クルクマ【現代ドラマ】
「ねえ、どうしても飲みに行くの。明日は家族で出かけるって言ったじゃない」
「大丈夫だよ! ウコンも飲んだし!」
「そういうことじゃなくてさ……」
へらへらと笑って家を出ていく夫を、私はため息と共に見送った。
娘が生まれても、以前と変わらぬ生活を続ける彼に、私は幻滅している。
昔は良かった。
男らしくて、頼り甲斐があって、そんなところが好きだった。
けれどもう、あの頃のようには思えない。
もう一度ため息を吐いたところで、娘の泣き声が聞こえた。
どうやら目が覚めてしまったらしい。
慌てて寝室に向かって、娘が寝入るまで根気よく寝かしつける。
やっと寝息が聞こえほっとしたその瞬間、かちゃりと玄関のドアが開く音がした。
まさか泥棒……?
恐る恐る寝室の扉を開けると、そこには、さっき出かけたはずの夫が居た。
「ごめん、遅くなった」
「遅く……っていうか早くない?」
らしくなくもじもじとしながら、夫はそっとビニール袋を差し出す。
中にはテイクアウト容器が一つ入っているようだ。
この匂いは——。
「カレー?」
「今日がさ、付き合い始めた記念日だって思い出して。初めてのデートで食べたカレーを、一緒に食べたいなって……」
彼は恥ずかしそうに声を小さくしていく。
そういえば今日は娘の世話ばかりで、夕飯もろくに食べられていない。
急に、お腹が減ってきた。
「夕飯の後だもんな。やっぱり要らなかったか」
「……勿体無いじゃん。食べよ」
どこかおどおどしながらテーブルにつく夫が、なぜだか無性に愛しくて。
「飲み会に行くなんて変な嘘ついてごめん。なんか、恥ずかしくてさ」
「……いいよ」
一つのカレーに二つのスプーンを用意する。
にやけそうになる顔を必死に引き締めて、もう少しだけ夫の下がった眉を眺めようと思った。
【解説】
クルクマはその花よりも、ウコンやターメリックと呼ばれる根茎の方が有名でしょう。
クルクマの名前は、アラビア語のkurkumという言葉が由来。
kurkumには「黄色い」という意味があるとも言われ、これは根の色が黄色いことから付けられたのだそう。
暑い夏にも耐える強さから花言葉は「忍耐」。
他にも「あなたの姿に酔いしれる」「因縁」の花言葉もあります。




