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関わりたくないひと  作者: ハシドイ リラ


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8/11

8.

彼女は子爵夫人であるにも関わらず、彼女たちと親しげに話し始めた。


「ナヴェーラ、久しぶりね!前に集まったのってもう1年ほど前じゃない?」


「やだあ、久しぶり!リリアーヌ。…っじゃなくてポンメルン公爵。お久しぶりにお会いできて光栄です。」


礼を尽くす姿に一瞬皆沈黙し…ぷぷっと吹き出した。


「何を今さら!もう!そんなこと言われたら寂しいじゃない!」


「ふふっ。冗談よ、冗談。今度会ったら言ってみよう!って思ってたのよ。」


あまりにも親しげな様子に苛立ちを交えて


「子爵夫人なのに、そんな物言いをしたらこの人たちに何をされるか!気をつけた方が良いわよ!」


そう伝えると。


「あのね、この方たちは爵位で差別したりはしないのよ。もちろん敬意は必要だけど。」


"大丈夫、仲良くして差し上げますから安心してね。"


「なんて、尊大な言い方をされる方はいらっしゃらないの。」


かああ。顔が赤くなる。それって私が男爵夫人を見下してたのがバレてたってこと?


「だ、だってお義母様は爵位の差は弁えないとって!」


「あのミニーモ前子爵夫人が?それは曲解ではないの?正確には」


どこから聞いていたのか、お義母様が現れて続きを告げた。


「正確には"上の爵位の方には敬意を払わなければならない"よ。もっと言えば"爵位が高かろうと低かろうと礼節が必要"とも言ったはずだわ。オーラング侯爵夫人、義娘が度々失礼な振る舞いをしてしまい申し訳ありませんでした。」


「まあ!シートマー先生!何をおっしゃるの!先生のお願いですもの、本当はもっと学ばせて差し上げたかったんですけど…至らずに申し訳ありません。」


ハイバット…オーラング侯爵夫人がお義母様に頭を下げる。


「先生!ご無沙汰しています!ご苦労されているという噂はお聞きしていたんですけども、まさかここまでとは。お力になれず申し訳ありませんでした。」


ポンメルン公爵も同様にお義母様に頭を下げた。


「先生…?」


呟いた私にナヴェーラが向き合い、諭すように話す。



「アランソン伯爵邸での夜会はね、下位貴族にとっては社交界の入り口みたいなものなのよ。でもそこに辿り着くまでにはいくつものテストがあるのよ?」


「テスト?そんなのわたし受けていないわ。」


「貴方の場合はね。お義母様が伯爵夫人に必死で頼み込んでらしたわ。最初のお茶会の時点で弾かれてしまったけどどうにか、って。()ミニーモ子爵夫人がどうしてもと仰るし無碍に断りきれず参加を認めたのよ。」


「だって、貴方のお義母様は礼儀作法の先生をなさっていたのよ。私たちの世代なら師事していた人だって沢山いるの。そんな方のお願いよ?ほとんどの人が協力的だったわ。」


「そもそもあの夜会への参加資格ってね、厳しくはないの。でもね、大事なポイントがいくつかあって」



誰に対しても敬意を払うことと向上心があること



「貴方にはどちらもなかったから。」


「そ、そんなこと!敬意はちゃんと払ってたし向上心だって!」


「貴方の場合、向上心とは言わないのよ。それはね"上昇志向"っていうの。成り上がりたいというさもしさが全面に出ているんだもの。」


お義母様が嫌味な言い方をする。でもこういう嫌味を言い負かすのは簡単だ。


「ひどい!いくらわたしが元平民だからって!そこまで貶めても良いのですか!」


こう言うとほとんどの人が黙り込むの。平民に嫌がらせをするような浅ましい人間と思われるのは困るんですって。ほんとバカみたい。

いつもならこれでわたしの勝ちなのに。今日は何故だか皆冷たい眼差しのままだ。



「……平民を都合の良い言い訳に使わないでちょうだい。」


戸惑っていると、少し怒りを含んだ抗議の声が聞こえてきた。


「はああ?本当のことでしょう?爵位が上だからって寄ってたかって!私が元々平民だったから馬鹿にしているんだわ!」


そう言い返しながら相手を見た。見知った顔だった。あれは。


「アランソン伯爵夫人。」


「ハイバット…ではもうないのよね。オーラング侯爵夫人、ご無沙汰しております。大きな声が聞こえて参りましたので気になってしまいまして。」


「アランソン伯爵夫人、こちらこそご無沙汰しております。お元気でしたか?周りにご迷惑をかけるつもりは無かったのですが、つい声が大きくなってしまったようです。」


「ええ、お話をちらりと聞いただけですけれども、あまり良い事ではないわね。」


みんな気まずそうに黙り込む。今なら押し切れる、そう思って更にか弱く声を絞り出す。


「アランソン伯爵夫人…。わ、わたしは精一杯皆さまに嫌われないようにと努めていたんです。けれど…皆さまの旦那様を頼ってしまった事で疎ましく思わてしまったようです。私が至らないばかりに。」

ぐすん。

「でも、だからと言って平民であった事をここまで悪し様に言わなくてもっ」


涙が出てきた。そうよ、わたしは悪くないの。周りが嫉妬して意地悪して!


「だから言っているでしょう?平民を都合の良い言い訳に使わないでと。」


せっかく出た涙が止まってしまった。この女にも涙が利かないなんて!


「でも!でも!わたしが生粋の貴族だったら!こんな風に下に見られることなんてないはずです!」


それでもこの流れを変えるには"貴族による元平民いじめ"しかない。そう思い泣きながら訴える。


「私も元平民なの。」


「私、皆様から下に見られて侮られているように見えるかしら。」

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