一ノ瀬研究室
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[研究室訪問記録]
場所:□□大学民俗資料研究室
一ノ瀬准教授は在室。目の下に濃い隈。
机上に、録音機、古い名簿のコピー、神社関係と思われる資料の束。
准教授は「長いこと不眠症で」と笑った。
「だから、コーヒーは出さないよ」とのこと。
その後、自身のかかりつけ医について喋る。
それによると、同医師は三日前から所在不明。
診察室には、破かれた紙片がばらまかれていたとのこと。
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[会話録音抜粋]
録音開始。雑音。紙をめくる音。
一ノ瀬:天大贄社の氏子会議録。写しだ。原本ではない。
記録者:天大贄社。
一ノ瀬:天至周辺の民間宗教として扱っていいものかな。
記録者:これが、古い地名や、お守りに関係すると。
一ノ瀬:言い切れない。ただ、守札という語が出てくる。祠にも関わるね。
記録者:渡した人間も記録されている。
一ノ瀬:そうだ。それが記録されている。理由は分からない。
紙面を机上に置く音。
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[氏子会議録写し]
議題 立入りについて
案内と左右をくれぐれも気を付けること。
議題 沼のかこいについて
例年通り、つなぎめを溢れさせぬように補修すること。
議題 拾得物取扱い
重ねて、祠周辺にてみだりに守札を拾得しないこと。
議題 配布者名簿について
守札を配布した者の名簿は、月に一度は回覧すること。
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[会話録音抜粋 2]
一ノ瀬:会議録に記録されていないことがほとんどだ、と見るべきだろう。
記録者:沼、守札。どう見るべきでしょう。
一ノ瀬:「つなぎめ」を、どう考えるべきか、という問題だな。
記録者:それを補修しているのか...。祠については。
一ノ瀬:祠は何らかのタブーのように思えるが、はっきりとはしない。
記録者:宗教的な...。
一ノ瀬:そこが言いきれない。これを聞いてほしい。
録音機のスイッチを押す音。
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[祝詞録音]
はじまりたずねれば まことのことのは
これによりて てんしのて▓▓きで みそぎはらえども
はらわれぬ やおよろずのかみたちの まがごとつみけがれ
かわともなれと あまのぬまより のりとごとのれ
さかしまに もどれもどるなら て▓▓きのも▓ども
ささげもち たてまつらんと あまのぬまより のりとごとのれ
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[会話録音抜粋 3]
記録者:祝詞としてはおかしいですね。神道でもないのかな。
一ノ瀬:陰陽道とも違う。仏教とも違う。神道の影響は大きいようだが。
記録者:穢れを祓うっていう感じでもない。
一ノ瀬:そういえば、別に鎮詞というものもあって、亡き音の鵺鳥とか粘脂の闇黒とか、特徴的な文言がある。
記録者:呪術的なものも感じますね。
一ノ瀬:鵺鳥なんて、あの金属音みたいな鳴き声だろ。闇黒は真っ暗なことで、なんていうか、生活感があるんだな。
記録者:祝詞と鎮詞。確かに、内容が具体的というか即物的というか。
一ノ瀬:そうだね、いわゆる「宗教」とひとくくりにはできないなあ、と思う。
記録者:て▓▓きのも▓ども、ともありますね。
紙がこすれる音。雑音。
一ノ瀬:こういう風に、カタカナで書いてみると...。
紙を破く音。
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二十XX年七月二日




