アリウム【現代ドラマ】
「なんで俺ってモテないんだろ」
ふと箸を止めて、友人がぼそりと呟いた。
大学の二限をふけて、いきつけの中華料理屋で早めの昼をとっていた俺は、目の前の友人を見つめる。
口にしていたチャーハンが、あまりのパラパラさにレンゲからこぼれ落ちた。
「自分では、もうちょっとモテてもいいんじゃないかと思うんだけど」
確かにこいつはモテない。
すごくいい奴だし、背も高くてシュッとしてる。
顔も悪くないはずだ。
けれど、モテない。
「正論を言いすぎるところがあるからかな」
まあ、確かにそういう所はある。
善良さ故に、真っ直ぐなことしか言わない。
それが鬱陶しがられることはあるかもしれない。
けど。
「たぶん、それが原因じゃないと思うよ」
「じゃあなんで?」
言いながら、友人はぱくりと餃子を口に放り込んだ。
彼は、餃子が大好物だ。
「えっと……」
言えない。
臭すぎて女子に敬遠されてるんだぞなんて、優しいこいつに言える訳がない。
「……ガムとか噛むとモテるかもよ」
「なんでだよ」
鼻で笑って、友人はまた餃子にかぶりつく。
こいつはいい奴だ。いい奴なんだが……。
どうやって気付かせればいいのかと、レンゲを持ったまま俺は頭を抱えるのだった。
【解説】
アリウムは、葉のない茎に数百もの小さい花が球状にまとまって咲くのが特徴です。
ネギやニンニクの仲間で、その花ともよく似ています。
アリウムという名前は、ラテン語でニンニクという意味。
茎を切ると強烈なネギ臭がしますが、花自体には甘い香りを持つものも。
花言葉は花姿から「円満な人柄」。
また真っ直ぐにスッと立つ姿から、「不屈の精神」「正しい主張」というものもあります。
花の青や紫といった色合いと、立ち姿が悲しみに佇んでいる人の姿を連想させることから「深い悲しみ」「無限の悲しみ」という花言葉もあります。
とにかく匂いが強烈で、私にはこの話しか思い付きませんでした……。




