再転生
「くっ……離せ!」
抵抗を続けるビスタス。俺の方へ手をかざし叫んだ。
「喰らえ。俺の力を!」
すると手から大量の『旨みの粉』が出てくる。
これは……何という力なんだ! ってなるわけないだろ。
普通に避けてぶん殴った。
俺が触れた事によりチートは失われ粉は出なくなった。
「あれ? あれ? 俺の力が出ない? 何故だ何故なんだ」
困惑するビスタス。それもそうだろう。今まで頼りきっていた力がいきなり無くなってしまうのだからな。
「無駄だ。力は今俺が封じた。さぁ聞かせてもらおうか。どうしてこんな力を使って人々を陥れようとしたのかを」
すると観念したのか抵抗をやめたビスタス。
俺はどうしてもこいつが何故こんなことをしたのかを知りたかった。
何か理由があるはずだ。
「俺のラーメンはこの世界でなら世界一になれるんだ。俺の味を皆求めている」
「何を言ってるんだお前は。お前の味なんかじゃないその旨みの粉の力のせいだろ」
いびつな笑顔を浮かべながら話すビスタスに狂気を感じた。
何がこいつをここまで駆り立てたのであろう。
【唱えなさい。あの言葉を】
そうだった。それを知るためにあの言葉があったんだ。
「ザ・リアル」
そう唱えたらやっぱりビスタスは元の姿に戻った。
元の姿といっても服装が変わっただけだが。
顔や体型は変わっていない。エリーの言う通りだ。
「どういうことだ? これは俺がこの世界に来る前の姿じゃないか」
「お前の本当の姿はそれだ。お前のこれまでの人生を一部覗かせてもらうぞ」
「やめろ、やめてくれ!」
拒否するビスタス。だがもう遅い。
俺とエリーは光に包まれた。
ここはどこだろうか。ビスタスが厨房で何かを作っているようだ。
やはり場所は前回と同じく日本という場所だな。
一体何を出す店なのだろうか。
『これはラーメンではないですか?』
エリーにそう言われて気づく。そうだラーメンだ。
麺を茹でて水切りをして器に入れ具材を盛りつけている。
ここはどうやらビスタスの店らしい。
しかしそれにしては客の数が少ない。
時間は昼のかきいれどきだ。
普通こういう店ならもっと人がいておかしくない。
「ちっ、どうして俺の味が認められねーんだよ」
そう悪態をつくビスタス。
どうやら自分の味が世間に認められないことに憤っているようだ。
客商売なのだから非は自分にあると考えるべきだと思うんだがな。
どうやらこいつはそうではないらしい。
あくまで分からない客が悪いというスタンス。
「もっと化学調味料増やすか。中毒みたいにしちまえばいいんだよな。確かこれは毒とか聞いたことがあるな。まぁ裏で仕入れた怪しいやつだからな。でも俺が食うわけじゃねぇ知るか」
そう言ってスープが入った鍋に謎の粉を注ぐビスタス。
こいつこの時からこんなことをしていたのか。
最低のクズだな。料理人として最低。
「あーイライラする。どうせ今日はもう客こねーしパチンコでもいくか」
そう言って昼だというのに店じまいしてしまった。
昼間から仕事ほったらかしてギャンブルか。いいご身分だなおい。
やはり今回も救いようがないクズであったか。
どうしてこう転生者ってのはクズが多いのかね。
そして外へ出て道路を渡ろうとしたところでトラックに轢かれそうになり転生というパターンだった。前回と全く同じだなここは。
そして異世界に転生したら転生したでチートを使って好き放題やって世界を怖そうとしたわけだ。やれやれただの腹いせというか自分勝手な男だな。
こうして俺達はこいつの人生の一端を見終わった。
「ふう。お前どうして自分の腕がないだけと思わなかった?」
「見たんだな。俺の人生の一部を。そうだよ俺はお前の思った通りのクズだよ。安易な選択肢ばかりとって客を騙して商売していたラーメン屋さ」
開き直ったような態度を取るビスタス。
性根から叩き直さないとな。
俺はあの言葉を唱えることにした。
「エターナル・ハローワ」
【待ちなさい! その言葉は意味がありませんよ】
え? 後少しのところでストップが入った。
何だよもう格好良く決めようと思っていたところなのに。
【よく考えなさい。この者は無職ではありませんよ。なのでエターナル・ハローワークは通用しません。有職者には通じないのです】
なんだと!?
そういえば確かに今までの二人は無職だったから相当なダメージを与えられた。
精神的な拷問だっただろう。
そうかだから有職者には効かないってことだな。
迂闊だったそこまで考えていなかった。
でもじゃあどうすればいいんだ?
【もう一度触れてチートを奪いなさい。完全に。そして後は貴方が選びなさい。殺すか、元の世界へ帰すか、それともこの世界に残していくのかを】
俺が決めるのかよそれ。
とりあえず俺はもう一度触れてチートを奪った。
このように相手が反抗しようとしなければチートを奪うことは容易い。
しかし問題はこの後だ。
こいつをどうすればいいのか。
俺が迷っているとラスタがビスタスにある質問をした。
「一ついいですか? 貴方は道を外れたとは料理人ですよね? さっきは『世界一になりたい』と言ってまいたよね? それは本心ですか?」
ビスタスが不思議そうにその質問に答える。
「ああ俺は料理人だ。お前の言う通り道を外れた外道だがな。だが俺だって元からこんな男だったわけじゃない。純粋に料理の道を極めて世界一の料理人を目指してた時だってある」
驚いた。自分からそのような事を言ってくるとは思わなかった。
さっきは分からなかったがこいつはずっとクズだったわけではないということか。
「僕と同じじゃないですか。僕だって料理の道を極めて世界一の料理人になりたいと思ってますよ。そんな人が何故あのような粉に手を出したのですか?」
「俺のいた世界ではなそれだけじゃ生きていけないんだよ。だから俺はいつしか情熱を失い安易な方法に頼った。気付いた時にはもう純粋だった頃の思いは消えていた」
そりゃあ美味いだけで店が繁盛するってほど甘い世界じゃないんだろうな。
それぐらい俺にも分かる。
「そうですか。ではもう一度ちゃんと料理を学び、料理人として生きられるなら生きたいですか?」
「そりゃあそうだ。やり直せるならやり直したいさ。でももう無理だ。俺は殺されるんだろう? 二度目の生を得てまた死ぬのか。つくづくバカだよ俺は」
こいつの本心はそうだったのか。
やり直せるならやり直したい。そう言っている人間の命を俺は奪うのか?
いくら転生者でこの世界を危機に陥れたとしたとしても俺にこの男の命を奪う権利があるのか?
いやないだろう。俺はそんなことをするために、希望を持っているものを殺すために転生者狩りをしているのではないだろう。
「よく聞けビスタス。今のラスタの質問はお前を救うためのものだ。俺には分かる。だからお前に俺から選択肢を与える。いいかよく聞けよ」
「……なんだ」
俺はこいつに選ばせることにした。
再び安易な道を取るか、それとも困難な道を取るのか。
「一つは元の世界に帰ること選択肢。俺にはその力がある。死ぬ前の日常にお前を戻すRことが出来る。もう一つはこの世界で生き続けることだ。ビスタスという名前を捨て、一人のこの世界のただの人として生きる選択肢。俺はお前この世界に再転生させる。今度はお前が使っていたチートも勿論ない。さぁどうする」
ラスタの質問はこの選択肢を俺に示されるものだったに違いない。
もし質問がなければ俺はこいつを殺していただろう。
それだけの事をこいつはやった。現に中毒で苦しんでいる人はたくさんいる。
だがそれはこいつだけのせいだろうか。チートというあり得ない力を与えられてしまい人がどうなってしまうのか。それは果たして最初から最後まで本人の意思によるものなのか。
俺はそうとうは思えない。チートは悪い方へと誘導する力もあるのではないか。そう推測することもできるんじゃないか。
ビスタスはしばらく沈黙していた。俺は静かに答えを待った。
「俺にもう一度チャンスをくれるというのか。こんな俺に」
「ああそうだチャンスをやろう。さぁ答えはなんだ」
「二つ目の選択肢。もう一度やり直したい」
困難な道を選ぶか……。
全く違う世界で生きていくのは困難な道だ。
だが今回はそれを選ぶということだな。やはりタダのクズではなかった。
こいつはまだやり直せる人間だ。
「分かった。ではいけ。お前は再び三度目の生を得る」
「ありがとうありがとう。次こそは必ず道を外れないで生きてみせる」
こうしてビスタスという国王の専属料理人は消えた。
もうこの世界には存在しない。
「ラスタ、お前こうなるのが分かっていたのか?」
「料理人同士で分かることもあるんですよ。それにあんな力があっては人はおかしくなってしまうのも分かります」
「そうだな。今回の諸悪はあのチートなのかもな」
【それがあなたの狩りなのですね】
だめかな? 俺が甘すぎるのかな。
【いいえ。貴方は自分の信じた道を行きなさい】
何か知らないが後押ししてくれてありがとう。
こうして俺のこの世界での転生者狩りは終わった。
旨みの粉を手から無限に出せるというチートを持つ転生者を狩ることに成功したのだ。
アリシアは俺の言いつけを守ってくれて一人も殺さずに済んだ。
ラスタはこれから国王の命により王国の人々を元に戻すためスープを配布するという。
そしてラスタは今回の一件で王国を救った功績が認められ店を与えられた。
あの一度はなくなった場所に同じ店を構えることができたのだ。
なんだかんだで終わり良し。
こうして俺はこの世界を後にした。
まだまだネタが尽きません。
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