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花小説  作者: 九重ツクモ


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ピンクッション【異世界ドラマ】

 小さな仕立て屋の隅っこで、一人刺繍を刺していく。

 誰もが忙しそうに動いているけれど、私の仕事はずっと同じだ。

 オーナーは職歴をとても重視する人で、この仕事を始めて三年目の私は、まだまだ下っ端。

 この社交シーズン前の最盛期にも、目立たない裏地の刺繍しかさせてもらえない。

 それでも、自分の腕には自信がある。

 新しい図案を考えるのも、新しい刺し方を考えるのも好き。

 いつか私の考えた刺繍をメインにしたドレスを作る日を夢見て、日々指を動かし続けるしかない。


「この裏地の刺繍をした者は誰!?」


 急に工房の扉が開き、ひと目で上流階級と分かる美しい令嬢が現れた。

 侍女だろうお付きの女性が持っているのは、間違いなく、私がスカートの裏地に刺繍を施したドレスだ。


「あ、あの……私です……」


 何か不手際があっただろうか。

 恐る恐る声を上げると、令嬢は私の両手を力強く握りしめた。


「あなたの才能を買わせて!」


 美しい彼女の瞳はキラキラと輝いていて、その言葉が嘘ではないことを物語っていた。


 この時の私は知らなかった。

 令嬢が立ち上げるドレスサロン。

 その全てのドレスに私の考案した刺繍が採用され、貴族令嬢たちの間で、空前の大ブームになろうとは。

【解説】

ピンクッションという名前は、花姿が針山に針が刺さった様子に似ているから。

エネルギッシュな見た目の通り、花言葉は「どこでも成功を」「陽気」「艶やかな人」など。

どの角度から見ても同じ様に見えることから、「共栄」という花言葉もあります。

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