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胸揺れは世界を救えた

『じゃあ俺は湖に入って近づいていく。頼むぞエミリア』

『……はいっ』

『アリシアは実況中継を頼む。そっちの様子を一挙一動俺に伝えてくれ』

『分かったのじゃ!』


 テレパシーとは非常に便利なものだな。

 

『エミリアがジャックに向かって突撃開始なのじゃ』


 ジャックは相変わらず他の三人の巨乳に夢中。

 しかし他の三人の水着は意外と地味なタイプで盛り上がりにかける。

 水着だけで考えたらエミリアの圧倒的勝利は間違いない。

 よしよしこれならいけるぞ。


『うう恥ずかしいです。揺れまくってるんですが大丈夫でしょうか。見えちゃいけないところが見えそうです』

『大丈夫なのじゃ。たぶん』

『たぶんじゃ困るんですよ~!』

『頑張れエミリア。たぶん大丈夫だぞ』

『もう!』


 俺は通常で気付かれない距離まで辿り着いた。

 あとはどれだけエミリアが気を逸らせるかにかかっているぞ。


『今エミリアがジャックの視界に入ったのじゃ』

『じゃあ始めますね』


 エミリアはジャックに声を掛けた。

 その声は俺にも聞こえた。


「ジャック様ー! さっきはごめんなさい。ちょっとナーバスになっていて。でももう大丈夫です。見てくださいこの水着。可愛くないですか?」


 ジャックは明らかに反応した。

 離れているところから見ていても分かる。視線が完全にエミリアに集中している。


『おお。エミリアのオッパイが揺れまくっておるのじゃ。凄いのう羨ましいの~。あ、ジャックが唖然としておるぞ。どうやら驚いているようじゃの』


 どんだけ揺れているんだエミリアのオッパイは。

 ちくしょう! 俺は何でこんな役割なんだ。

 早く俺も近付いて見てみたいぜ。

 作戦上見えてしまうのは防ぎようがないのだからしょうがないよな?

 さっきはアリシアに目隠しされていたから見えなかったけど。

 今は俺一人だからしょうがないよな。

 だって目つぶったまま近付くことはできないし。泳げないし。


『エミリア今じゃセクシーポーズをするのじゃ!』

『ええ? ここでですか? 立ち上がって近付いてきませんか?』

『大丈夫なのじゃ。今水から出たら大変なことになるから出られないはずなのじゃ』

『それってどういうことですか?』

『アリシア、俺には伝わったぞ。男にはよくあることだ』

『ええ? まぁでもそういうことならじゃあポーズしますね』

『練習通りやればイチコロなのじゃ』


 俺はさらにジャックに近付いていった。

 順調順調。これならすぐに体に触れることができるぞ。

 

『おおーセクシーなのじゃ~。頑張るのじゃエミリア~』

『うまくできていますか?』


 ジャックの固まり具合を見ると完璧だぞエミリア。

 あれじゃあ水から出ることはできないだろうなぁ。

 

 ところがここでアクシデントが起こった。

 エミリアとジャックの様子を見ていた三人の女の子が騒ぎ出したのだ。

 声が何とか聞き取れる。


「なによあの娘。さっきまであんなに不機嫌だったのに。ジャック様の気を引くつもり?」

「エロい水着やなー。ずるいわ」

「……私も負けない」


 まずいどうやらエミリアに嫉妬し始めているようだ。

 強烈な洗脳がかかっている状態で嫉妬し始めたら何をするか分からない。

 何とかして三人を止めなければ。

 一体どうすればいいんだ。

 ……。

 あの水着。紐で止まってるよな?

 そうだこの手があったか!

 

 俺はジャックではなく三人の女の子に近づいていった。

 チートもない普通の人間の近くに近付くことなど余裕である。

 この状況で俺は何て素晴らしいことを思いついてしまったんだろう。

 じゃあちょっと失礼して引っ張らせてもらいますよ。


「あれ? 水着が!」

「いつの間にかほどけてるんだけど!?」

「……これじゃ裸」


 そう俺は水着の紐を引っ張って取ってやったのだ。

 その水着を持って高速で、なおかつ静かに泳いで行く俺。こんなこともあろうかと俺は泳ぎの訓練を受けていたのだ。ありがとう母さん。

 さぁついてこい。さもないと水着は取り戻せないぞ。


「ちょっと私のお気に入りなのに!」

「いくらなんでも裸は嫌!」

「……返して」


 よしよし俺の思惑通り追いかけてきた。

 こんな事が側で起きてもジャックは動かない。いや動けないのか。

 エミリアに夢中でそれどころではないんだろうな。


 俺は水着を遠くへ投げ捨ててジャックの近くへ戻った。

 

「もう~あんなところまで流されちゃった」

「急いで取りに行かないと」

「……あれしかないのに」


 三人は浮かんでいる水着のほうへ泳いでいった。

 これで当分戻ってくることはないだろう。

 

『エミリアのポーズもそろそろ限界なのじゃ。そっちはどうなのじゃ?』

『もう恥ずかしくてダメです。まだですか? まだなんですか?』

『そういうことならいよいよタッチするぞ』


 俺はゆっくりと確実にジャックに近付いた。

 そしてあと数mのところまで来た。

 ここまで来ると鮮明にエミリアの姿が見える。

 しょうがないよな不可抗力だ。

 約束したのは俺の意思で見ないってことだもんな。

 自然と視界に入ってしまうのはしょうがないよな。だよな。


『こらアルス! 何でアルスまで見とれているのじゃ!』

『え? 見ないって約束したじゃないですかー!』


 マズいエミリアの不自然なリアクションがジャックに気づかれた。

 周囲を警戒されたら失敗だ。

 ええい、ここでやるしかない!


「おい豚野郎! これで終わりだ。チェックメイト!」


 ジャックが後ろを振り向く。

 だがもう遅い。俺は手を伸ばしたら触れられる距離にいる。


「お前はさっきの怪し」

「遅い! じゃあな豚野郎」


 俺はジャックの体に触れた。

 確かにこの右手で触れることに成功した。


『やったのじゃ!』

『え? やったんですか?』

『ああやったぞ』


 そしてジャックの体が光に包まれる。

 前の時と同じだ。これでジャックの本当の姿が現れる。

 エミリア曰く醜い豚だというその容姿がついに俺の目でも確認できるようになるのだ。

 それにチートも効力を失う。あの魔王配下の四天王を一撃で消し去ったであろう力ももう俺に向けることはできない。安心してこいつを近くで見てられるぜ。



【よくやりました。ずっと見ていましたよ。見事な作戦でしたね。相手の欲望をうまく利用する作戦。さすがはナチュラル勇者です】


 久しぶりの登場だなおい。もっと褒めてくれてもいいぞ。

 

【調子に乗り過ぎないように。さぁあの言葉を唱えなさい】


 ああすっかり忘れていた。

 あの破壊力抜群の言葉を唱えないと始まらなかったな。


「ザ・リアル(これが現実)」


 するとやはり見る見る姿が変わっていく。

 前回と一緒だ。偽りのイケメンの姿は全くの嘘。変わりようが凄すぎるなこれは。


「豚が一匹悶えているようですね」

「楽しみなのじゃ~」


 エミリアが水着の上から白Tシャツを着て現れた。

 いや水着が近くで見たかったなぁ。遠目でしか見てなかったし。

 でもこれはこれでありだな。

 巨乳を隠す白Tシャツ。だけどその膨らみは全く隠れていないわけで。

 というかむしろ強調されているように見えるわけで。


「今元の姿へ戻ってるよ。だいぶ時間がかかってるな。相当偽ってたってことだ。エミリアに見えている姿がいよいよ解禁だ」

「……本当に醜いですよ。覚悟しておいてください」


 エミリアの冷たい言葉が怖いけど心地いい。

 Sっけがあるなこいつは。


「お、もう終わりそうだ」


 光が弱くなっていった。そしてついにそのリアルが俺達の前に現れた。


「……まじかよこれ。いくらなんでも酷すぎないか?」

「ドン引きなのじゃー……」


 そうそれは想像を超えていた。

 俺が今まで見たことがない生物がそこには居た。

 豚? そんな生易しい動物で現せる生物じゃないだろこれ。


 エミリアは前にこう言っていた。


「豚みたいに太っていて汗だくで鉢巻きをしていて服装は白い半袖シャツに短パン、そして何故か白シャツから見事に透けている乳首、腐ったような体臭、恐らく何日も風呂に入っていないような臭い」


 まさにこの通りであった。

 顔がブサイクとかそういう問題じゃないことは分かる。

 何というか不摂生をひたすら続けて来た人間の姿と言えるだろうか。


「ふごっ!」

 

 そして、その豚はいきなり俺に向かって攻撃してきた。


 

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