食ってすぐ寝たい
「美味い美味すぎる!」
俺達はラスタのフルコースを味わっていた。
全てが丁寧に作られた一品一品が俺の胃袋を喜ばせる。
しかしここまでの腕を持っているなんてラスタはまさに天才料理少年だな。
「おかわりなのじゃ!」
アリシアももりもり食べている。
まさに成長期ということかな? まだまだ大きくなる年頃だもんな。
しかし凄い勢いだなこりゃ。まぁそれだけ美味いってのもあるんだけどね。
「これでおっぱいが大きくなるかの?」
俺は口に入れていた食べ物を吹き出しそうになった。
まだ気にしていたのかこいつは。
「アリシアさんはまだまだ成長期ですからなりますよ。でも大きいのも色々と大変なんですよ? これ重いし」
「そうなのか? それは困るの。じゃあエリーみたいな巨乳じゃなくてほどほどでがいいのじゃ」
「……それは自分では選べませんけどね」
食事中になんつー会話してるんだこの二人は。
見ろ、料理作っているラスタの顔が赤くなってるじゃねーか。
少年には刺激が強すぎる会話をするんじゃないよまったく。
俺でさえドキドキするような会話だというのに。
「アリシア、何度も言うが別に男が全員巨乳好きってわけじゃないからな」
「でも大きいに越したことはないのじゃ」
「そういう考え方もあるけどさ……」
「あら、私の胸は嫌いですか?」
「いや好きです」
即答であった。俺は大きいのが好きというわけではない。
大きいのも好きという事なのである。
そこを勘違いされては困る。
そんな会話をしながら和気あいあいと食事を続けた。
やはり美味しい料理を食べると会話も弾む。
これも料理の力と言えるな。ありがとうラスタ。
「ふうお腹いっぱいだ。ごちそうさまラスタ」
「ごちそうさまなのじゃ!」
「ごちそうさまでした」
素晴らしい料理を食べさせてくれたラスタに再び三人で礼をした。
さて、腹もいっぱいになったことだし今後の事を考えなければならない。
「今後の作戦会議だ。ラスタ、あの専属料理人ビスタスに直接近付くことはできないのか?」
もしアイツに直接会えるのならそのほうが早い。
ただの料理人なら俺が力づくで制圧してしまえばいいのだから。
「それが専属料理人とは言っているのですが実際はもっと強大な権力を持っているのです。最近の国王も人が変わってしまったようで謁見もかなり厳しく制限されています。なのでただの市民である僕、そして貴方達のような見知らぬ者が普通の方法で近付くのは無理でしょう」
まさかそんなに強い権力を持っているとはな。
やはりただの料理人ではないということか。
「国王が外に出てくることはあるのか?」
もしそういう機会があるのならそこをうまく利用して近付くことができないだろうかと考えた。
「まず城から出ることはありませんね。そのようなイベントも今はないですし」
「そうか。なら何とか城へ忍び込むしかないか」
正当法が駄目なら裏からやるしかない。
何としてでも早く転生者を止めなければ。
「城へ忍び込むですか。あの警備の中を忍び込むのはかなりの危険が伴いますね。もしかしたら殺されてしまうかも」
「それなら安心してくれ。俺は勇者を名乗れるほど鍛えてあるし、それにアリシアという元魔王の相棒もいるし」
「任せるのじゃ! わしが本気を出せばこんな国ぐらい消し飛ばせるぞ」
アリシア普通にとんでもないことを言った。
いや元魔王だから確かにそれぐらいはできておかしくないんだけどさ。
あの時はチートにびびってたけどよくよく考えたら魔王ならそれぐらいの力はあるよな。
チートの強さがおかしいだけで。
「いやアリシアそうじゃないから。それはやめてあげて。ほらラスタも冗談かマジか判断つかなくて変な顔になってるからな」
「……元魔王って本当なんですか?」
「そうなんだよ。マジなんだ。でも安心して絶対にこの国を滅ぼすようなことはさせないから。世界のバランスを崩す転生者を狩る俺達がそんなことしたら元も子もないからな。なるべく穏便に済ますよ」
そんなことしたら本末転倒だ。
アリシアならやりかねないからな。何せまだ常識というものが見についていないからしょうがないんだけどね。
「分かったのじゃ。我慢するのじゃ!」
「頼むぞアリシア。ただし誰かを守るために力を使うことは許す」
「うーんそれはいいのか? 分かったのじゃ」
もしアリシア自身やエリーに命の危機が訪れたのであれば存分に力を使って欲しい。
世界も大事だけど自分の事も大切に思って欲しいからな。
今は俺の旅についてきているけどアリシアやエリーにはこれから先長い人生が待っている。それを台無しにするわけにはいかない。
だから俺も二人を守ることは最優先にしたいと思っている。
「ところでラスタ、この世界に魔王はいるのか?」
「もう何百年も前に完全に滅ぼされています。なのでそのような存在は確認されていませんね」
「じゃあ軍隊とか兵士とかは?」
「いちおうそれは存在しますよ。もっぱら警備隊みたいなものですけどね。国同士の戦争もずっと起こっていないですから」
これなら戦闘になったとしてもなんとかなると思った。
もし魔王が存在してそれに対抗するための力を持っているとしたら戦闘になった時に大変なことになるからな。
だがラスタの言い方だとその心配はしなくて良さそうだ。
「そうか。なら最悪戦いになっても大丈夫そうだな」
「とは言っても王国の兵士ですよ? それと戦うつもりですか」
「いやできればしたくないよ。もしもの時の事を考えただけ。そうならない作戦を考えよう」
俺は戦闘狂なわけじゃない。確かに自分の力を試したいというのは大事なことだ。
多くの戦士はこの思いが強く日々を戦いに置いている。
俺にだってそのような思いがないと言ったら嘘になる。
実際勇者修行を終えて真面目に戦ったのって今までないからな。
でも俺はその心を抑える術も学んできた。だから大丈夫なんだ。
「うーん密室ではこれ以上議論が深まることはなさそうだな。困った」
いわゆる煮詰まったという状態なわけだ。
有効な作戦も思いつかず、かといってこのまま突撃するわけにもいかず。
「そうだ、明日は僕がこの街を案内しますよ。そして情報収集をすればいいのでは? まだ城の中で何が起こっているかなど知らないですし」
たしかにラスタの言う通りだ。
もっともっと情報が必要だ。曖昧な情報や予測で動くのは危険すぎる。
「それならわしもついていくのじゃ!」
「ちょっと楽しみです。この国の文化なども知りたい」
二人はまるで観光気分のようだ。
まぁずっと狩りのことばかり考えていてもしょうがないし。
エリーはエリーで色々あったしな。息抜きも必要ってことか。
「そうだな。ラスタ、悪いけどお願いできるか?」
「勿論ですよまかせてください。そしてこの国の実情をその目で見てください。僕が説明した以上に自分の目で確かめてください」
俺はラスタからまだ話を聞いただけだ。
実際に何が起きて誰が悲しんでいるのかを見たわけじゃない。
そういうところもちゃんと目を逸らさないで見なければな。
転生者狩りとしての責務だ。
「じゃあお腹いっぱいだし寝るか」
「食ってすぐ寝ると豚になるのじゃ」
「え……豚に!?」
豚の想像が動物じゃなくて完全に前回のあのジャックになっているぞエリー。
豚はそうじゃないぞ。
まだまだトラウマが染み付いているようだな。
「大丈夫だよ。あんなのに俺はならないから」
「そ、そうですよね。朝起きたら実はあんな姿だったってことはないですよね?」
「あるわけないだろ。俺は完全のナチュラルだ」
「中身はどうだかのー」
「おいアリシアやめろ! 確かに巨乳は嫌いじゃないがアリシアの胸だって好きだぞ!」
「必死じゃの~」
「クソが……もう寝る! おやすみ!」
こうして異世界メスタシア怒涛の一日目が終了した。
あーお腹いっぱいですぐ寝るって幸せ。




