エピローグ
「で、いつまで拗ねてんの」
「…別に、拗ねてないし」
ここは完全防音の寝室。
そんなところで拗ねたような表情を見せる彼は、私の夫でこの国の国王だ。
「拗ねてるじゃん。…そりゃあ、セオドリクをずっと無視してたのは悪いと思うよ?」
「…セオドリク」
何かをボソッと呟かれたが、なんと言ってるかよくわからなかった。
セオドリクが拗ねてるのは、多分私が今日来たインテリ眼鏡とずっと話し込んでいて、その間話しかけてくる彼をことごとく無視したからだろう。
悪いとは思ってるよ?
でもさ、こっちだってあいつを追い返さないとって必死だったし…いや、それでも無視したらダメだ。
うーん、もう一回謝るか?でもこの感じを見るに無駄そうだし、一回寝る?…どうしよう。
私は何をすればいいか考えていると、セオドリクが拗ねたままだが言ってきた。
「…じゃあさ、俺のことリクって呼ぶなら拗ねるのやめてもいいよ?」
「え?」
思わずポカーンと間抜け面になってしまった私は悪くないと思う。
だって…こんなのまるでラブコメか少女漫画じゃないか。
…ま、彼のことだしそんなことはないだろう。
でもなんで愛称呼びの方がいいと思ったんだろうか?
「…あ、セオドリク呼びは浮気野郎だからって言ったから?」
「…そう、だな」
それなら納得だ。
以前私が彼にリクと呼んで欲しいと呼ばれた時、断る理由が浮気野郎をあいしょうでよびたくない、だったからだ。浮気って今の彼にとっては黒歴史だろうしね。
「それも!…あるんだけど」
「ん?」
それも、だけなぜか力強い言い方にも疑問があるが、他の理由なんてあっただろうか。
「あのさ、こっちに来てもう一ヶ月くらい経つよな?」
「そういえば…そうだっけ」
正直、私達のこっちに来てからは気ままなものだった。
前王のやり方をそのまま続けてもらって、私達は大体一年後くらいから本格的に業務をすることになる。
これは、その間に仕事のやり方をどう変えるか、とかを決める期間らしい。
本来は即位前の期間だと思うが、そもそもセオドリクは即位をしなければ業務に携われない。
これは昔、業務に携わった王子が他国に寝返り、機密情報が漏れてしまったかららしい。それは母親がその寝返った国の令嬢だったかららしく、他国の血が入っている場合は即位するまで業務に携われないんだ。
私は婚約破棄の出来る婚約者だし、セオドリクの母親は帝国から嫁いで来ている。
つまり、私達はそうゆうルールがあって業務にはまだ携わらず、気ままに生活することができるのだ。
「アナ?…聞いてる?」
「え?あ、ごめん」
「もう…で、俺らはこっちに来てから一ヶ月経ってるんだから、そろそろはっきりさせない?」
「なにを?」
「これからのことだよ」
???
これからなんて決まってるじゃん。
「私達は王妃と王なんだから、国を治めて跡継ぎを生むんでしょ??」
「分かってたんだ…」
なに、その呆れ顔は。
私、結構王妃っぽいことしてると思うんだけどな?
「それじゃあ、跡継ぎを生むって雰囲気にならないのはなんでだと思う?」
「…え、と?」
あれ…、確かにそんな雰囲気ないよね?
なんでだろ、もう一ヶ月くらい経つんだし、そうゆうことしてもいいはずなのに。
「…多分だけど、俺のこと旦那って思ってないからでしょ」
「いやいや、思ってるって。」
「でもリク様って言ってる方が圧倒的に奥さんっぽい」
…それはまあ、ね。
でも、別にセオドリクのことは旦那とーー
「あれ、思ってなくね?」
「だろ?浮気野郎じゃ無理ないか?」
確かにセオドリクのことをずっと、浮気野郎だって認識してたかもしれない。
それじゃあそんな雰囲気にはなんないよね。
「成る程、じゃあそれでリクって呼んで欲しいと」
「そうゆうこと」
「了解、リク」
早速呼んでみると、なんか微妙な顔をされた。なんでさ。
「…なんか、妻って感じがしない」
「…ちょっとそんな感じはしてた」
もう、どうすりゃいいのさ…!
「…あ、実際やってみた方がいいよね」
「…え?ダメだよ!?」
「そこまで拒否られると流石に傷つくんだけど!?」
なに?コイツは私を女っとして見れない病気なの?
コレでも顔もスタイルもいいんだよ?…そうか中身がダメなのか、嫌がられてもヤってやる!!
「違う違う!誤k」
「うるさぁぁぁぁぁい!!!!」
そうしてこの夜私は、旦那に迫る痴女化したのだった。
ただし悲しいことに進展はなかった、解せぬ。
「…はぁ、世継ぎどうしよう」
疲れて寝てしまった私の顔を見ながら、呟く夫がいたとかいないとか。




