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謎の原材料

「今日も朝から行列か……重症だな」


 俺はラスタの案内で街を歩いていた。

 昨日のレストランの前には朝から同じように行列ができていた。

 並んでいる客の様子はやはりおかしい。それに何だか不健康そうにも見える。


「あんな塩分濃度が高い食べ物を毎日食べていたらああなりますよ。体にとって毒です」


 確かに塩分たっぷりという味だったな。

 俺が今まで食べた料理で一番そう感じた料理だった。

 

「私達二人もあの気持ち分かります。本当にあれ以外食べたくないという気持ちがすごかったですから」

「他の事は考えられなかったのじゃ」


 経験者二人の言葉は重い。あの暴れっぷりには恐怖したものだ。

 

「本来のこの世界の伝統的な料理や味がどんどん失われていっている。見てくださいあれを。

みんなあの専属料理人ビスタスの系列店なんですよ」


 そこには派手な看板と派手な光で人を呼び寄せている店がたくさんできていた。

 こんなにいっぱいあったのか。これはもう待ったなしだな。


 確かにあれはこの世界の料理とは全く違うものだ。

 昨日、この世界の料理をたくさん食べさせてもらったが凄く美味しかった。

 あれが失われてしまう危機だということか。


 世界のバランスの崩壊とは何も魔王とかを倒されてしまうことだけじゃない。

 食文化だって立派な世界を構成するものの一部だ。

 それを異世界から来た転生者が荒らしてしまい文化が崩壊する。

 このままではそうなってしまう可能性が高い。

 俺が相手にする転生者は本当に色々な種類がいるということになるな。


「手がかりが何か掴めそうでですか?」

「そうだな。ラスタは昨日こう言っていたな『中毒性が高い何らかの材料があのラーメンに含まれている』と」

「はいそうです。それが何なのかは分かりませんが」

「じゃあその材料を搬入する時が絶対に一日のうちのどこかであるはずだ」

「なるほど。それを追って元を辿ろうというのですね」

「そうだ」


 俺達は店を見張った。

 すると夕方の時間に店に入る卸業者らしき者たちが現れた。


「あれは何だ……?」


 その者達が持ってきた物は肉や野菜などではなかった。

 粉、粉であった。


「あれが中毒性の正体なのか? ラスタ見たことは?」

「全くありませんし見当もつきません。あんなに大量に使うのか。それも一日に」


 これはどこから来ているのか確かめなければな。

 俺達はそいつらの後をつけることにした。



「ここは城じゃないか」


 そう、後をつけた先にあったのは城であった。

 城からあの謎の粉が各店へ配布されていたのだ。


「一体どういうことだ? 工場などではなく城とは思わなかった。ラスタ、城で何か行われているのか?」

「そんな話は聞いたことはありません。これは一体……」


 ここまで来たら後戻りはできない。あの搬出口から侵入することにした。


「アリシア、エリー、敵の本拠地に入ることになる。何が起こってもおかしくないから気をつけてくれ」

「分かったのじゃ」

「分かりました」


 俺達は異様な緊張感と共に侵入開始。

 城の中は夜だけあって静まり返っていた。

 予想した警備も手薄でこれなら何とかバレずにさぐれそうだ。

 

「専属料理人ってのはどこにいるんだ?」

「専用の調理室があるはずです。恐らく王室の近くでしょう」


 そして俺達は一つだけ明かりが着いたままの部屋を見つけた。

 臭いなどからしてここが調理室で間違いないだろう。

 俺達はそっとその調理室を覗いた。

 そこには一人の男が大きな鍋の前で立っていた。



「俺の味は世界一だ」


 そう言いながら鍋に手をかざす男。

 すると手が光出したと思ったら手から粉が出てきた。

 何を言ってるか俺にもよく分からないが奴は手から粉を出す力があるらしい。

 大きな鍋にどんどん粉が溜まっていく。

 間違いないさっき店に搬入していたあの粉じゃないか。


「なんなのじゃあれは。気持ち悪いのう」

「あんな男が出した粉を入れたラーメンを私達は食べていたのですか。オエッ」


 二人共衝撃を受けているようだ。

 俺だってまさかこんな風に粉が生み出されているとは思わなかった。

 何かの材料があってそれから何らかの工法で作り出していると思っていたのに。


「間違いない。専属料理人ビスタスです」

「あれがそうなのか? 全く普通の男じゃないか。イケメンでもなんでもない」


 勝手に転生者は皆とりあえずイケメンの姿になっていると思っていたのだがそうではなかった。良く言えば普通の姿、悪く言えば冴えない男。そんな感じだ。


「エリーの目にはどう見えている?」

「そうですね。顔は恐らく皆が見ているのと違いないでしょう。ですがおかしな格好をしています。何か文字が書いてあるシャツを着ていて、白いタオルを頭に鉢巻みたいにしています」

「やはり顔は同じか。しかし服装が違う風に見えるということはやはり転生者で間違いなかったな」


 エリーの説明の服装からは元がどういう人間だったのか全く想像ができないな。

 とりあえずニートや豚ではないことは確かか。

 

「あれが転生者。あんな力を持っているものなのですか? あれがチートですか?」

 

 ラスタが俺に驚いた表情で聞いてくる。

 

「いやあんなの初めてだよ。今までは戦闘に特化したチートとか人を洗脳するチートだったからな。手から粉を出すチートって何だよって感じ」

「そうですか。転生者という存在は一体何なんですかね」

「謎が謎を呼んでいるな」



【あれも転生者のチートであることは間違いありません。チートに戦闘に関する力という定義はありませんからね。理不尽であり得ない力。それの一種でしょう。あの者は手から粉を出すチートを与えられて転生したのです】


 久々の天の声。

 だがおかげではっきりしたな。俺が狩るべき相手はアイツだってことだ。

 どうせならここで決着をつけてしまおうと思いさらに近付こうとしたその時だった。


「貴様ら何をやっている! 警報を鳴らせ!」


 やばい見つかった。後少しで奴に触れられるというのに。

 警報が鳴り響き、それに気付いたビスタスは奥へ逃げてしまった。

 どうする追うか? ここで決着をつけるか?


「あれは王属特務部隊。何故こんなところの警備に。まずいですどんどん兵士が集まって来ますよ」


 そうだ俺はラスタを連れていたのだった。

 このままここで戦ってはラスタに危険が及んでしまう。

 しょうがない一端引くしか無いな。

 

「一端退却するぞ!」

「了解なのじゃ。わしにまかせるのじゃ」


 そう言うとアリシアは呪文を唱え始めた。

 そうだアリシアは元魔王だから魔法が使えるんだった。


「おい、アリシア。城を破壊するような魔法はやめてくれよな」

「そこらへんは大丈夫なのじゃ」


 するとアリシアは手を上へかざした。

 空中に魔法陣が現れた。


「行くのじゃポチ!」


 その魔法陣から現れた巨大な犬。もしかしてポチって犬の名前か?

 俺が知っている犬よりだいぶ凶悪な容姿をしている。

 しかも顔が3つあるし。もしかしてこれって。


「ケルベロスか?」

「違うポチなのじゃ~」


 どう見てもケルベロスだろ。

 アリシアにとってはペットみたいな感じなんだろうけどさ。

 こんなのを軽く呼び出すアリシアの魔力ってどうなってんだよ。

 げに恐ろしき少女だなおい。


「ポチ、適当に相手してやるのじゃ」

「ワン!」


 返事が順応で笑った。

 しかしこれで隙ができるな。早いとこ脱出しよう。

 俺達は元来た道を急いだ。そして何とか追ってを振り払い脱出することができた。


「危なかったな。アリシアサンキュー」

「どういたしましてなのじゃ」

「でっかいポチさんでしたね。可愛いです」

「そうじゃろそうじゃろ。自慢のペットなのじゃ」

「可愛い……? まぁいいか。ラスタも大丈夫か?」

「大丈夫です。しかし参りましたね。僕達の存在がこれで王国に知られてしまうことになりました」


 そうだな。後少しのところだったのだが、起こってしまったことはしょうがない。

 だが諦めるわけにはいかないから何か手を考えなければ。

 しかし時間もないわけで。


「しょうがない。全面的に戦うことにしよう」


 俺はもうこそこそ嗅ぎまわるのをやめることにした。

 世界の味を取り戻すための戦いを始めよう。

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