準備はいいですか? 1
これは私の小さな呟きだった。
「で、何すればいいかな?」
あの後目一杯雑談をした私たちは、公爵邸を後にした。正直もうちょと里帰りをしていたかったけど。
でも私達もそうゆっくりはしてられない。だって準備をしなければいけないから。
「え?何もしないんじゃないのか?」
「むしろ何もしない方がいいのでは?」
「え、やらないの?」
全く、2人は何を言っているんだか。
「だって、心配だし」
「あー、初めてのお使いってこと?」
「初めてのお使いですか…いや、彼は小さいとは言えませんよね?」
「私にとっては、いつまでも可愛い弟よ!」
「そうゆう問題じゃないような…」
マシューがゴタゴタ言っているが、レオがいつまで経っても可愛いのは世界の原理だ。だからその初めてのお使い()みたいなものを、心配そうに見る私は正常だ。
「それにあんま時間ないでしょ?」
「時間…あ、そういえばまだ卒業してなかったね、レオンって」
「…ということは、春休みが終われば学園に戻らなければならないんですね」
「あー、気軽に会えなくなる〜」
残念なことにあと一ヶ月くらいでレオはまた、寮生活に戻ってしまう。
大体4月から少ししたくらいに、学園はまた再開する。だからそれまでは春休みとして、家へ帰ることができるのだ。
「って、それってタイムリミットがあと少ししかないじゃないですか」
「そうだよ?あー、来年にはレオも公爵か。時が経つのは速いね〜」
「何、呑気なこと言ってるんですか…」
マシューは本気で呆れているようだ。
そんなことを言っても期限が短いことは変わらない。てゆうか本人が一番分かっているだろう、その辺は。
「でもそこまで気にすることないんじゃないか?俺らの政策も割とすんなり通ったし」
「いや、それは貴方達だからでしょう。貴族は新しい王に期待していたから、やる気になったんじゃないですか?…まぁ、税金の方は脅しだと聞きますが」
「あれは不可抗量だろ」
「通常はもっとかかるものなんですよ?政策を実施するというのは」
「まぁそうでしょうね」
流石にそんなに直ぐに政策が決まるとは思っていない。
きっと私達に期待していたから、とかじゃないだろうか。好きな人に頼み事をしてもらうと頑張りたくなる、不思議な現象みたいなものだろう。
「会議の時とか、盲目って感じもしたし」
「確かに…って、大丈夫なのかソレ」
「さぁね?」
…ウソです、間違えたら信頼が一気に崩れるのが怖すぎますよ。
「…じゃあ、レオのとこは大変なのかな?卒業パーティーの時の悪い噂とかあるだろうし」
「家臣達を動かしにくくなっているでしょうね」
「レオって期待されてたもんな…だからその分失望が多かった、とか?」
「勝手に期待しといてなんなのかしらね?」
でも、どうせ人なんかそんなものだろう。
イメージと違ったから、期待してたのになんて、今まで沢山聞いてきた。
「でも不利な時にも、家臣達まとめることが出来たら凄いわよね」
「…確かにそれはイメージアップに繋がりますが、出来なければ意味がないのでは?」
まぁね、と心配そうなマシューに返す。
卒業パーティーの一件から、元側近達の評判は地に落ちたと言っていいだろう。それは勿論レオも同様で、そんなレオが優秀だと伝われば地に落ちた評判もどうにかなるかもしれない。
でも、その分失敗すれば周囲に呆れられ、さらに馬鹿にされるだろう。
「そんなのレオはわかってるでしょ」
「だったらなんで、公爵に任せないんだ?」
「親に任せることも出来るけど…やっぱり手柄は欲しくない?」
「リスクがあってもか?」
「失敗したら更に悪評がーーあ、そんなことにはなりませんね」
「え?」
マシューの言う通り、そんなことにはならないだろう。
「そのための私達よ!ピンチになって頼ってくるかもしれないんだから、私達も準備しないと」
「…そういや話してたよな。ヤバくなったら融通きかすぞって」
「準備ですか…何するんですか?」
「それを最初に聞いたんだけど…」
全く…私が何のために話を始めたと思っているんだ。
「…最初の質問は、いつサポートすることになっても大丈夫なようにってことでしたか」
「あー、それで何すればいい?って言ってたんだな」
気づいてなかったんだね…。通りで話が噛み合わないと思ったよ。
こっちがちゃんと準備してないと、レオに絶対何やってたんだって怒られるよ?
「というわけでマシュー、準備するものは何?」
「私任せですか!?」
いいじゃん、いつも任せられてるし。




