街で話題のレストラン
【この異世界メスタシアにも転生者がいます。今までとちょっと違う転生者のようですが】
俺達は次の異世界に飛ばされていた。
エリーという新しい仲間と共に訪れる最初の異世界。
オイシス王国という国の首都を訪れていた。
ご飯を食べに夜の街へ繰り出した俺達。一通り見た限りでは非常に活気があって賑わっている。
「とりあえず転生者を探す前に腹ごしらえだな」
「お腹空いたのじゃ~」
「何食べましょうか?」
たくさんの店が並んでいるレストラン街に来ていた。
そうだな、せっかくだしできればこの異世界特有の料理が食べてみたいな。
俺がいた世界ではないような料理がいい。
「あ、あの店どうですか?」
エリーが指差す先には一等地に立つ大きなレストランがあった。
行列ができているて見るからに人気店ということが分かる。
というかあの店に人が集中している感じだ。
「なになに。『今話題の超人気料理ラーメンをどうぞ』だって? ラーメンってなんだ?」
「私にも分かりませんがあれだけの行列ができる人気店なら間違いないのでは?」
「お腹空いたのじゃ~」
迷ってる暇はなかった。どうやらアリシアが限界だからだ。
これ以上店を探す猶予はなかったのでこの店に決めた。
しかしここからが大変だった。ひたすら並んで順番が来るのを待たなければならない。
よくみんな我慢できるな。俺は何かを食べるためにここまで並んだことは経験がない。
そう考えるとかなり期待できる味ってことだな。
「早く早く早く早く!!」
「食べたい食べたい食べたい」
「はぁはぁはぁ」
並んでいる者達は皆このようにとにかくラーメンが食べたくてたまらないようだ。
そわそわして落ち着かない様子で並んでいる。
「なぁ何かこいつらやばくないか?」
「それだけ美味しいって事なのでは?」
「そういうもんかなぁ」
「お腹空いたのじゃ~」
俺はその他の客達の様子にちょっとだけ恐怖感のようなものを抱いてしまった。
見たこと無い光景だったからそう思っただけかもしれないな。
それから1時間ぐらい待っただろうか。
俺の腹も限界に来たその時。
「お待たせしました! どうぞ」
と店員が俺達に声を掛けてきた。ついに待ちに待った順番が回ってきたのだ。
そして店内に入るとそこは熱気に包まれていた。
湯気により店内はモワっとしている。そして客達は一心不乱にラーメンとやらを食べているようだ。
「じゃあラーメンとかいうのを3つ」
「かしこまりました!」
威勢のいい声が店内に響く。いちいち声がでかい店員だな。
俺はなんだか落ち着かないので嫌いだ。食事はもっと静かに食べたい。
「楽しみですね。どんな味なんでしょうか」
「そうだな。何でもいいから食べたいよ。腹ペコでな」
「お腹空いたのじゃ~」
アリシアはさっきからそれしか言っていない。というか言えなくなってしまったようだ。
すまないなこんなに待つことになるとは思わなかった。
もっと客の回転が早いと思ったのだがそうではなかった。
他の客達を見ると何と何倍もラーメンをおかわりして食べているようだ。
1杯だけじゃ足りないということか? それにしても皆食い過ぎだろ。
「お待たせしました。当店自慢のラーメンです」
それはアツアツの深めの器に入っていた。
豚肉を薄く切った物、そして野菜が上に載っている。
スープは脂の層が厚く、熱を閉じ込めているようだ。
臭いは豚の脂を長時間煮込んだ臭いがする。
ここまでは俺にもすぐに分かったが理解できないのは謎の黄色い細いものだ。
「これなんなんだ……?」
俺はその細い物を一つ取って食べた。
そうか、これは小麦粉だな。小麦粉を練って細くして茹でたのか。
なるほどこれがラーメンの主役というわけだな。
周りを見るとこれを音を立てながら口へ放り込むのが食べ方みたいだ。
店員に聞いたらこれは麺というものだという。
「わー美味しそう。こんなの見たことないですよ。いただきまーす」
「いただきまーすなのじゃ!」
二人は勢い良く食い始めた。お腹が空いてたまらなかったのだからとにかく勢いがいい。
「美味しい美味しい。何ですかこの味止まりません。今まで食べたことがない味です」
「うまいうまいうまいなのじゃ」
俺はその食う勢いに圧倒されてしまった。
さてと、少し遅れたが俺もいただくとするか。
まずはスープからいただくしよう。
俺はゆっくりとスープをすすった。
「美味しいけど何か舌がヒリヒリするような?」
その時だった。
「駄目だ! こんなもの食べちゃいけない!」
一人の少年が俺の後ろから手を伸ばしてラーメンを掴み、床に器ごと叩きつけた。
器が割れる音が店内の客達を驚かせる。
おいおい俺のラーメンになんてことしてくれたんだ。
まだスープ一滴だけだぞ食べたの。
「駄目になっちゃうんだこんな物食べていたら」
少年が俺の両肩を両手でつかみながら強い口調で語りかける。
何が何だか分からねぇよ。何だよ駄目になるって。
「またおまえか。おいみんなつまみ出せ」
店員たちが少年を羽交い締めにして店の外へ放り出そうとする。
だが少年は俺の手を掴んで離さない。
「頼むから僕と一緒に来て。本当のこの世界の料理をごちそうするからさ。そして僕達の世界を助けてよ」
その目は真剣だった。子供の悪ふざけなどではないことはすぐに分かった。
そもそもこんな子供がここまでするのには並々ならぬ理由があるに違いない。
俺はその言葉を信じてみようと思った。
「待て。その少年は俺の連れだ。メシ代はちゃんと払うから許してくれ」
そう言って器台も含めた金をカウンターに叩きつけた。
とりあえずその本当の料理とやらを食べさせてもらわないとな。
「アリシア、エリー行くぞ」
俺はアリシアとエリーのほうへ目をやった。
すると何ということだろうか。この騒動の中でもアリシアとエリーはまったく動じずにひたすらラーメンを食べているではないか。
「美味しい美味しい美味しい」
「うまいのじゃうまいのじゃうまいのじゃ」
だめだ俺の声が通じていないようだ。
しかしそこまで食い続ける物なのかラーメンとやらは。
よく見ると目が完全に逝ってしまっている。これはヤバイ。
「だめだこの二人はすでに魅せられてしまった。一刻も早くやめさせないとやばいよお兄ちゃん」
「あ、ああ。そうだな。確かにヤバそうだ」
少年が俺に危機的状況であるということを伝えてくる。
これは何としてでも食べるのをやめさせて連れていかなければならない。
言葉が通じないのなら方法は一つ。
しょうがないこうなっては武力行使しかない。
「アリシア、エリー、許してくれっ!」
俺はとんでもなく早い手刀をラーメンを食べている二人の首筋にお見舞いした。
そして一瞬で気絶する二人。顔がラーメンの器にダイブする。
可愛い顔がそれぞれラーメンの器にすっぽり収まる。
あとで絶対怒られるだろうな……。
だけど今はそんな心配している場合じゃない。
「すまないな。こうするしかなかった。さぁいくぞ、手伝ってくれ少年」
「うん分かった!」
二人を無理矢理カウンターから引き剥がして店の外へ連れて行った。
しかしここまでしないと止まらないとはどういうことだ?
俺はとりあえず路地裏に二人を座らせた。
まだ目が覚めていない。あまりに緊急事態だったので手加減ができなかったのだ。
「さぁ説明してくれ少年。あのラーメンが何だというんだ?」
「あれは料理じゃない。料理とは本来は人を育て、幸せに、笑顔にするもの。だけどあれは違う。人を堕とす物、全てを堕落させ人の尊厳を奪う物」
「つまり?」
「あとはこれから僕の家で説明する。ついてきて」
俺達は意味が分からないまま少年の家へ行くことになった。




