記憶
木扉を開いて、足を踏み入れた。やはり冷やりとする。螺旋型の階段を上っていこうと。右足を出して、視界の右端に映ったものに惹かれた。
あの少年だと、僕は即座には思えなかった。だが、この写真に映っているのは紛れもなく僕だ。記憶が蘇っていく。
「道流さん、どうしたの? その写真・・・・・・」
僕が返事を返そうとすると、今度は深琴の方が息を止めたように固まった。僕たちは見つめ合った。
悲しいような嬉しいような、おかしな感情になった僕の心臓がいたい。
「具合が悪そうです、道流さん」
「うん、ちょっと休ませて」
深琴に支えられ、なんとか階段を上りきり座り込んだ。入り込む海風が思いのほか冷たいもので、火照った体を冷ますのにはちょうど良かった。
「きっと、写真のせいね」
深琴の膝に頭を載せていることにも、意識がいかなかった。ただ、深琴の服はいい香りがした。
昼間から夕方にかけて僕は寝ていたらしい。日暮れの暗さに目が覚めた。
「元気になった? 」
「・・・・・・だいぶ楽にはなったかな」
それはよかったと、深琴は海の方を見る。僕はその行動が急に気になった。
「なんでそんなに、海を見ているの? いつも、いつも」
いつもとは、ここ最近の話ではない。あの荒海に飲み込まれそうになった日まで、既に深琴のことは知っていた。と、我に返る。
「きっと。僕があの時、あそこにいたのは。そうだね、君に話しかけようとしたんだ」
どうしても、深琴が気になって仕方なかった。




