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お薬いかがですか?  作者: ほる
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078. 眠気




 唐突に何かに気付いたのか、ラルムが「あれ?」と疑問の声を上げる。何事だと皆がラルムに視線を向けると、ラルムは辺りを見渡し、それから唖然とした表情で口を開いた。


「――ガルクスいなくね?」

「っ! ほんとだ!!」

「フレスカさんもいない……?」


 救出騒動の最中、皆がガルクスどころでは無くなっていた。ぶつぶつと何かを呟いて気持ち悪くなっていたし、自分で動こうともしていなかったから、逃げれる訳がないと油断していたのだ。そして何故か、フレスカまで居ない。


 トートが頭に過った事を、ぽつりと呟く。


「――落とし穴と鏡の魔道具作ってたけど、まさか」


 トートの言葉にバルドも顔を強張らせた。初めてエドナがフレスカを連れて来た時、フレスカが何故かやたらとマリールに手を出そうとしていたのを思い出す。そして趣味が刺客等と、巫山戯た事を云う、妙な女だと思ったのも事実だ。

 けれど、フレスカは落とし穴と鏡の解除をしてくれた。モルガを見捨てようとした騎士に憤ってもいた。

 信じたい気持ちと疑ってしまう気持ちが、バルドの中で鬩ぎ合う。エレンまでもが信じられないと口元を手で覆った。


「まさか、そんな、フレスカさんが……?」

「――フレスカさんは、違うと思います」


 皆がフレスカを怪しみ始めた中、マリールだけが否定の言葉を口にする。マリールは口を一文字に結び、きつく目に力を入れて、フレスカを疑うバルド達を見ていた。


「……マリール」

「だって薬のお礼に、私は標的にしないって言ってくれました!」


 あの時までは、もしかしたらフレスカにはマリールに関する依頼があったのかもしれない。けれど、薬を飲んでから変わったのだ。それに、どこか光がない暗い瞳も、魔道具の話をしている時はとても活き活きと輝いていた。ガウェインが良い騎士だと判った時、フレスカは嬉しそうだった。


「私も、あのお姉ちゃん好き……」


 ルルナもフレスカを信じていた。孤児だから取り合ってもらえないのかと絶望した時に、背中を支えてくれたのだ。ルルナの代わりに、騎士達と話もしてくれた。

 幼い少女二人は、フレスカを信じている。トートは迂闊な言葉を口にしてしまったと、気不味げに頭を掻いた。


「うーん。エドナばあさんが合流してくれたら、判断材料も増えるんだろうけど……」

「そう言えば遅いわね。まだ探索に時間が掛かってるのかしら?」


 トートの言葉に、アエラウェも困ったと頬に手を当てる。何せ、アエラウェがフレスカと顔を合わせたのは今日で二度目だ。エドナが信用しているらしいが、そのエドナも今この場に居ない。


「俺等がこんなとこに居るの、わかんないんじゃね?」

「だなー。入って来たのとは違う地下だし」

「俺等で見てこようか?」

「そうねぇ……」


 ホビット達がそう名乗りを上げれば、アエラウェは部屋を見回した。救助した被害者は意識が戻った者も幾人かはいるが、殆どがまだ気を失ったままだ。被害者達を一早く安全な場所へ移動させた方が良いだろう。

 それに後始末を指示されたらしきカロルクの冒険者質の他にも、まだ館の中に隠れている者がいるかもしれない。


 二手に別れるべきか、大人しくエドナが来るのを待つべきか。悩むアエラウェに向かい、ルルナがめいっぱい手を上げた。


「私も行く!」

「ルルナ……」

「私の耳、役に立つよ! それに、モルガお姉ちゃん早く見つけたい!!」

「でもルルナ、貴女、もうとっくに寝てる時間だし、さっきまでおなかも空いてるって」

「だ、大丈夫! マリーちゃんのお薬飲んだら、元気出たし! おなかは、がまんする……」


 言われた途端、忘れていた空腹を思い出してしまう。くぅと小さくなる腹を擦って、ルルナの耳はへにょりと垂れた。けれど、どんなに空腹を感じてもモルガを助けたい。空腹が何なのだ。もっとずっとお腹が減ってた時があったじゃないか。

 ルルナは絶対に行くのだという意志の強い眼で再び顔を上げ、アエラウェを見つめた。


「私も行きます!」

「マリーちゃん……、貴女」

「大丈夫です! 前世では仕事で二徹三徹当たり前でしたし、一日の纏まった睡眠時間二時間~四時間がデフォでしたから!」

「「「「「「「え……」」」」」」」

「捕虜として捕まって、拷問でもされてたのか……?」


 敵兵から情報を聞き出す為に、眠ることを許さない拷問方法がある。イクスの言葉に、バルド達は顔を青くしてマリールを見た。前世では三十七歳と知っていても、どうしても今の幼い姿で想像してしまう。


 大丈夫と伝えるつもりが逆に心配させてしまったと、マリールは眉尻を下げた。


「んーと、勿論睡眠時間少ないとミスも増えますから、時間見つけてちょい寝するんです。二十分くらい寝れば少し回復できますから。忙しい時は眠る暇も無いから、落ち着いたら纏めて寝ればなんとかなるんですよ。一日の睡眠時間じゃなくて、一週間の睡眠時間と考えれば!」


 事も無げに言うマリールに、トートが悲壮な顔で呟いた。


「俺……まじで異世界行きたくないわ……。寝る時間削って働かされるって事だろ……?」

「俺も……」

「どんどん憧れの異世界像が壊れてくな……」


 未知の技術や美味しいものだらけで便利な世界というイメージだったのに、マリールの話を聞く度に、この世界がマシに感じる。


 バルド達はマリールの前の世界にどん引いた。

 









お読みくださりありがとうございます。


弱音吐いたら優しい評価とブクマと励ましのお言葉まで頂いてしまいました…

がんばれます……あ゛りがどぼございま゛すっ(泣

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