天気
僕は毎日深琴の所へ通った。日々は流れ、夏も中旬に差し掛かっていた。
「深琴、おはよう」
トメ婆さんの店で買った、一枚の皮を塔のたもとに敷いて腰を下ろした。静かな音を立てて、波が砂を自らへと引き込んでいく。その余韻さえも心地よい。なぜだろうか、僕はなんとなくその答えをわかっている気がしていた。
「いい天気だな」
返事がないのは百も承知で、それでもいいやと僕はサンドウィッチを頬張る。美味しい美味しいと食べていると、空がより一層透き通ったように見える。
「ほんと、空って綺麗だな」
僕は自分の話をひたすらした。どうでもいい自分の主観的な発言はバカバカしいと鼻で笑いながらも、尚はなし続けた。
一時間は立っただろうか。我ながら居座り過ぎだと笑いがこみ上げてくるが、もう一度試みた。
「ねぇ、深琴。深琴は、こんな晴れた空と雨や曇りの日。どんな天気が好き? 」
なぜこんなにくだらない会話しかできないのだろう、と微小なる自己嫌悪に陥りそうになった頃合い。耳慣れた笑い声が聞こえた。
「深琴? 深琴、さぁ! どの天気が好き? 」
ひょこり、と深琴は顔を出して大きな声で言った。
「あめ、雨!!!私は雨が好き!!!」
腹の底から、無邪気な笑いが溢れる。体の中が熱くなる。一方で胸は切なくなる。
「僕も、僕も雨が大好きだ!!! 僕は晴れなんて嫌いなんだ!」
「私も!私も晴れなんか大っ嫌い!!!」
僕たちは笑った。きっと目尻から流れたものは嬉しいものに違いない。




