アルストロメリア【異世界恋愛】
彼が帰ってきた。
その噂を聞いて、私は思わず走り出した。
彼が旅に出て早一年。
優秀な植物学者である彼は、きっとまたたくさんの新種を見つけて帰ってきたのだろう。
ついに陛下も、彼の功績を讃えて叙爵することを決めたと聞く。
最も親しい友人である彼が大きな功績を残せば残すほど、誇らしいと同時に寂しさを覚えてしまう。
私たちの間に、大きな溝が広がっていくような。
けれど、とにかく彼が帰ってきたのだ。
今はただ、それが心から嬉しい。
「やあ君か」
人々に囲まれていた彼は、私を見つけてぱっと顔を綻ばせた。
その笑顔がどれだけ私の胸を焦がすのか、彼は知らない。
——知られてはいけない。
胸の痛みに蓋をして、私も笑顔で彼に駆け寄った。
【解説】
アルストロメリアの名前は、高名な植物学者で分類学の父として知られるリンネが、友人であるアルストレーマーの名にちなんで名付けたもの。
二人の友情を象徴するように、花言葉は「友情」「持続」など。
リンネは本当に数多くの花の名前(属名)を付けており、人の名前から名付けているものも多いのですが、友人の名を花に与えるというのは、何だかロマンチックだなと思います。
和名の「百合水仙」や「インカのユリ」の別名の通り、百合に似た美しい花を咲かせますが、百合とは赤の他人です。




