ランク
「今日からこのクラスに編入するアリシア君、エリー君、アルス君だ」
「アリシアなのじゃ! みんなよろしくなのじゃ」
「エリーです。右も左も分かりませんがよろしくお願い致します」
「アルスだ、よろしく」
こうして俺達はカステリア王立魔法学校での学校生活をスタートさせた。
毎日の魔法の実践授業、魔法の仕組みを学ぶ座学、そして基礎体力を作るための体育。
全てが魔法を極めるためのカリキュラムだ。
この学校は実力によってクラスが別れており、俺達は一番下のクラスであるランクFに編入となった。
アリシアやエリーは本来最上級クラスの実力を持っているのだがワガママ言って三人一緒のクラスにしてもらった。
この世界の魔法とは自らを鍛えればそれに応じて魔法も強くなっていくという法則で成り立っていた。なのでこの学校のカリキュラムを通して生徒達は己の魔法を磨いていく。
そして上のクラスにいくには定期的に行われる試験を受けて合格しなければならない。
「アリシアちゃん。試験で部屋を壊したんだって? 凄いねー」
「別に凄くないのじゃ」
「またまた。やっぱり才能ある人は違うなー」
編入試験での出来事は既に学校中に広まっていた。
アリシアは初日から人気者だ。勿論元魔王というのは隠している。
そもそもバレたら学校にいられなくなることは間違いないからな。
「エリーちゃん彼氏はいるの? 好きな人とかは?」
「え、そういう人はいないです。気になってる人はいますが」
「えー誰? そいつが羨ましいなぁ」
エリーもその容姿から男子からの視線を集めていた。さっきから質問攻めだ。
俺が会話に入る隙もない。
そして俺といったら誰も寄ってこない。一人で分かってはいたことだが辛いことだ。
しかし俺は転生者を狩ることが目的だ。学校生活など所詮そのための仮の生活に過ぎない。
俺は誰も寄ってこないので一人で放課後学校の中を調査していた。
校舎裏のひと目につかないところでたむろっている学生達がいる。
こういう奴らに話を聞くのが一番手っ取り早いに違いない。
「ちょっといいかな? 話が聞きたいんだけど」
俺はそいつらの中の一人に話しかけた。見るからにやる気のなさそうな態度をしている。
どの学校でも不良というのは存在するものなのかね。
「何だお前。俺達に何の用だ」
「俺はアルス。編入生だ」
「アルス? ああ、確かこの学校始まって以来の才能なし認定を受けた奴だな。確か少女のおまけとかいう」
そうか、俺はそういう風に名前が売れていたのか。才能なし認定とはひどい話だ。まぁ確かにアリシアの一言がなければ普通に不合格になっていたんだけどね。
「そうだよ。その才能なしのアルスだよ。この学校について聞きたいんだ。今のこの学校の現状について聞きたい」
「そんなこと聞いてどうするんだ? まぁいい。お前は俺達と同じ臭いがするからな。教えてやるよ」
俺と同じ臭いするか? 俺は生粋の勇者なんだが? 制服がそんなに似合わないってことか? まぁでもそのおかげで話が聞けるのだから良しとしよう。
「この学校は才能のある奴が上に行くシステムだ。だから才能の無いやつはゴミだ。全く意味がない。今、そんな風に思う奴らが増えているってのが現状かな」
「才能がないって言ったって、魔法は自らを鍛えれば強くできるんだろ? それにそのためのカリキュラムが組まれているのに」
そう俺が当然のように言うとそいつはキレながらさらに教えてくれた。
「いいか? あいつを見たらそんなことはもう言えないんだよ。俺達の今までの努力、汗、時間、全てが無駄になっちまったんだ。分かるか? その気持ちが」
キレているのもそうなんだが、言葉からは悲しみも感じる。
こいつらはただ単にここでサボっているというような状況ではなかったのか?
「もっと詳しく教えてくれ。あいつって誰のことだ?」
「うるせぇ。後は自分で考えろ才能なし。そして後悔しろこの学校に入ったことをな」
そう吐き捨てながら俺の質問には答えてくれずにどこかへ行ってしまった。
どうやらこの学校に広がる闇は想像以上に深い。そして言っていた『あいつ』とかいう存在が転生者であることは間違いないだろう。
少なくとも俺が入る前にこの学校について調べた時は今の話のようなところではなかった。
魔法を極めようとする者達がお互いを尊重し競い合い高め合う。そして魔法以外にも人間として成長できる素晴らしい場所。そんな話だった。
だが全然違う現状を教えられた。やはり中に入らないと分からないところがたくさんあるということだ。
俺は次の自分の魔法を試すために開放されている道場へ向かった。
ここではそれぞれが鍛えた成果である魔法を自由に試すことが出来るよう建物自体に特殊な結界が張られている。なので何も気にせずに魔法をぶっ放すことができるのだ。
そこには一人の少年が魔法の練習をしていた。
歳は15歳くらいだろうか。まだまだ顔つきは幼い。
「サンダーボルト!」
そう叫んで魔法を放っていた。サンダーボルト、雷の呪文か。
だがお世辞にはその少年が放つサンダーボルトは雷とは言えるものではなかった。
少しの電撃がダミー人形を焦がす。焦がすといっても少し黒くなるぐらいだ。
それでも俺のエンドレスフレイムの威力に比べたら段違いなんだけどね。
羨ましい。
「難しいなぁ。もっともっと練習しないと!」
少年は俺が思ったことなど気にすることもなくひたすらサンダーボルトと叫び練習していた。俺が入ってきたことにすら気付いていないようだ。
この少年に話を聞いてみよう。さっきの連中より全然素直に答えてくれそうだ。
「練習中に悪いがちょっといいか少年」
「え? あ、こんにちは!」
気持ちのいい挨拶が帰ってきた。
必死に練習しているとこを邪魔したというのにそんな事を怒る様子もない。
「すまないな邪魔して。俺はアルス。君に話が聞きたくてな」
「アルスさんこんにちは! 僕はシュウと言います。今日編入してきた方ですよね?」
どうやら俺の事をすでに知っているらしい。
「あれ、違ったらすまん。もしかして同じクラスにいたのか?」
「そうですよ。僕も同じランクFにいます」
「ごめん気づかなかった」
「よく影が薄いって言われるんで大丈夫です。それにしても僕なんかに何のようですか?」
てっきりまた才能なしということでいじられるのかなと思ったら違った。
しかし同じクラスだったとはな。悪いことをした。
とりあえず話はしてくれそうだし聞いてみるか。
「実はこの学校について色々調べていてね。ほら、俺まだここへ来て分からない事ばかりだしさ」
「そうですか。何が聞きたいんですか?」
「そうだな。とりあえず、この学校で一番凄い奴って誰?」
恐らく転生者であればチートを持っているはずだ。
なので一番凄い奴が転生者に違いないという何のひねりもない考え。
「凄い人ですか……。そうですねアルテアさんじゃないですか?」
「アルテアさん?」
そういえばこの名前は編入試験の時に聞いたことがある。
確かアリシアが比べられていた名前だ。
「そうです。アルテア・バース・ジン。今この学校で一番強い魔法を持つ人です。僕の憧れなんです」
そう俺に語るシュウの目はキラキラと輝いていた。
アルテア・バース・ジン、こいつが転生者なのだろうか。
「そのアルテアって奴は俺もこの学校に入る時に試験官から聞いた。凄い魔力を持つとか」
「そうです。アルテアさんは入学当初からもの凄い魔力を持っていてたちまち最上級クラスであるSランクまで駆け上がったんです」
「それは凄いな。この王国の人間なのか?」
「実は僕もここまでしか知らなくて。Fランクの僕なんかじゃ実際見たこともないですからね。でも僕はいつかアルテアさんのようになりたいと思ってるんです」
そういえばこの学校は完全にランクによって分かれているために上のランクの奴ら見たことないな。さっきの不良たちもDランクだった。ランクについては胸の記章を見れば分かるようになっている。
「そうか。そのアルテアさんに会うにはどうしたらいい?」
「貴方もアルテアさんに会いたいんですか? 僕と同じですね。そうですね少しでも上のランクに行くしかないです。この学校の敷地について知っていますか?」
「ああいちおう説明を受けた」
たしかランクごとに入れる場所が決まっていて。
Cランクから上となると完全に別の敷地で生活をしているという。
しかもそこへは最低でもCランクにならないと入ることができないよう封印結界が張られている。
「だからアルテアさんに会うには試験に合格するしかないんです」
やはりそういうことになる。
俺は覚悟を決めた。アルテアが転生者かどうかはまだ分からない。
そして転生者がどのような歪みをもたらしているのかも分からない。
だがそれを確かめるためにもSランクに上がらなければならないということだ。
全ては転生者を狩るために。この世界を守るために。
俺は覚悟を決めた。
「……シュウ、俺も一緒に練習していいか?」
「勿論ですよ!」




