もうやめて、彼のライフはもうゼロよ! 5
どうすればいいか分からず彼女を見ていたら、似たような場面が思い出された。
血塗れの男を必死に揺さぶる、小さな女の子。そしてそれに混乱する、小さな私。
…なんで、今思い出すのかな?また、彼女を不幸にした天罰ですかね?
でも生憎、そんなことより今はララさんだ。私は彼女になんて言おうか。
結局分からずにいると、時間切れだとばかりに言葉が飛び出していく。
「…大丈夫だよ」
ーー大丈夫だよ!
違う、これは
「なんとか、なるよ」
ーーきっとなんとかなるよ!
…これは、あの女の子にかけた言葉だ。
『嘘つき!!』
それでこう言われたっけ。
だからダメだ、そう言っちゃ。何か他の言葉をかけよう。なんて言えばいいの…?
「…嘘つ」
「ーーあそこには、頼れる公爵家の人がいるからな!」
もうダメだ、と思ったらそれにかぶさる声が聞こえてくる。
ーーリクだ。
「…頼れる」
「そうだよ!だから、絶対なとかしてくれる!」
「…本当、ですか?」
「そうだよ、きっとなんかじゃなくて絶対!!」
そうだ。だってあそこには居るじゃないか。
「…大丈夫だよ、だって家族は凄いもん!!」
「そうなんですか…?」
「そうだよ、貴方を絶対救ってくれる」
すると、徐々にララさんは落ち着いてきたようだ。
「…ごめんなさい、私ったら取り乱しちゃって」
「全然平気よ、自分の家族が大変かもしれなかったら誰だって焦るんだから」
「そう言ってもらえると助かります…」
「いえ…僕も無神経でしたし」
わ、マシューが人に謝ってる!
「…なんか失礼なことを思ってませんか?」
「とりあえず、なんとかなって良かったな!」
リク…さっきのフォローはありがたかったけど、まだなにも解決してないからね?
「でも…マシューさんが言ったことって間違いじゃないので、これからどうすればいいでしょうか…?」
ほら、ララさんだって言ってるじゃん。
結局フィエルテの問題は解決してないんだよ。
「大丈夫だ!俺達は俺達の仕事をしよう」
「私達の仕事ですか…?」
…あ、調査。
「…私達は私達の視点で調査をしよう。そしたら、王様や王妃様がなんとかしてくれるよ!」
「任せても大丈夫なんでしょうか…?」
ララさんは不安らしい。
そりゃそうだよね。だって王妃のせいだもん、フィエルテが大変になるかもしれないのは。
…どうしよう、これに関してはフォローが入れられないよ。
「大丈夫でしょう、王妃様は優秀ですから。きっとそのことも視野に入れていて、対策だってすでに練られているんじゃないですか?」
全く違いますって言いたいところだけど、マシューがフォローしてくれたらしい。流石に、ここで否定はできないわ。
「…じゃあ、任せてみましょうか」
そして、私達は調査へ向かった。
◆◆
「あそこでお別れですね」
「寂しいなぁ〜」
それから数日が経過し、調査は終了してしまった。
つまり、違う方面へ帰るララさんとはここでお別れ。実質、二度と会うことはないだろう。
「でも、楽しかったね」
「はい!皆さんとの旅行はほんとに楽しかったです!」
そりゃ良かったよ。私もほんとに楽しかったからね。
でも、と思いながらため息を吐く。
「マシューも最後くらいちゃんとしなよ!」
「…煩いです」
「もう!」
ほんとにこの男は…。
「もう、良いですって。マシューさんがこうゆう人だって言うのは、なんとなく分かりましたから」
「それなら良かったです」
ララさんは苦笑している。って、開き直らないでよマシュー…。
「…でも、最後くらい挨拶はしますよ」
「え?」
「楽しい旅でした、気をつけて帰ってください」
その言葉に、思わずポカーンとしてしまう。そしてそれは、私だけじゃなくてララさんやリクもだった。
だって…
「愛想良く、出来るの?」
「…あの、人のことなんだと思ってるんですか?」
「年中不機嫌の男」
「ブスッとしてる人」
「未来のハゲ宰相さん」
ほら、リクもララさんもーーえ?
「ハ、ハゲ宰相…?」
「ふふふ、任せましたよアナさん」
それって、もしかして知ってたの?
「ふぁんぶっく?ってゆうのは良くわかりませんが、マシューさんがハゲやすいことは分かりました」
開いた口が塞がらないとはこのことか…!
「楽しかったです!さようなら!!」
でも、とりあえず挨拶はしておこう。
「…はは、さようなら!」
「ララさん、元気でね!」
バレちゃったのはいろいろまずい気がするけど、でも別にいいかな?
「…はぁ、任されましたよ」
呆れながら挨拶する彼に、ララさんは最後に言った。
「ハゲてもあまり気にしなくていいですからね!!」
今度こそ未来のハゲのライフは、ゼロになってしまった。




