ストレリチア【現代恋愛】
「今日こそいい答えを聞かせてね。僕たち付き合わない?」
「無理です」
一人で廊下を歩いていた私に声をかけてきたのは、クラス一、いや学校一のモテ男だった。
スラッとして背が高く、顔面は国宝級。
学年で一、二を争う成績の良さに加え、運動神経も抜群。
しかも親が経営者だとかで、制服のないこの学校でファッション無双している。
神に二物どころか三物も四物も与えられているこの男の、唯一にして最大の欠点。
それは、恐ろしいほどのナルシシズムだ。
「なんでそうやって君が拒否するのか、僕にはさっぱりだよ。君なら僕の隣に居ても霞まないと思うんだけど? まあ、僕の方が輝いてしまうのは仕方ないとして」
「あなたのそういう所が無理なんです!」
確かに、自分で言うのも何だが私の顔は整っている方だ。
いわゆる「綺麗系」なのだとよく言われる。
そんな容姿のおかげで、ただのコミュ障なのに「孤高の女王」などとあだ名が付けられ、勝手に高嶺の花扱いされている。
けれど私は、コッテコテの、ただのオタクなのだ。
そもそも二次元にしか興味はない。
このモテ男なんかよりも、推しの方がずっとてぇてぇ。
彼氏なんか作って、推しとの時間を邪魔されたくはない。
「とりあえず一緒に帰ろうよ。また放課後にね」
「人の話聞いてます!?」
言いたいことだけを言って、さっさとモテ男は去っていった。
顔が良ければ何をしてもいいのか!
絶対、一人で帰ってやる!!!
私は彼の背中に、一人息巻いてみせた。
この時の私は知らなかった。
あの自信過剰な物言いはただの照れ隠しで、実は驚くほど一途なのだということを。
私が彼に恋をするのは、もう少し先の話。
【解説】
ストレリチアは、南アフリカ原産の南国らしい派手な見た目の花です。
名前の由来は、イギリス国王ジョージ3世の王妃、シャーロット王妃。
シャーロット王妃はドイツのメクレンバーグ=ストレリッツ公国の出身です。
植物学に関心を持ち、キュー王立植物園とも深い関わりのあった人物でした。
南アフリカで採取されたストレリチアがイギリスに持ち込まれた際、王妃に敬意を表した植物学者が、出身地であるストレリッツの名にちなんで名付けました。
最もよく見かける「ストレリチア・レギネ」という種の「レギネ」は、ラテン語で「女王の」という意味。
その名前もシャーロット王妃を彷彿とさせます。
和名では極楽鳥花といい、実在する極楽鳥の頭部や冠羽を思わせる、色鮮やかで独特な花姿から名付けられました。
花言葉は「恋の伊達者」「気取った恋」「全てを手に入れる」「輝かしい未来」。
どれも、ストレリチアの華やかな姿を思わせる明るい花言葉です。




