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記録(天至)  作者: sakasans
記録するもの
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35/40

一ノ瀬研究室

---

[研究室訪問記録]

場所:□□大学民俗資料研究室


一ノ瀬准教授は在室。目の下に濃い隈。

机上に、録音機、古い名簿のコピー、神社関係と思われる資料の束。


准教授は「長いこと不眠症で」と笑った。

「だから、コーヒーは出さないよ」とのこと。


その後、自身のかかりつけ医について喋る。

それによると、同医師は三日前から所在不明。

診察室には、破かれた紙片がばらまかれていたとのこと。

---

[会話録音抜粋]

録音開始。雑音。紙をめくる音。


一ノ瀬:天大贄社の氏子会議録。写しだ。原本ではない。

記録者:天大贄社。

一ノ瀬:天至周辺の民間宗教として扱っていいものかな。

記録者:これが、古い地名や、お守りに関係すると。

一ノ瀬:言い切れない。ただ、守札という語が出てくる。祠にも関わるね。

記録者:渡した人間も記録されている。

一ノ瀬:そうだ。それが記録されている。理由は分からない。


紙面を机上に置く音。

---

[氏子会議録写し]

議題 立入りについて

案内と左右をくれぐれも気を付けること。


議題 沼のかこいについて

例年通り、つなぎめを溢れさせぬように補修すること。


議題 拾得物取扱い

重ねて、祠周辺にてみだりに守札を拾得しないこと。


議題 配布者名簿について

守札を配布した者の名簿は、月に一度は回覧すること。

---

[会話録音抜粋 2]

一ノ瀬:会議録に記録されていないことがほとんどだ、と見るべきだろう。

記録者:沼、守札。どう見るべきでしょう。

一ノ瀬:「つなぎめ」を、どう考えるべきか、という問題だな。

記録者:それを補修しているのか...。祠については。

一ノ瀬:祠は何らかのタブーのように思えるが、はっきりとはしない。

記録者:宗教的な...。

一ノ瀬:そこが言いきれない。これを聞いてほしい。


録音機のスイッチを押す音。

---

[祝詞録音]

はじまりたずねれば まことのことのは

これによりて てんしのて▓▓きで みそぎはらえども

はらわれぬ やおよろずのかみたちの まがごとつみけがれ

かわともなれと あまのぬまより のりとごとのれ

さかしまに もどれもどるなら て▓▓きのも▓ども 

ささげもち たてまつらんと あまのぬまより のりとごとのれ

---

[会話録音抜粋 3]

記録者:祝詞としてはおかしいですね。神道でもないのかな。

一ノ瀬:陰陽道とも違う。仏教とも違う。神道の影響は大きいようだが。

記録者:穢れを祓うっていう感じでもない。

一ノ瀬:そういえば、別に鎮詞というものもあって、亡き音の鵺鳥とか粘脂の闇黒とか、特徴的な文言がある。

記録者:呪術的なものも感じますね。

一ノ瀬:鵺鳥なんて、あの金属音みたいな鳴き声だろ。闇黒は真っ暗なことで、なんていうか、生活感があるんだな。

記録者:祝詞と鎮詞。確かに、内容が具体的というか即物的というか。

一ノ瀬:そうだね、いわゆる「宗教」とひとくくりにはできないなあ、と思う。

記録者:て▓▓きのも▓ども、ともありますね。


紙がこすれる音。雑音。


一ノ瀬:こういう風に、カタカナで書いてみると...。


紙を破く音。

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二十XX年七月二日


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