編入試験
「ここがカステリア王立魔法学校か」
俺達はまた転生者が暴れているという異世界へ来ていた。
ここは異世界スタルドのカステリア王国。
この世界では魔法が全ての基本だ。複数の国が存在し各国が魔道士育成に力を入れている。なので若者は王立魔法学校へ通い魔法について学ぶことになっている。そして、天の声によると、この学校に転生者がいるという。
この学校は寮制で外から中の様子を知ることはできない。
なので俺達が転生者を狩るには生徒として入学するしかない。
そのためにこれから編入試験を受けることになっていた。
「それではアルス君どうぞ」
「は、はい!」
俺は試験が行われる部屋に呼ばれた。
こういう試験というのは生まれて初めての事なので緊張する。
しかしこれに何としてでも合格しなければ転生者を狩ることができないから頑張らないと。
「君がアルス君だね。この魔法学校に編入を目指すなんて非常に珍しいよ。君で二人目だ。それではそこにある人形を的にして君の魔法の力を見せてくれ」
「は、は、はい!」
だめだ緊張して返事すらうまく出来ない。
いちおう試験の前にアリシアに俺の魔法の才能を引き出してもらったはずだからいけるはずだ。練習では一度も発現しなかったのだけど……。
アリシアからはこう教わった。魔法とは己の中に存在する可能性を具現化する力だと。
すなわち思いは力に変わるということだ。
俺は心に思い浮かべた。自分の魔法の力を。そして叫んだのだ。
「エンドレス・フレイム!」
俺の思った事とは終わらない無限の炎。決して消えることのない炎。
俺の熱い思いが具現化した魔法だ。
決まった、完全に決まった。目を開けた時には人形は跡形も無く消え去っていると確信した。
「それだけかね……?」
「え? どうでしたか?」
「そうだね、うん。手から少しの火、マッチぐらいの火は出ていたよ。もう帰っていいよ」
「……」
無言で退出した。
こんなのってないよ。ドヤ顔で叫んでた俺ってなんなんだ。アリシアの言葉は嘘だったのか?
惨め過ぎて涙もでねぇ。何だよエンドレス・フレイムって。バカじゃねぇの。
あーもうこれ数年は夜寝る前に思い出してバタバタするわ。
「どうだったのじゃ?」
「ダメだったよ。いちおう火は出たけどね」
「おお大きな進歩なのじゃ。練習では一度も何も出なかったのに。本番に強い男なのじゃ」
「ありがとう慰めてくれて。アリシアも頑張ってくれ」
ポンポンと肩を叩いてくれるアリシア。推定12歳に慰められる俺って……。
だめだ今優しくされると余計に落ち込むわ。
「落ち込まないで下さい! 出来ない物は出来ないんですからしょうがないですよ」
すかさずエリーも俺を慰めてくれた。何だか慰め担ってない気がするけど。ありがとう。 でもお兄さん辛いよ。
「ぐさりときたよエリー。エリーも頑張ってね」
「そうだ、今度は私の胸を貸しましょうか? さぁ泣いていいですよ」
そうなると話は別だ。ここは甘えさせてもらおうかな。
「次の方、エリーさんどうぞ」
「あ、呼ばれちゃいましたね。じゃあ行ってきます」
おいおい胸は? ねぇ胸は?
糞が何もかもがダメじゃねぇか!
それから数分してエリーは帰ってきた。俺の時より全然長いな。
「何とかできました。練習通りの成果を出せましたよ」
「……おめでとう。さすがエリー」
「見込み通りなのじゃ」
エリーはアリシアからお墨付きをもらっていた。
元々潜在能力が高く。鍛えていけばかなりの物になるとのことだ。
元魔王のお墨付きをもらっているんだからそりゃあ合格するよな。
「それでは最後の方、アリシアさんどうぞ」
「お、わしの番なのじゃ。ちょいちょい行ってくるのじゃ。アルス、わしのまかせておくのじゃ」
「ああ、頑張ってね」
そうだね。頑張ってね。
絶対合格するだろこんなん。だって元魔王だぞ? あの前回のガルベスくんの巨大さだぞ? もはや不合格になる要素が見つからないわ。
それから3分後の事であった。
【ドガガガアンッ!!!】
部屋からとてつもない爆発音が聞こえてきた。
おいおいアリシア何したんだよ。
部屋の扉を開けると人形どころか窓がある方の壁ごと完全に吹き飛んでいた。
「えへへ。ちょっとやり過ぎちゃったのじゃ!」
「アリシアさん凄い。さすが元魔王」
「エリーも鍛えればこれぐらいできるぞ」
「本当ですか? わぁ、頑張ろう」
何普通に二人は会話してるんだ。
手からマッチ程度の火しか出せない俺のことを考えろ
これはマジでやり過ぎたってレベルじゃねぇぞ。
ここまでやったらむしろ不合格なんじゃないか……? そんな不安が頭をよぎる。
アリシアを見ていた試験官達は開いた口がふさがらないという様子だ。
「どうじゃ? わしは不合格かの?」
一向に合否の返事がない試験官にアリシアが話しかけた。
試験官の一人が震えながら叫んだ。
「ご、合格! ここまでの力はあのアルテア君以来だ!」
アルテア君って誰だよ。アリシアに匹敵する力を持った存在がいるのか?
そんなことは今はどうでもいい。良かった合格できて。
俺は一人でどうするか考えないとな。毎日校門で出待ちでもするかな……。
「一つ条件があるのじゃ。それをOKしてくれるなら編入するのじゃ」
え? 何言ってるんだアリシア。何でこっちが条件出すんだよ。
「な、何だね? 君のような逸材はぜひ我が校に必要だ。言ってみたまえ」
ええ? そういうのありなの? 確かにアリシアレベルが入ったら凄い戦力になるだろうけど。
「アルスも編入も認めてほしいのじゃ。こいつはわしの大切な相棒なのじゃ」
アリシア、何て素晴らしい気配りなんだ。
まさか俺の事をちゃんと気にかけていてくれたとは。あの部屋に入る前の一言はそういうことだったんだな。
「何だそんな事かね。勿論OKだ。アルスくん編入も認めよう!」
「交渉成立なのじゃ!」
こうして俺達三人、いや二人+お情けは無事カステリア王立魔法学校に編入することができた。全部アリシアのおかげだ。まぁこれからが本番だからな。挽回しないと。
「しかしアリシア、一体何をしたんだ?」
「なに、少しの魔法を見せただけじゃ。エクスプロージョンという魔法じゃの。出力を抑えるのに苦労したのじゃ」
「……ちなみにあれでどれくらいの力なの?」
「1%ってとこかのう」
「そうですか、そうなんですね」
やっぱ魔王の血ってすげーわ。
チートで弱いように見えてたけど実際はこうだもんな。
チートってやつは強さの価値観すらマヒさせてしまうのか。
しかもアリシアって魔王歴1日で推定12歳だからな。
これまだまだ成長するってことだよな? 末恐ろしいわ。
「さて、明日からは学校内で転生者探しですね」
「そうだな。一体どんな奴なんだろうな。まぁ今回も一筋縄でいかないことは確かだ。しかもこの学校の魔法レベルは相当に高い。その中で暴れるぐらいだからかなり強い転生者ってことになるな」
「でも子供なんじゃろ?」
「ああ、話だと6歳ぐらいの子供だってことは分かってる」
「じゃあチャンスがあるのう」
「だがチート持ちだからな。一撃死はなさそうだけどな」
油断大敵。慎重に転生者を見つけ出さないとな。
それにそいつがこの世界にどのような歪みをもたらしているのかを調べないといけない。
しかし、異世界に来て学生になるとは思わなかったな。
俺は学校など行かずにひたすら勇者道を極めていたから新鮮だ。
一つ心配なのが学生服だ。
俺たぶん最年長だから絶対浮く気がするんだよな。
この学校は年齢で分けるようなことはしてなくて、魔法の才能が全てだと聞いている。
だから俺が入れたわけで。
いや俺もオッサンってわけじゃないけどな。青年だ青年。まだいけるぞ俺大丈夫だ俺。
転生者の事よりもとりあえず浮かないかどうかが先に心配な俺であった。
「とにかく明日からの学生生活です。楽しみましょう!」
「エリー、可愛い制服を早く着たいんだろ?」
「……ばれました?」
「ばればれ」




