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第12章

「ねえ、ゼンディラさん。ちょっとした腹ごなしに、<天空のブランコ>に乗ってからエア・スケートボード場へ行きませんか?」


 既知宇宙内に存在する変わった宇宙生物に至るまで展示されている『惑星博物館』や、今は亡き地球のあらゆる時代を体験できる『地球タイムスリップ体験館』、宇宙のあらゆる惑星世界や歴史を、五感で疑似体験できるアトラクション・ワールドなどなど……食事中、デート先ならぬ観光先をいくつも提示されたゼンディラであったが、言うまでもなく彼にはアップル少尉が何を話しているのか、まったくもって意味不明であった。


「天空のブランコ、ですか……」


 ゼンディラがその言葉の響きに興味を示したのは、実はある理由があった。スカイラウンジ<エスタリオン>にて、(もしや天上での食事とはこのようなものであろうか……)と、美味しい料理に舌鼓を打ちつつ感じた彼は、そのブランコが天国に通じる何かではないかと連想したのである。また、アスラ=レイソルは彼の神ソステヌのことを、宇宙の神とも天空の神とも呼んでいた、そのためでもあったろう。


 ――だが、その天空のブランコに乗る番が回ってくると、ゼンディラはすぐ後悔した。そのブランコはふたり乗りであり、恋人同士が乗るのにちょうどいい、ロマンティックでアンティークな装飾が施されたものでもあった。だが、そのブランコはなんの取っ掛かりもない雲からぶら下がっているのみならず、レストランの時と同じく、下は空と雲、さらにその遥か下にはエフェメイル市街が遠く広がっているばかり……といった具合なのである。


「何も怖くありませんよ、ゼンディラさん。仕組みとしては、スカイラウンジとまったく一緒ですもの。これは視覚映像であって、どこまでも空と雲が広がっているように見えるのは実はウソで、ちゃんと柵が張り巡らされてもいれば、安全装置も働いてますし、ここに天空のブランコが設置されてから、誰ひとりとして怪我人すら出てないんですから」


「そ、そうですか。でもわたしは、遠慮させていただきたいと思います……」


 ゼンディラは何かの救いでも求めるように、青白い顔でフォスティンバーグ博士のほうに視線を走らせた。だが、博士は微笑みつつ首を振り、「これもあとになれば、きっと君にとっていい思い出になるよ」などと言うのみだった。


 こうしてゼンディラは再び震えつつ、<天空のブランコ>とやらにアップル少尉とともに乗ったのだが、最初は大きくブランコがかしぐたび、目を瞑ってブランコの綱にしがみついていたゼンディラだったが――最終的に、ブランコがもっとも高い位置に上がる頃には……震えおののきつつも、ある種の感動に包まれていた。


(この都市はもしや、アスラ=レイソルが昇天したという天空の国なのではないだろうか。壮麗ないくつもの尖塔、メトシェラでは見たこともないような建造物の数々……なんとすべてが美しくも素晴らしく、完全なまでに整えられていることだろう!)


 そしてこの瞬間、再びゾシマ長老の言った言葉が、ゼンディラの脳裏に甦ってきた。例の、アスラ=レイソルは本星から派遣されてきた、特殊部隊員ではなかったかとの……そして、長老の死後、そのエフェメラの特殊部隊員という存在に、ゼンディラは遭遇した。ヨセフォスからは彼の本星における連絡先についても教えてもらっていたし、ゼンディラは夕陽に輝くビル群を遠く眺めやりながら――そこを(まるで神々の住まう黄金都市のようだ!)とすら感じたわけだが、実は彼はヨセフォスの家族がいる住居へも、ミネルヴァ=ハイザーが住む超高層高級マンションへも立ち寄ることなく、さらには「黄金都市も見慣れればどうということもない」というくらい、長くここへ留まることさえなく……このエフェメラという惑星そのものからさえ遠く離れるということになるのだった。


 アップル少尉が、加速の初期段階で手のひらにカメラを起動し、自分とゼンディラの姿を数枚撮影していたが、(少尉、今は勤務時間だぞ)とは、ハイデン大尉にしても注意する気になれなかったものである。最後、ブランコが最初の位置に戻ってきた時……プシューという音とともに安全装置が外れたものの、ゼンディラは立ち上がることが出来なかった。


 少尉が不思議そうな顔をして、「どうかしましたか、ゼンディラさん?」と聞くと、彼はようやくのことでどうにか立とうとした。だが、一歩あるきだそうとしたところで腰が抜けたようになり、へなへなとその場に蹲ってしまう。次の瞬間、アップルは女性とは思えぬ力強さによってゼンディラの片腕を自分の首に回して立ち上がらせたが、<天空のブランコ>の順番待ちをしていた小さな子供たちは――「あのお兄ちゃん、はずかしい~!」とか、「だらしな~い!」、「うちのパパもへなちょこだけど、あそこまでじゃないもんね!」と言っては大笑いしていたものである。


 こののち、再びエレベーター・カプセルに乗って移動し、四人は地下9階にある<エア・スケートボード競技場>へやって来た。「ゼンディラさんは誰に賭けます?」などと聞かれても、もちろん彼にはなんのことやらさっぱりわからない。そこは地下にある巨大なスタジアムで、ナノ・コンピューターを体内に組み込んでいないゼンディラは、専用のゴーグルを受付ゲートで受け取っていた。最初、ゼンディラが肉眼の目で見た時には――人は三分の一ほど埋まっている程度だったのだが、ゴーグルを着けた途端、十万人収容可能なスタジアムは、ほとんどすべて満席であり、さらには耳を聾するほどの歓呼と興奮の声によって満ち溢れていたのである。


「大抵の賭け事は、自宅にいてナノ・システム経由でって多いものなんですよ。あ、一応軽くルールを説明しますとですね、これから三十数人、エア・スケートボード選手が出てきます。次の種目は男女混合だから、選手は男子・女子双方混ざってますが、お互いエアボードに乗ったまま、あらゆる技を駆使してフェイントを掛けたり邪魔しあったりして、コースを十周する間に最終的に一番最初にゴールした人が勝ち。あ、オッズを確認するには……」


「いえ、アップル少尉。申し訳ありませんが、わたしの出身惑星では、僧侶というのは賭け事を禁じられているのです。ですから……」


「べつにいいじゃないですか。とりあえず誰でもいいから賭けてみましょうよ。そんで、たぶん絶対に近いくらい当たらないとは思うけど、もし仮に当たった場合は、どこかの慈善施設にでも寄付したらいいんですから」


 ハイデン大尉は自身の職務に忠実に行動していたため、ただ三人のことを油断なく見守っているというそれだけであり、エア・スケートボード競技で賭けるのが久しぶりだったフォスティンバーグ博士はといえば、すでにすっかり興奮状態にあったと言える。だが、人々が「そこだ、そこ!押せ、ひねり潰しちまえ!!」だの、「すげえ!流石はヴィッキーだ。見たか、今の華麗な五回転半のひねり技!!」だの口にしていても――やはりゼンディラにはさっぱり意味不明だったものである。


 それでも、偶然自分の賭けていたシャナイア・ローウェンという若い女性選手が、最終周で10位から一気に2位に浮上すると、ゼンディラにしても生まれて初めてギャンブルの面白さが多少なりわかる気がしたものである。彼女はそれまで一位だったテスラ・マコーマックと並んだが、彼女たちふたりが互いを牽制しあっているうちに――今度はエア・ボードのエネルギーを十分保存していた6位のジョーダン・コネリー選手が猛スピードで追い上げ、1位と2位のふたりが壁のように立ちはだかるのも構わず、エネルギーの浪費の激しい回転ブースター技を決めて見せ、最終的にはこの十六歳の少年が1位をもぎ取ったのである。


「あ~あ。わたし、テスラに賭けてたのに、また負けちゃった……」


(アップル少尉め、今競技の間中、任務のことをすっかり忘れていたな)などと、ハイデン大尉は叱ったりはしない。今回の任務において、ゲストを楽しませるホスト役というのが、彼女の主な任務でもあったからである。


「あ、博士はオッズで見た通り、一番人気のヴィッキー選手に賭けてたの?馬鹿ねえ。わたし、この競技に随分大枚はたいてきたけど、一番人気だった選手が優勝したとこなんて、ほとんど見たことないもの」


「惜しかったですね」


 がっくりと肩を落としているアップルのことを見て、ゼンディラはそう優しく慰めた。途端、彼女は突然にして自分の任務を思いだしたとばかり、照れ笑いしている。


「そんなこと言ったら、ゼンディラさんこそ、ですよ!わたし、生まれて初めてお父さんにここへ連れてきてもらった時――いわゆるビギナーズ・ラックっていうの?そんなんで1位と2位の選手、ぴったんこ当てちゃったもんで、以来、特に大きいレースの時には賭けずにいられなくなっちゃったんですよねえ。まあ、賭けるなんて言っても、そう大した金額ではないんですけど」


「それが賢明だな」


 ハイデン大尉にそう言われると、一瞬任務を忘れた自分のことがアップルはあらためて恥かしくなった。外に出るとあたりはすっかり暗くなっており、四人はスカイ・タクシーを拾うと、スタリオン指定のホテル、<スフィンクス>へと向かう。


 ゼンディラは<エア・スケートボード競技場>でも、人々が小さな板に乗り、空中を舞う姿を見てはいた。けれど、それもまた一種の<視覚効果マジック>のようなものでないかと疑っていたわけである。だが、空色のタクシーがエア・ゲートからスカイ・レーンへ入り、空中へ浮くのを経験すると――今度はブランコに乗っていた時以上の驚きに包まれたわけである。


「……もしかしてわたしは、実は今も惑星メトシェラにいて、ただ夢を見ているだけなのではないでしょうか」


 車内はとても広く、お金を支払えばジュースやお菓子や酒類を買い求めることも出来るようになっている上、後部にあるプラネット・テレビをゆっくり見ることも出来た(とはいえ、この惑星の住人たちはそんなものにあまり興味はなく、移動中に見るのはもっぱら端末を呼びだした自分の手のひらである)。ソファはレザー仕様で、彼らが乗ったものは詰めれば五人ずつの人間が向き合って座れるくらいの広さを有してもいた。


 ちなみに運転手はロボットであったが、とりあえず姿が見えないため、ゼンディラは感じのよい運転手の男の声を聞き、勝手に自分なりに礼儀正しい中年男を想像していたものだった。


「そうだね。私も小さな頃から自分を想像力豊かだなどと自惚れてきたが……それでも流石に、自分が辺境惑星から首星エフェメラへ連れてこられたとしたら――その最新の科学技術を見て失神しないでいられるものかどうか、理解するにしても、どのくらいすぐ順応して受容できるか謎だと思うね」


「まあ、どう言ったらいいものか……この空飛ぶ車は、人工衛星によって制御されてるんですよ。だから、ロボットによってコンピューター制御されている車同士の間で事故が起きるということはまずない。人間が自動制御でなしに、自分の操縦技術を頼みにして運転する場合は別としても――このスカイ・ロードは外から見る分には、何やら無秩序にたくさんの車が浮かんでいるようにしか見えないだろうが、ちゃんとお互いの車がぶつからないよう、目に見えないとはいえちゃんと空にも道なるものは存在してるってことなんだ」


 ここまで説明してハイデン大尉は、(そういえば、辺境惑星にはそもそも人工衛星自体ないか、あっても住民たちはそのことを知らないかのどちらかだ)と気づき、少しばかり頭を抱えこむ。


「そうですねえ。大尉、もしかしたら外の風景を可視モードじゃなく、VRモードにしたらいかがでしょうか」


 このアップル少尉の言葉を聞きつけたロボットが、いち早くその言葉に反応する。


『では、まずは惑星セレンティアの、美しい海岸の風景などはいかがでしょう』


 ロボットは返事を待たずにすぐ、左右の窓に星の砂の海岸や、色とりどりの珊瑚などで有名な――本星の人々の間でも保養地として名高いセレンティアの美しい青緑のラグーンを映しだした。この時もゼンディラは、そのあまりの美しさに息をのんだが、他の三人は幼い頃からこのシステムに慣れ切っているためだろう。(それがどうした)というように、顔の表情にほとんど変化がない。


(ああ、なんと美しいのだろう……もしかしたら、井の中の蛙とはこうしたことを言うのかもしれない。もしわたしがメトシェラの戦国時代に生まれた諸王のひとりであり、アスラ神ばりの力を発揮してひとつの巨大な帝国に統一できたとしても――外の宇宙はこんなにも広く大きく、自分の成し遂げたことがただ時代の一夜の夢にしか過ぎぬと思い知ることでしかありえないとは……)


 そしていまやゼンディラは、ミネルヴァ=ハイザーにそう教えられたからというのではなく、裁判惑星コートⅡにてあり余る時間の中、祈りと瞑想に専心する以外の時間は宇宙の学びについて当てていたから――ゾシマ長老から「読むといい」と薦められていた『惑星列伝』をまずは最初に読み(無論全巻ではない)、地球発祥の生命がどのように宇宙へ飛び出していき、現在既知宇宙と呼ばれる場所がどの程度の広さで、そこに一体いくつの銀河系を含むかについても、彼の知能の及ぶ範囲内にて、理解してもいたのである。


 つまり、これほど広大な宇宙を占めるようになったと思われる人類ですら……全宇宙と呼ばれる場所があまりに広すぎるがゆえに、その全体から見ればほんの小さな砂粒にも満たない程度の片隅を占めているに過ぎないのである。しかも、ここまで文明というものが発達していながら、そこに住む人々は必ずしも幸せではなく、ほんの小さな不幸に目を留めては不満を洩らし、「自分はなんてついてない人間なのだろう」と、他者と比べては暗くうじうじ悩んでばかりいるのだった。


 ゼンディラはこのことを書物や、そこから飛び出す3D画像によってよくよく理解した時――思わず大笑いしてしまい、監獄の女王クイーン・メイヴに『大丈夫ですか、管理番号110025961、ゼンディラ』などと、機械から頭の具合を心配されたものである。


(そうか、なるほど……こうした科学の進んだ惑星の人々はこう考えるのだ。この広大な宇宙の砂粒にも満たない場所に暮らす自分たち人間のことなど、神がいたとしても気に留めるはずがない、と。何故なら、もし神がいたとすればこの全宇宙を創造したはずなのであるから、その砂粒程度の世界に住む、さらにそれより小さい1ナノ単位にも満たないだろう人間の脳の中の悩みひとつひとつについてなど――そんなにも偉大な<神>が興味など持つはずがないと、高位惑星や中位惑星と呼ばれる星の人々はそう考えるということなのだろう)


 こうした、極めて先進的な科学的事実を次々と急激に知っていった段階でも、ゼンディラのアスラ神に対する信仰は揺るがなかった。むしろますます強く、より強固なものになっていったとすら言えたに違いない。その理由については彼がミネルヴァに語った通りであるが、彼は『惑星列伝』を順に読んでいっている時ですら、(おお、アスラ神よ!アスラ神よ!!)と一体何度感嘆の叫びを上げそうになったことだろう。アスラ=レイソルが果たして、本星エフェメラから派遣されてきた特殊部隊員で、彼は天空の王国へ天女とともに去ったのではなく――単に生まれ故郷の星へ宇宙船に乗って帰っていったのかどうか、そこまでのことはゼンディラにもわからない。ただ、もし仮にそうであったにせよ、ゼンディラの信仰心に変わりはなかったことだろう。何故なら……宇宙神ソステヌという神の名など、この既知宇宙内の人間のほとんどが聞いたことはないと、今ゼンディラにはよくわかっている。だが、少なくとも間違いなくアスラ=レイソルにはわかっていたのだ。いつか、惑星メトシェラの文明がさらに発展し、惑星の外へ飛び出すくらいになった頃でも――人々の心に神を信じる心が極限の瞬間に至るまで残り続けるよう、彼は配慮したのだろうということが……。


 これでもし、アスラ=レイソルが惑星メトシェラに降り立ったその瞬間から、『我こそは神である。その神にも等しい我を信じよ!』と最初から名乗っていたとすれば――それまでの自分の人生のすべてにも等しい神を、ゼンディラも捨て去る覚悟を決めねばならぬ瞬間が訪れたかもしれない。だが、そうではなく、アスラ=レイソルにはわかっていたのだ。いつか、ゼンディラのように自分の惑星から外へ飛び出したあとからでも、宇宙神ソステヌは確かにおられるのだという信仰を、その人間が持ち続けられるよう彼が配慮したその中にこそ……アスラ神の人間に対する愛のすべてが詰まっているとも言えたのだから。


 このあたりのことについては、アスラ教の聖典すべてを読み、その祭式を深い信仰心を持って長く守り続けた人間にしかわからぬ<奥義>にも近いことであったかもしれない。だが、ミネルヴァが言ったように、惑星の数ほど神々が存在しており、宇宙神ソステヌもまたそのような人間の脳が生みだした偶像のひとつに過ぎないというのではなく……その神の名がなんと呼ばれるものであるかは関係がないのである。実際、アスラ教の大聖典のひとつは、惑星メトシェラが生まれたその瞬間の創世神話からはじまるのだが、最初からそこには、メトシェラ以外にも数え切れないほどの数、この宇宙には星々が存在していること、その無限さは人智を超えたものであること、そうした他の遠くの惑星にも、人の命の宿っている可能性のあることなどが示唆されているのである。


 このアスラ教の、のちに大聖典と呼ばれる歴史書は、アスラ=レイソルその人が、諸国を統一後、世界をある程度平定してのち、各地に伝わる神話・民話などを集めて編纂したものであると言い伝えられている。確かに、アスラ=レイソルは彼自身がそう名乗っている通り神ではない。だが、仮に彼が本星エフェメラから派遣された特殊部隊員であったにせよ……メトシェラの諸王国49国すべてを統一することは、彼にとってどんなメリットがあったというのだろうか?それが本星の情報諜報庁から発布された命令だったから、というのは理屈に合わないとしか、ゼンディラには思えない。また、最初はしぶしぶながらだった任務が、いつしかこの惑星の貧しい人々と暮らすうち、情が移り、真実熱のこもったものとなっていったのだろうか?いずれにせよ、アスラ=レイソルは高位惑星出身者としての範を、下位惑星の中でももっとも貧しい層に属するメトシェラの人々に示したとは言えたのではないだろうか?(もっともアスラ=レイソルは、当時四十九国あった国の中でも、一番小さいザグレン王国の出身であり、父親は鍛冶屋だったと言い伝えられているのだが)。


 アスラ=レイソルという神人の特徴は、何より貧しい人々に対するたぎるまでの熱情と愛情であったと言われている。彼のその自己犠牲心に習い、人は誰しもが己の欲を捨て、隣人愛に生きるようにと聖典には幾度も言及されている。また、アスラ=レイソルほどの偉業を人生の中で成し遂げられるかどうかは別として、とにかく人にはまっとうせねばならぬ使命のようなものが必ずひとつは存在するものだ、とも聖典は説いている。それが子供を生み、養い育てることであれ、先祖代々の職業を継ぎ、その技を次の世代へ継承させることであれなんであれ……そのような使命のまっとうと隣人愛のふたつが、人の生きる意味であると彼は人々に教え諭した。ゆえに、この時ゼンディラは――惑星セレンティアの寄せては返す美しい漣の音をナノ・スピーカーから聴きながら、自分にとっての使命の全うということについて考えていたのである。


(アスラ神もまた、世界を平定するために、多くの血を流す決意を下したのだ。それが宇宙神ソステヌからの、逆らえぬ命であったにせよ……『おまえがこの命令を受けなければ、私は他の者にこの戦乱を終わらせる命を下し、その使命を全うさせるための神がかった力と栄光を与えよう』か。わたしには無論、宇宙神ソステヌから直接そのように偉大な命があったわけではない。だが、アスラ神がこの使命まっとうのために多くの血を地上に流したように……わたしもまた、ダリオスティンさまを殺し、流してはいけない血を地上に流してしまった。この罪は消えるものでも償えるものでもないが、このようにメトシェラの外の宇宙をわたしが知ることで……何か、あるのかもしれない。それも、宇宙神ソステヌの御心の一部をまっとうすることにも繋がる、小さくて大きい何かが……)


 今この瞬間、故郷の惑星より五千光年離れた場所で、空飛ぶタクシーにより移動しながら――彼が車内でした会話というのは、どちらかというとこうした人間の魂の本質に関わるようなことでなく、もっと一般的な世間話ではあった。たとえば、フォスティンバーグ博士が本星を離れている間、首都エフェメイルで起きた大きな事件についてや、彼らのお互いの仕事のこと、ゼンディラの出身惑星の文化のことなど……だが、彼の心はどのような科学的驚異と対峙する時にも、いつでも彼の信じるアスラ神とともにあった。何故なら、アスラ教の教義は人間というものが人間である以上、基本的にどこの惑星でも同じように通用するものだったからである。


 ホテル<スフィンクス>のどこに着地すればいいかと運転ロボットに聞かれ、ハイデン大尉は「背中の駐車場でいい」と答えていた。このホテルはその昔、地球にあったエジプトという国の<ギザの大スフィンクス>に彩色を施したもので、スカイ・レーンから繋がる駐車場は頭の上と背中の二箇所あった。彼女が手のひらに出現させた端末を操作し料金を支払うと、「毎度ありがとうございます」との応答があり、着地後、左右の両開きのドアが開かれる。


「エア・カーというのは、とても素晴らしい乗り物ですね」


 夜の闇の中へ浮かび上がり、やがて消えゆく空色の車を見上げながら、ゼンディラはそう呟いた。いつの間にか外では小雨が降りはじめていたが、こうした時のためにエア・カーがピタリと隣接できる場所が屋上駐車場にはある。ゆえに、四人は一切濡れるでもなくスカイ・タクシーから降りることが出来ていた。


「まあ、その昔の昔は自動車が空を飛ぶなんてありえないっていう時代があったそうですから……さらにその車なんていうものが誕生してない惑星からやって来たとすれば、わたしも感嘆したのかなあ、なんてぼんやり思ったりはするんですけどね」


 アップル少尉がロビーへ繋がっているエレベーターに乗り込みながらそう言うと、「明日あたり、『空飛ぶ絨毯』にでもふたりで乗ればいいじゃないか」と、ハイデン大尉は笑って言った。


「遊園地の絶叫マシンかあ。でも、<天空のブランコ>であのザマ……じゃなくて、腰を抜かしてたら、超時空ジェットコースターマシンやフライングウォーターフォールなんて乗った日には、きっと情報諜報庁へ無事身柄を届ける前に死んでしまいますよ」


 アップル少尉が思わずそう本音を洩らすと、フォスティンバーグ博士のみならず、ハイデン大尉までが笑わずにいられなかった。もっとも、ゼンディラは<超時空ジェットコースターマシン>についても<フライングウォーターフォール>についてもさっぱりわからないため、彼自身は「???」と、疑問符を浮かべるのみではあったのだが……。


 地球に昔あった国、エジプトを思わせるような趣向を凝らしたロビーで、アヌビスやバステトの姿をしたアンドロイドから電子キィナンバーをアプリのほうへダウンロードしてもらい、アップル少尉は手のひらの端末で部屋番号をあらためて確認した。30679号室。


「彼らは一体何者なんですか?」


 刑務所の運動場や共同作業所の異星人でも、ロビーの受付係ほど奇怪な容貌をした者はいなかった――そのように思い、ゼンディラは内心震える思いをしていたのである。


「ええと、彼らはただのフロントマン……まあ、この巨大ホテルの管理人といったところかな。結局アンドロイドだから、容姿なんて人型でも犬型でも猫型でも――どうでもいいっちゃどうでもいいみたいな?」


 ここへやって来るまでの間にも、アップル少尉は「~~は、何故~~なのですか?」といった系の質問をいくつも受けていたため、だんだん返事をするのが面倒になって来つつあったと言える。「何故このクルマなる乗り物は空を飛べるのでしょうか?」、「あの人たちは何故この競技にあんなにも血道を上げているのでしょう?」、「このエレベーターは疲れたとか、こんな仕事もう嫌だと思うことはないんでしょうか?」などなど……少尉があまりうまく答えられなかった場合、横からフォスティンバーグ博士やハイデン大尉が援護射撃してくれたとはいえ、それはまるで「何故空は青いのか」とか「人間は存在するのか」といった、ある意味世界/社会の根源に根ざした問いでもあり――三人は時折、子供の究極の質問に答えられない親のように、言葉に詰まることさえあったものだった。


 もっとも、ゼンディラのほうでは、ただ素直に疑問を口にしているに過ぎないのだが、それでも彼らが誠実に答えようとして窮している姿を見ると、なんとなく「そのようなものなのだ」と納得するよう心がけていたと言える。


 けれどやはりこの時も、スマートエレベーターに乗って30679号室のある階までやって来た時――エジプトの神々や歴代の王などの彫刻が廊下にずらりと並んでいるのを見て、「これらの彫刻にはどのような意味があるのですか?」とは、やはり聞かずにいられなかったのである。


「え~っと……」と、疲れたような、困ったような顔をしているアップル少尉に代わり、フォスティンバーグ博士が答える。


「この神々や王たちの像というのはね、地球に昔あったエジプトという国で信じられていた神だったり、その神々の庇護を受けて繁栄したと言われる王たちの像なんだよ。高位惑星系でも中位惑星系でも、みな今は失われた地球を懐かしがって、そうした過去の文化をあちこちに持ち込むようになったんだ。今じゃ、地球はすでに失くても、ある程度その過去の遺物については復元されているし、エジプトやアメリカやヨーロッパその他のある時代をリアルに体験できる施設がいくつもある。そういう意味では今も地球は生きていると、そう言えるのかもしれないな」


「そうなんですか。正直、このスフィンクスという神獣の姿を見た時……おかしな話、初めて見る建造物として驚くと同時、何故か懐かしいとも感じたんです。わたしだって一応、地球人類の遠い子孫なわけですから……そう考えた場合、わたしにもそうした……ええと、こちらの人たちの言い方としては、DNAと言うんですか?そのようなものが受け継がれているのかもしれません」


 ハイデン大尉もフォスティンバーグ博士もアップル少尉も、時々ゼンディラの理解力の深さや広さに感心することがあったが、この時もちょうどそうであった。自分たちがもし辺境惑星の出身で、ナノ・コンピューターだ、ダウンロードだ、DNAだなんだと、色々説明されたところで、おそらそくちんぷんかんぷんだったことだろう。だが、ゼンディラには百説明されて十理解するというよりも、十説明されて百理解するといったような、高い知識の吸収力と洞察力があったのである。


「まあ、最初にも申し上げましたが、我々のことはいないものと見なしてゆっくり寛いでください。エジプシャン・バーへ飲みにいったり、遊戯場へ遊びに行くといった場合にも付き添いますが、何事にも一切口出しはしません。レストランももちろんありますが、お腹が空いたらルームサービスで好きな物をなんでも注文してください。ホテル代はもちろんのこと、飲食費用に関してもすべて、スタリオン持ちですから」


 アップル少尉はドアの前を守るような形で立ち、ハイデン大尉はその内側で直立不動の姿勢のままでいる。ゼンディラはもちろんのこと、フォスティンバーグ博士も落ち着かなかったが、そもそも彼にしてもこの件に関しては結構な金額が電子口座に振り込まれているのは確認済みであった。ゆえに、あれこれ言う権利はないとして、すぐ諦めたのである。


 ふたりはもはや諜報庁所属のボディガードの女性たちを煩わす気にもなれず、単純に疲れたということもあって、あとはずっと部屋で休むことにした。それでも、博士がルームサービスで色々頼むと、自分たちだけ食事するというのも何やら憚られ……「一緒に食べませんか?」とゼンディラは誘ったわけであった。


「いえ、結構です。というより昼間、宙港のスカイ・ラウンジでアップル少尉が一緒に食事したのは、むしろ特例中の特例で珍しいことなんですよ。私たちは私たちで、あとから交代で食事したり休んだりもしますので、どうぞお気遣いなく」


「でも……」


 五種類のチーズとトリュフのピザだの、フルーツサンドイッチ、ズワイガニのサラダ、海鮮スパゲッティなどなど、ゼンディラ自身はあまりお腹がすいてなかったせいもあり、やはり気が引けたわけであった。


「ミスター・ゼンディラの故郷の惑星では、ひとりの女性のために男性十人が命を投げだすべきという文化でも、ここ本星エフェメラでは違うのです。ここでは男と女は対等に、なんでも半分ずつ分け合うべきといった文化ですから、何ひとつとしてあなたが気に病む必要はありません」


「いえ、いけません。というより、わたしはハイデン大尉が一緒に食事しないのであれば、何ひとつ食べる気になれません。そうすると、博士のほうでも何やら罪悪感を抱きつつ後ろめたい気持ちで食事することになりますし、それではせっかくの美味しい料理がすっかり台無しでしょう。すると、どうするのがもっとも効率が良いということになりますか?」


「……では、せっかくですから、有難くご相伴に与ることにしましょうか」


(やれやれ。これは私がうんと言うまで、ひたすらしつこく粘りに粘るというパターンだな)


 ハイデン大尉はすぐにそう察し、机に収まっている椅子を引いてくると、それぞれベッドサイドに座っているガード対象者ふたりと夕食をとらせてもらうことにした。


「相手がどんなに素晴らしい食事をしてようと、ただじっと見守らなくちゃいけないだなんて、本当に大変なお仕事ですね」


「ええ。まあ……でも、同時に面白い部分だってありますよ。今だってこうして、普通ならまず滅多に会うことのない惑星メトシェラの僧侶さまとお食事して、興味深い話を色々聞かせてもらえる機会に恵まれてるんですからね」


 軍艦アルテミスβにいた時、こちらの世界流の茶の淹れ方をマスターしていたゼンディラは、三人分の茶を淹れると、にこにこして食事の席に着いた。唯一、ドア前のアップル少尉のことだけが気がかりだったが、彼女の分については別の皿の上へ残しておくということにする。


「そうでしょうか。わたしの田舎の出身惑星のことなど、こちらの方々にとってはどうでもいいことのような気がします。地球発祥の生命が宇宙へ飛び出して4万4千年あまり……その間、たくさんの星域を巡って戦争が起こり、ついには地球自体も滅んだと『惑星列伝』という本の中で学習しましたが、そうした戦争をする間にも猛烈な勢いで人間たちは競うようにして新しい惑星を次々開発していったとか。つまり、わたしの住んでいた惑星メトシェラも、そのような数え切れないほど多くの開発対象の星のひとつに過ぎない――そうしたことなんでしょうね」


「この場にご高名な精神科医の先生がいらっしゃるのに、私如きが僭越ですが、実は高位惑星の命運は尽きていると考える学者は実際のところ多いのですよ。地球が滅んで今で約六千年ですか。その間、ほとんど奇跡としか思われませんが、人間たちはもう星間戦争はよそうということにようやく落ち着いたのです。もちろん、小競り合い程度のものは今も存在しますが、お互いの惑星そのものを滅ぼすといったような、壊滅的な戦争は惑星協定に反するということになりました。また、そのための査察も定期的に行われているわけですが……ミスター・ゼンディラ、あなたの出身惑星メトシェラでも、文明が成熟して人類が惑星の外へ宇宙船で飛び出そうという頃には、その時の代表政府と本星エフェメラは惑星協定をあらためて結ぼうとするはずです。スタリオンの真に見識ある人々は、高位惑星系と中位惑星系、そして下位惑星系のバランスが取れていることを非常に重要視するのですよ。そうした意味で、ミスター・ゼンディラの出身惑星メトシェラも、この既知宇宙全体のバランスを司るひとつの星として、非常に重要であると私は考えます」


(何より、あなたのような人間を生む文化を育んでいるというだけでも、それは証明されていようというものです)――とまでは、ハイデン大尉は口にしなかった。普段、彼女はガード対象者に感情移入するようなことはほとんどないし、そうしたことを口にしたことも、数えるほどしかなかったからである。


 だが、フォスティンバーグ博士には、ハイデン大尉がそうした感情をゼンディラに抱いているらしいことは、十分伝わっていたようである。


「まったくだな。高位惑星系だけが生き残り、下位惑星系や中位惑星系が滅んでも、我々は痛くも痒くもない……などと考える者は、愚の骨頂と言えたろうな。むしろ、考え方を逆にしたほうがいいだろう。どう考えても高位惑星系の発展は頭打ちなのだから、上位惑星系や中位惑星系が滅んでも、下位惑星系が残っていたとすれば――彼らはもしかしたら、その歴史上の過ちから何かを学び、よりよく発展する可能性すらあるかもしれないのだから」


「どうなんでしょうね。わたしには難しいことはわかりませんが……高位惑星系の人々がこの宇宙全体のことを慮り、戦争が起きないようにしているからある程度平和なのだとしたら――その中で下位惑星系だけが生き残った場合、再び大規模な戦争が起きるということなのではないでしょうか?」


(その<コントロール>ということが問題なのだよ)ということが、フォスティンバーグ博士にもハイデン大尉にもわかっていたが、彼らふたりは互いに目配せのみによって、その会話を終えていた。


「まあ、先のことは誰にもわからないがね、ゼンディラ、君がこうして本来ならやって来るはずのない場所へいることこそ、私やハイデン大尉には奇跡であるように思えるという、これはそうした話なのさ」


 ハイデン大尉はバジリコ・スパゲッティを食べながら、微笑みつつ頷いた。彼女は普段、栄養の計算されたフードインクによる食事を摂取していることが多いが、やはり一流の調理人による料理は味が違うなと、あらためてそう感心する。


「私も博士とまったく同意見です。ミスター・ゼンディラが今ここにいるように、惑星テレビや何かの企画でなしに、もっとお互いに文明の交流を持てるといいのですがね。けれど、そうなるとやはりその惑星独自の進歩や文明の発展に干渉することになってしまう……高位惑星ではね、そのように既知宇宙内のまだ未成熟な惑星ひとつひとつを見守り続けることで――自分たちが吸収できる何がしかのおこぼれがないかと虎視眈々と狙っているのですよ。そして、自分たちにとって得となる何かが見出されたとすれば、最悪、その惑星を自分のものとして搾取し尽くすのが目的なんですから……当の惑星にとっては『何が惑星同盟だ』という話でもあるわけです」


「なんですって!?」


 これは、博士やハイデン大尉にとってはあまりに一般常識的なことであったため、ゼンディラが手にしていたピザを取り落とすのを見て――むしろ、彼らは驚いたわけであった。


「じゃあ……あそこにヨセフォスたちが……それにマロス老……いえ、違いました。彼は本当はロドニアス隊長というんでしたね。つまり、彼らがここ本星から五千光年も離れた場所にある惑星メトシェラにいたのは――それが理由なわけですか?いつか、メトシェラの文化がもっと成熟する過程で……ここ本星エフェメラにとって有益な何かが発見されでもしたら、事実上の隷属状態に陥ることもあるという、これはそうした話なのですか?」


「余計なことをお話してしまったかもしれませんが、簡単にいえばそうしたことですね。そのヨセフォスという人やロドニアス隊長というのは、おそらく情報諜報庁の対惑星特殊部隊員のことでしょう。彼らはもし本星の命令があれば、対象惑星の歴史に介入することさえありますから……けれど、確かに惑星同盟にはメリットも多くはあるのですよ。下位惑星にある深刻な病いについては、上位惑星系においてはすでに克服されているものがほとんどです。ですから、そうした薬やワクチンを偶然発見されたかの如く装って配布するといったこともありますし……メリットとデメリットを秤にかけた場合、メリットのほうが大きいのは確かだろうとは思われる。とはいえ、その時点で何かが<自然>ではなくなる。その点を悪であると決めつける反対組織もあれば、本星エフェメラのセントラル・コンピューターのそうした計算こそ悪であるとし、テロ活動を行う組織も数多いといった具合ですね」


「そうですか。もしかしたらわたしが鈍いだけなのかもしれませんが……ようやく、色々なことがわかってきました」


 ゼンディラはヨセフォスと再会したいと思っていたし、それはライオネルやネオスやジョージたちに対しても同じだった。けれど、彼らのあの、自分に対して(悪いと思っている)といった態度の裏には、そうした事情もあったのかもしれないと思い当たる。とはいえ、彼らが基本的には善意の人間であり、自分にもそのように接したことについては、ゼンディラもまったく疑っていなかったが。


「どう言ったらいいかわからないが……とにかくね、我々高位惑星系の人間というのは、自分たちが歪んでいるという自覚だけは一応あるのだよ。ところが、この<歪み>をどう矯正したらいいのかが、自分たちだけではどうにも解決がつかないのだね。自分たち人間よりも計算能力のあるコンピューターなるものも造りだしたが、彼らは我々が自分たちに関して感じるような<歪み>については、『あなたがたは歪んでなどいません』と答えたり、『気持ちはわかりますが、今ある歪みを無理に矯正したところで、デメリットのほうが大きいでしょう。それは無意味です』といった具合の返事しかしないだろうからね。それこそまったく無意味なことさ」


 ハハッと、フォスティンバーグ博士は乾いた笑いを洩らし、ハイデン大尉も笑った。そして、彼女はどこか深刻そうな顔をしているゼンディラのことを見、ふと話の矛先を変えることにしたのである。




 >>続く。






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