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花小説  作者: 九重ツクモ


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8/27

アルストロメリア【異世界恋愛】

 彼が帰ってきた。

 その噂を聞いて、私は思わず走り出した。

 彼が旅に出て早一年。

 優秀な植物学者である彼は、きっとまたたくさんの新種を見つけて帰ってきたのだろう。

 ついに陛下も、彼の功績を讃えて叙爵することを決めたと聞く。

 最も親しい友人である彼が大きな功績を残せば残すほど、誇らしいと同時に寂しさを覚えてしまう。

 私たちの間に、大きな溝が広がっていくような。

 けれど、とにかく彼が帰ってきたのだ。

 今はただ、それが心から嬉しい。


「やあ君か」


 人々に囲まれていた彼は、私を見つけてぱっと顔を綻ばせた。

 その笑顔がどれだけ私の胸を焦がすのか、彼は知らない。

 ——知られてはいけない。

 胸の痛みに蓋をして、私も笑顔で彼に駆け寄った。

【解説】

アルストロメリアの名前は、高名な植物学者で分類学の父として知られるリンネが、友人であるアルストレーマーの名にちなんで名付けたもの。

二人の友情を象徴するように、花言葉は「友情」「持続」など。

リンネは本当に数多くの花の名前(属名)を付けており、人の名前から名付けているものも多いのですが、友人の名を花に与えるというのは、何だかロマンチックだなと思います。

和名の「百合水仙」や「インカのユリ」の別名の通り、百合に似た美しい花を咲かせますが、百合とは赤の他人です。

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