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僕と、彼女と、ペンダント  作者: ミシェロ
第七章【家族】

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私は頷き、宣誓用の剣を彼女へ手渡した。檻の方を見据え、光を纏わせる。


「暁閃一奪!」


私は後ろに向けて光の刃を放つ。杖を持った彼女は肌が裂け、砂塵が舞う。

倒れた姿は黒い皮膚へと変わっていった。


「私が妹であるシャルを、姿が見えなければ本物と判断できないとでも? 

 生憎私は真実しか見えないのです」


カリサの芯の冷えた顔をすると、槍を突き出した。


「やれ」


彼女の合図を聞き、生物兵器の部下たちが一斉に地面へと降り立ち駆け出す。

天へ剣を構え光の反芻を集めると、低い咆哮が横から割り込み空気が震え、獣人たちが動きを止める。


「一人で通じると思っているのか。自惚れるな、人間」


シオン様であればよかったのですが、本音は鞘に隠しておきましょう。

今は龍の手も借りたいところでしたから。


「念を入れて警戒していたのが、役に立ったようですわね」

「何年、動物に応戦していると思っている」


彼の赤い瞳が、どこか楽しげに細まると、やり取りを遮るように、背後から呑気な欠伸が聞こえた。

寝起きの割りに整った勢いの声。

流暢な方といえば、お一人しかいません。


「宣誓、もう終わったの?」


シェトランテが観戦をするかのような声で姿を見せました。


「まだ始まっていません。ただ、彼女は終わったと思っているようです」

「そう。じゃあ早く終わらせてもらえる?」

「そんな余裕があるように見えるかっ」


彼が飛び出そうになっていた私の思いを言うと、彼女は肩をすくめて珍しく笑った反応をした。


「獣に囲まれてるわね。囚われたお姫様は私が対処するわ。二人には正面をお願い」

「シャルのこと、お願いいたします」


私はシャルの杖をシェトランテに託し、正面に剣を構えた。

シオン様、心配ありません。私はこんな状況でもあなたが来るまで待っています。

部屋の中で、端末が脈打ち血を噴き上げた。考えるより先に右手が相棒を手に取っていた。

メッセージを確認すると、エイビスからSOSと位置情報の通知が入っている。


「・・・ボルディミアスにまた小言をかけられそうだな」


メッセージを確認すると、端末は血が黄色に変わった。

彼女はこの信号は使うことはないだろう、と言っていた。

カリサの策が上回っていたのは間違いないだろう。服を整えている暇なんてない。

僕は扉を蹴り破り、廊下を突き抜けた。


「何事だ、シオン?」


振り返ると、エルメインが階段の影から現れた。

髪を軽くまとめ、エルジードと同じように白を基調とした服に着替えていた。


「エイビスから緊急信号が入った。」

「・・・姉姫様が? 確かに私の端末にもSOSのメッセージが入っているな。すぐに向かおう」


エルメインはわずかに目を細めると、僕の勢いを見て正面に手壁を見せた。


「時間がありません、外へ出ますよ」

「壁を壊すのは勘弁してくれ。後で――」

「姉姫様のためと言えば、誰もが理解するでしょう」


彼は口を噤むと、僕は壁へ掌を当てた。

低い振動音とともに石がひび割れ、次の瞬間、壁が外へ押し出された。


「行きますよ」

「・・・リセットは後だ。警告はしたからな」


僕らは開いた穴から庭へ飛び降りる。地上に降り立つと、警備兵が駆け寄ってきた。


「お二人とも、何かあったのですか!」

「王宮内に異常はない。だが、今から外に出る。通してくれ」


エルメインが淡々と答え兵がさらに何かを告げかけたとき、地面が揺れた。

空気が爆発を包むように縦へ歪み、影が覆う。

見上げると、巨体の大熊がこちらへ飛びかかっていた。


「エルメイン、下がれ!」


僕は叫び、剣を構えた。熊の拳が真上から飛んできた。

全身に鎖が走るものの剣で受け止められる勢いだ。


「ほう、受けとめたか」


低い声。大熊が腕を引いた。


「俺の名はマドク。お前達を潰すためにココヘ来たあああ!」


背後に、冷たい気配。振り返ると、闇の中から黒い獣が姿を現した。

しなりのある細い体に、夜目のように光る爪。トラとは異なるサイズで彼は僕に目を合わせた。


「こいつはベルシュラウド、俺の相棒だ。俺はこの剣士と戦う。お前は何をすべきか、わかってるよなああ」


マドクが自慢をするような顔で言った。パンサーは低く頭を下げ、すぐに僕を狙う。


「・・・どうやら仲が悪いみたいですね」

「わざわざ作戦をバラすとは、随分余裕があるな」


エルメインが僕の隣に並ぶと、拳から小さな勢いが交錯していた。


「先に仕掛けるぞ」


彼は拳を勢いよく振り上げると、地を蹴り拳から勢いが飛んでいく。

だが、ベルシュラウドは影に沈み、姿を消した。

エルメインはすぐに両手と足を四方に開いた。

振動が彼の力らしい。位置を探っている顔は、わずかに楽しげですらある。


「右後ろ。来るぞ」


彼の声に反応し、僕は剣を背へ振り抜く。金属同士がぶつかる感触。

目の前に、ベルシュラウドの牙。勢いで押し返すと、獣は数歩後退した。


「守るだけとはつまらん!」


マドクが後方から踏み込み、拳を振り下ろす。

僕は腕を返し、剣の左右に水の勢いを集中する。


「蒼波一閃」


相棒は純粋な正面の拳を弾き、心を澄まし食らいつくように彼らの手足の一部を食いちぎった。

彼らは胸を張ると、血の滴りが皮膚から消えていった。


「回復した?」


僕が呟くと、エルメインが即答した。


「そういう性質なのかもしれない」

「試してみたいことがあります。距離だけ取ってくださいね」


僕はベルシュラウドをエルメインに任せ、マドクの前へ出る。

マドクは僕の動きを読むように一歩踏み込み、地を割った。

地面から衝撃波が走り、意思を持ったように僕へ迫っていた。


「っ・・・!」


剣で受けても、圧が強い。マドクは僕の空気を噛む表情をみて、衝撃波を間断なく打ち込む。

このままだと、少し面倒だ。波は円状に広がるだけ。

リズムさえ理解できてしまえば、切り崩せる。

次の波が来た瞬間、剣を横へ振るい、連なる衝撃をまとめて弾く。

空気を吐き出した波を背に距離を詰め相棒に意識できないほどの気配で肩を叩かれたような身の毛がよだつ勢いを込める。


「氷雨連斬!」


塔のように図体が大きいのもあって一撃の傷ではダメージになっているのか見分けがつかない。

膝の同じところを何度も削ると、赤い笑いが見えた。

あと二撃もあればマドクを倒せる。そう思った瞬間、背から強い板のような衝撃が走った。


「す、すまない!」


エルメインが僕の背中に飛ばされてきたようだ。


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