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# 第十三話 ## 「告白は、たぶんもう終わっていた」

# 第十三話


## 「告白は、たぶんもう終わっていた」


年が明ける少し前。


街はクリスマス色に染まり始めていた。


イルミネーション。


浮かれた人たち。


笑うカップル。


その中を、

雨宮悠人と白石雫は並んで歩いていた。


---


「こういうの、苦手だったんですけど」


白石が言う。


「何がです?」


「クリスマスとか」


「分かります」


即答。


---


昔なら、

この季節はしんどかった。


周りが“幸せ”に見える季節。


自分だけ取り残されてる気がする季節。


でも今は違う。


横に誰かがいるだけで、

景色は変わって見えた。


---


白石がイルミネーションを見ながら言う。


「なんか、

ちゃんとした恋愛してますね」


悠人は笑う。


「ちゃんとしてますかね」


「してますよ」


少し間。


白石は続ける。


「婚活してた頃より、

ずっと」


---


その言葉が少しだけ刺さる。


婚活。


焦り。


比較。


数字。


条件。


---


今は違う。


年収も、職業も、

もう会話に出てこない。


代わりにあるのは、


「今日寒いですね」とか

「この店行きます?」とか

「アニメ見ました?」とか


そんなくだらない会話。


---


それが、

一番落ち着く。


---


ベンチに座る。


白石がホットココアを飲む。


悠人はコーヒー。


沈黙。


でも気まずくない沈黙。


---


白石がぽつりと言う。


「ねぇ、悠人さん」


「はい」


「私たちさ」


「はい」


少し間。


白石は少し笑う。


「もう付き合ってますよね」


悠人は少し吹き出す。


「今さら確認します?」


「なんか、はっきりしたくて」


---


悠人は空を見上げる。


夜空。


寒い。


でも悪くない。


---


「じゃあ」


悠人は言う。


「付き合ってますね」


白石は少しだけ間を置いて、


「はい」


と答えた。


---


それだけ。


告白らしい告白じゃない。


ロマンチックでもない。


でも。


それで十分だった。


---


白石が笑う。


「なんか普通ですね」


「普通が一番難しいらしいですよ」


「誰が言ってたんですかそれ」


「忘れました」


---


二人は立ち上がる。


歩き出す。


---


途中で白石が言う。


「悠人さん」


「はい」


「私ね、前はずっと思ってたんです」


「何をです?」


「ちゃんとした人と付き合わなきゃって」


悠人は黙って聞く。


---


白石は続ける。


「でも今は」


少しだけ笑う。


「ちゃんとしてなくてもいいんだなって思ってます」


---


悠人は少し笑う。


「俺、だいぶちゃんとしてない側ですけど」


「知ってます」


即答。


---


そして白石は小さく言う。


「でも、それでいいです」


---


夜風。


イルミネーションの光。


人の声。


---


でも二人の間だけ、

少し静かだった。


---


白石が最後に言う。


「ねぇ、悠人さん」


「はい」


「これからも言っていいですか」


「何をです?」


白石は少し笑う。


「また会いましたね」


悠人も笑う。


「それ、もう日常すぎますね」


---


二人は並んで歩く。


特別じゃない言葉で繋がったまま。


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