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関わりたくないひと  作者: ハシドイ リラ


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3/11

3.

「大丈夫、仲良くして差し上げますから安心してね。」


耳を疑った。え?わたくしが?たかだか子爵夫人程度の平民上がりの女に情けをかけられた?え?え?

ハイバット男爵夫人、元オーラング侯爵令嬢は唖然としていた。



その夜会は、確かに高位貴族の参加する規模のものではなかった。彼女自身、身分にあぐらをかくつもりはなかったけれど、それでも。低位貴族の夜会に高位貴族が招かれるという事は余程の事情がない限りない。両方を自由に行き来できるとしたら伯爵あたりがせいぜいだろう。

とはいえ、下位貴族にも平民にも優れた人物は当然いる。縁を繋ぎたいと思う上位貴族は多いのだ。

あれこれ夜会に参加しようと画策する高位貴族が多い中、彼女は恵まれていた。


侯爵家のひとり娘であった彼女は夫を迎えて侯爵夫人となる予定である。とはいえ現侯爵の父がまだ健在だから、夫は余裕を持って侯爵家の継承準備を進めている。その間便宜的に従属爵位を継ぐことになり、それがハイバット男爵であった。

ちなみに夫も侯爵子息だったので、これは良い機会を得た!とばかりに男爵位を活用して縁を繋ぎまわっている。似たもの夫婦で、夫婦揃って下位貴族との繋がりを得るために動き回っていたのだ。


だからもちろん、普段接する高位貴族と比べてはいけない事は分かっている。自分がただの男爵夫人でない事を知らなかった、というのも入ってくる情報の量を考えれば仕方のない事だ。


だがそれでも。今まで男爵夫人として過ごしてきて、こんな無礼をされるなんて思ってもみなかった。

今までだって平民から嫁いできた夫人はいた。だがちゃんと弁えていて、それは爵位が上とか下とかそんな事ではなくて。


覚束ないながらも必死でマナーを習得し、言い回しを学び、たまには失敗し。愛する夫に迷惑にならないようにと血の滲むような努力をしていた。

だからこそ周囲の貴族夫人たちも協力する体制ができていた。そう、貴族だからといって揚げ足取りをする者だけではないのだ。


いきなり社交界に馴染まなくてはならず不安に思っていた彼女達は固い決意を持ってはいたが。


"あなたも男爵夫人なのね!こういう所、慣れていないからとっても心強いわ!"


"子爵夫人なんて言われているけど、平民から嫁いできたばかりでまだ慣れなくて。変な事言ったりしたりしたら教えてください!"


どれだけ勇ましく挑んだとしても不安なものは不安。私のことを立派な貴婦人になるための同士として頼りにしてくれたし、私もまた彼女達を頼りにしていた。真の友人とも呼べる人達だった。

…まあ出自を明かした時には皆顎が外れるくらい口を開いて固まっていたけど。


そんな人達に囲まれていた私には彼女はどう接していいかわからない初めて見る生物だった。

下には尊大、上には…あれ?上にも尊大な態度だったわね。まあどっちでもいいわ、深いお付き合いにはならなさそうだから。…夫もお付き合いのメリットはなさそうって言ってたしね。


半年後に出産を控えていた私は彼女に対してなんのリアクションも取らないことに決めた。どうせ()()だけのお付き合いだから。



そうして私は2人目の女の子を産み、久々となるーー恐らく最後となるであろう下位貴族主体のーー夜会に参加したのだった。



※※※※※※



「まあ、2人目も女の子でしたの?それは大変ですわね。男爵家といえども後継は必要でしょうに。あらごめんなさい、私ってば。私は1人目で嫡男を産みましたでしょう?男の子が出来なかったら貴方の立場がどうなるのかと心配になってしまって。」


彼女は相変わらずだった。私の出自は徹底的に隠されている訳ではないから、私が出産で離れていた間に誰かから聞いているものだとばかり思っていた。

()()()()()()()()()()()()()()、これが彼女に対する周囲の評価ということだ。


上から下へ。彼女はその態度を貫いていた。かといって格上への配慮は全く足りていなかったけれど。

ただ、ここまで失礼だと普通なら誰かから嗜める声が出るはずだ。何故出ないのだろう?


曖昧に笑いながら彼女のそばを離れたが不思議そうな顔をしていたのが分かったのだろう、今となっては爵位の差を超えて親友となったナヴェーラ・モンパンシエ子爵夫人がこそっと耳打ちしてくれた。


「彼女を嗜めると、帰ってから旦那さまから怒られちゃうの。もっと広い心を!って。だから誰も何も言えなくなったの。」


正確にはバカバカしくて放置する事にしたってところかしら。


「最近は彼女を中心にグループが出来ててね、ずっとあんな感じなの。低位貴族の中でもあまりお行儀の良くない方たちが群れるとね、彼女みたいな物言いをする人が持て囃されるみたいよ。」


「えっ、あんな人を傷つけるのが目的みたいな言い方を?」


「彼女、一応子爵夫人だからね。文句を言えない層も多いのよ。それに…」


「それに?」


「ああいう、人を見下した言い方って楽しいんですって。相手が悔しそうだったり傷ついたりするのを見ていると自分が強くなった気がするからって。」


「なにそれ。全然楽しそうな感じがしないんだけど。」


「いいのよ、私たちは理解できなくて。そんなくだらない気持ち、理解できない方が幸せだもの。」


「それもそうね。でもあんなのが真ん中でのさばってるようじゃ…」


「そうなのよ。私も居心地悪いから出席率が下がっちゃったわ。」


今日はあなたが来るって聞いてたからウキウキで来ちゃったけどね、そう笑って教えてくれた。

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