王妃と王は詰んでいる? 4
そして、めちゃくちゃ飛んで待ちに待った?視察の日。
今日はセオドリクと2人(と後ろに護衛)、王都にある教会を訪ねてみることになっている。
「そういえば、ここからスラムまでは近いんだっけ?」
「あーそういえば徒歩5分くらい?行く?」
「いや、何があるか分からないんだから行けないでしょ」
「そっかぁ…まあ用事はないけどな」
私達は、教会だけではなく王都の視察になっているので平民のカップルを装っている。実際は夫婦なんだけどね。
「あ、着いたみたいね。…あまり豪華って感じはしないね」
「そりゃ、普通の教会はこんな物だろ。式を挙げたところは貴族がよく使うとこだし。それにここ、スラムに近いんだから」
「あぁ、スラムに近いと人が寄り付きにくいよね。襲われるかも知れないし」
スラム街に近寄ったらスリにあったという報告くらいあるんだ。普通は寄り付かない。そのせいでスラムに近い立地は買われることが少ないんだとか。
「ん?スラムをなくせばそのぶん土地が増えるんじゃ…?」
「国中の?…無茶じゃないかな?」
「とりあえず王都だけでも。そっちにお店とか出来たら賑わうし、人が住んだら税も取れるでしょ」
「確かにスラムって意外と規模あるもんね。…それは後で考えるとして、入ろう」
「うん」
そうして私達は教会の中に入る。
さっき言った通り豪華ではないが、それはあくまで式を挙げた教会と比べてだ。前世じゃそこそこ大きい家、くらいだし。
中に入るとそこそこ綺麗で、装飾品がいっぱいとかじゃないけど建物自体が綺麗だ。
そして、中にはシスターらしき女の子が子供たちに読み聞かせを行なっていた。
「ーーは、幸せになりましたとさ。めでたしめでたし。…どうしたの?」
「あそこに、ひとがいるよ!!」
「え…?」
「…あ、綺麗な教会ですね」
「…お客様ですか?こんな小さな教会に??」
シスターは私たちを驚きながら見ている。そこまで不思議だっただろうか?…スラム街近くだけど子供も何人かいるし…って
「その子達、親御さんは?」
「…っ」
シスターの顔が強張る。
あれ、聞いちゃいけなかった?でも聞かないとね。もし親御さんに黙ってとかだったらまずいし。
「…あんた何」
すると何も答えないシスターの代わりに、最年長だと思われる中学生くらいの少年が睨んでくる。そしてそれに習うように周りの子供達も騒ぎ出す。
「しすたーいじめちゃダメ!」
「おねーさんたちわるいひとー?」
「わるいひとだったらあっちいって!!」
「…あらら」
これじゃあ視察どころじゃないんだけど。…はあ、別にシスターが目的じゃないし仲良さそうだからいんだけどさ。
私は子供達に負けないように声を出す。
「皆、聞いてーー!!私達はね、悪い人じゃないんだよ」
「そうなの??」
「おいっ」
「私達はね、今日結婚しに来たの!!」
「「へ??」」
するとセオドリクは理解したようだった。
私達がやっているのは、結婚希望者ってことにして彼らの警戒心をなくそうとする作戦だ。結婚するなら教会に行くのも怪しくないだろう。もう夫婦なんだけどね。
この際、シスターがなぜ親同伴じゃない子供と一緒にいるのかは良いとしよう。何かあっても友達だと思ったとでもいえば良いだろう。
「じゃあ、なんでこんなスラムの近くの教会にきたんだよ!!」
「え、えーと、」
「…それはね、彼女のお父さんには内緒だからなんだ」
「え?」
そう言って少し悲しそうな顔をするセオドリク。ナイスよ!!
「恥ずかしんだけど、彼女のお父さんに反対されてて…」
「それで、駆け落ちしてきたの」
私はえへへと笑う。実際こういうケースは平民でもあるらしい。
すると最年長の男の子が申し訳なさそうにしながら言う。
「あ…えと、疑ってすまん」
「ううん、ノックを忘れていたからお互い様だよ」
「いえ、それでも私気づかなかったと思うので、ごめんなさい」
「シスターさんまで…」
そんな感じに、無事に教会の視察が始まったのだった。




