もうやめて、彼のライフはもうゼロよ! 3
sideリク
今ここで、この元友人と隣にいられるのは奇跡だろう。
何せ彼との友情を壊したのは、俺自身だから。
マシューとはもう、10年以上の付き合いになる。
気難しくて不機嫌なあいつが、最初は嫌いだったりもした。でも根はいいやつで、将来のことを語る彼のことを、だんだん友人として認めるようになった。
それなのに、記憶を思い出してそれが変わった。俺がいいと思ってやらかしてきたことのおかげで、自分の立場はとても危ういものだと気づいたからだ。
…そして同時に、友人を裏切るくらいの覚悟がないとダメだと知った。
だからこれまで嫌っていた婚約者の元へ行き、土下座をした。
そこで自分と同じ前世を持つ人間だということが分かった。まぁ、彼女は俺を許す気はなかったようだが。
なんとか協力を得ることが出来た。
そして、卒業パーティーで俺は友人達をーー裏切った。
「何やってるんですか?」
「…なんでもない、行こう」
そしてその一人であるマシュー。今、彼と隣にいるのはまさしく奇跡としか言いようがないだろう。
卒業パーティーで俺は、彼の将来を壊した。
幼い頃から俺に語りかけてくれた、彼の大事な夢を。
許されようとは思わなかったけど、それでもどこかで仲直りしたいと思った。
だって、俺は俺じゃない。
俺は確かに、彼の友人のセオドリクだったんだ。
「…はぁ」
呆れたようなため息するマシュー。まるでいつものように吐くため息が、もしかしたら、と思ってしまう。
「別に、もういいですよ」
「え…?」
「あの夜、貴方に断罪された理由は理解ができるし、正しいことだと思っています」
その言葉は、まるで俺を許しているようだった。
そんなわけがない、と思うが、彼はきっと国のことを誰よりも思っている。だからあの時の俺の行為が国のためなら、許してくれるかもしれないと、淡い期待を浮かべる。
「だから、もういいです」
「…!」
仲直りが、出来たのだろうか…?
「…私はこれから宰相になります。だから、貴方に媚くらい売ったほうがいいでしょう?」
「……」
…顔には出さなかったはずだ。
でも、とてもーー悲しい。
「いつか、この国のために貴方に使われる日が来ることを、願っています」
マシューの目は、俺を友人として認識していない。
「…そうか、嬉しいよ。じゃあ、仲直りだな」
そんな気持ちを悟らせないように、頑張って笑顔を作る。
「えぇ、仲直りです」
小さい頃、些細なことで喧嘩したときにした仲直り。
学園で、恋敵になってしまった彼とした仲直り。
それのどれとも違う仲直り。
妻に聞かれて彼は言う。
「ただ仲直りしてほしいと言っただけですが?」
「……え、仲直り?」
「…仲直りかぁ」
震える声で小さく呟く。
友人としての仲なら、直らずじまいだ。
きっと一生、仲直りなんかできやしないだろう




