイクで取り囲み、春風は立歌のもとへと駆けつけた。
「お前ら…!ったく、どこで情報聞き付けやがったんだ。」
「強がってる場合ですか…それよりも、こんな…ひどい怪我…!」
「バカ言ってんじゃねぇ。こんなの、ブタに唾吐かれた程度だッつの。」
春風は立歌のもとへ駆け寄り、砂埃を被ったギターを拾い上げて袖で砂を拭い、差し出す。
ああ、埃を被っていても、誇りは穢れていない。立歌は安堵のため息をついて、ギターを受け取った。
「お館、今回の騒動は鈴々の仕業だ。葵 竹康たちは騙されちまってただけだよ…!」
「じゃあ、轢ッ殺しはどうなるんだ……アタシたち甲斐女華は轢ッ殺しにやられて、そいつがたしかに『勝負をつけたきゃ葵 竹康と待ってる。東乱楠へ来い。』って言ったんだぜ。」
立歌は、納得の行かない様子で眉間に皺を寄せ、春風に尋ねる。何かの間違いだ、と春風は頑なに否定した。
「何かの間違いだよ…あいつがそんなことするはずがない!あいつと勝負したからわかる。私が保証するよ、お館…!」
「……」
『ちょっとぉ!おねがいだから踊らないで!それしまってってばぁ!!』
『あっそぉれそれ〜!!リンリンリリン☆リンリンリリ〜ン♪』
再びグラウンドにいる千代子たちは巨大な校舎というモニターに映る榊原と鈴々に視線を移す。未だに榊原は鼓帝架を丸出しにして、どこから持ってきたのか分からないが、タンバリンを叩きながら踊っている。鈴々は既に半泣きだ。
『も、もうカメラ止めて!なにやってんの〜!』
鈴々が慌てふためく中、モニターに映ったのは鈴々のマネージャー。スケッチブックに、なにやら大きくマジックで書いてある…これは…
『し、新コーナー始まります?な、なんだ…びっくりした…!!』
『はいはい、榊原先輩!その辺にしておいて。驚かせてごめんね、結城さん。せっかくライブに来てくれたし、僕達もお礼がしたくてさ。』
続いて現れたのは虎徹だ。先程鈴々の目の前に現れた時は怪我をしていたはずなのに。困惑する鈴々を置き去りにして、虎徹は続けた。
『というわけで…東乱楠高校のみんな。サプライズライブは楽しんでくれたかな?お昼の後の東乱楠Radio、今日はみんなに内緒で仁双楠の人気アイドル、結城 鈴々さんに来てもらったんだ。』
『今をときめくアイドルのデビュー曲、アテンション☆リンリン!アタシも楽しくなってついつい踊っちゃったわぁ。でも、お歌はここで少し休憩♡リンリンちゃんには、アタシたちが企画した新コーナーをお送りするわよ!イイコちゃん、説明おねが〜い!』
いそいそと鼓帝架をしまう榊原は、虎徹に対してニコニコと笑いながらタンバリンを叩く。
虎徹も負けじと、爽やかな笑顔だ。甘いマスクに覆われた、イイコちゃんスマイルである。
『井伊 虎徹だ、その呼び方やめろっつってるだろ☆それじゃみんな、始めるよ…今日のトークはぁ〜〜っ…ブーメランッ!!』
次回も尋常に……将武!!




